不動産知識大全 業者が言わない数字まで、検算して解説する。
計算ツール

相続した不動産を売るときの税の計算機

相続した不動産を売ると、税額を決めるのは売値ではなく取得費です。被相続人の売買契約書が残っているかどうかで数百万円変わります。空き家特例と取得費加算は同時に使えないため、どちらが有利かも並べて出します。

条件を入れる

売る
万円
万円
取得費
万円
万円
相続
万円
%
空き家特例

税額

-

譲渡所得(特例を当てる前)

-

譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)

区分

-

使った取得費

-

特例ごとの税額

税の内訳

入力した数字は送信されません。すべてこの画面の中だけで計算しています。

この計算機が出している数字

譲渡所得と税額

譲渡所得 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除

取得費
土地は買ったときの額。建物は買ったときの額から減価償却費相当額を引いた額
譲渡費用
売るために直接かかった費用。仲介手数料、印紙税、取壊し費用など
特別控除
空き家特例の3,000万円(または2,000万円)

税額は、この譲渡所得に税率を掛けて出します。取得費加算の特例は、控除ではなく取得費を大きくする形で効きます。

税率は所有期間で2つに分かれます。判定するのは売った日ではなく、売った年の1月1日です。

税率(措置法31条・32条、復興財確法13条)

長期譲渡所得(5年超)

  • 所得税 15%
  • 復興特別所得税 所得税額の2.1%
  • 住民税 5%

合計 20.315%。

短期譲渡所得(5年以下)

  • 所得税 30%
  • 復興特別所得税 所得税額の2.1%
  • 住民税 9%

合計 39.63%。ほぼ2倍になる。

復興特別所得税は令和19年分まで、基準所得税額の2.1%が課されます。

計算例は国税庁のタックスアンサーにあります。長期はNo.3208[4]、短期はNo.3211[5]です。

相続では、所有期間を引き継ぐ

ここを取り違えると、税額が2倍近く変わります。

同じ条文が、取得も引き継がせます。被相続人が買った金額が、そのまま自分の取得費になります。だから古い売買契約書を探す意味があります。

★税額を決めているのは、売値ではなく取得費

この計算機の主役はここです。

3,000万円で売った場合(譲渡費用110万円・長期)

取得費が分かる(土地800万・建物1,200万/木造35年)

412万円

減価償却で建物の取得費は60万円まで下がる。取得費は合計860万円

取得費が分からない(概算5%=150万円)

557万円

売値のほとんどが課税の対象になる

144万円

★売買契約書を1枚見つけたことの値段

同じ物件を同じ値段で売っています。違うのは、買ったときの金額を証明できるかどうかだけです。

概算取得費が使えることは、実は条文にそう書いてあるわけではありません。

建物は、買ったときの金額をそのまま使えない

非業務用の建物の減価償却費相当額(所得税法施行令85条)

減価の額 = 取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

償却率
耐用年数を1.5倍した年数に対応する旧定額法の償却率
経過年数
6か月以上の端数は1年、6か月未満は切り捨て

差し引ける上限は取得価額の95%です。木造(償却率0.031)なら、35年でこの上限に達します。

償却率は国税庁 No.3261[7] が表で示しています。この式の根拠は所得税法施行令[2]85条です。

非業務用建物の償却率
  • 木造0円
  • 木骨モルタル0円
  • 鉄筋・鉄骨鉄筋コンクリート0円
  • 金属造①(骨格材3mm以下)0円
  • 金属造②(3mm超4mm以下)0円

事業に使っていた建物は、実際に計上した減価償却費の合計を使います。この計算機は非業務用の式で計算しています。

空き家特例と取得費加算は、同時に使えない

相続した不動産を売るときに使える特例は、主に2つあります。そして併用できません。

どちらを選ぶか

空き家特例(措置法35条3項)

  • 譲渡所得から最大3,000万円を控除
  • 相続人が3人以上なら2,000万円(35条4項)
  • 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
  • 譲渡の対価が1億円を超えると使えない
  • 昭和56年5月31日以前の建築、相続後は空き家のまま、など要件が多い

相続税を納めていなくても使える。

取得費加算(措置法39条)

  • 納めた相続税のうち対応する額を取得費に加算
  • 相続税を納めていることが前提
  • 相続税の申告期限(10か月)の翌日以後3年を経過する日まで
  • 加算できるのは譲渡益が上限

相続税が0なら効果も0。

★要件が重ならないので、両方の候補に上がる場面はそれほど多くありません。両方に当たるときだけ、金額で比べます。

取得費に加算できる額は、この特例を使わずに計算した譲渡益が上限です(No.3267[8])。譲渡益より多くは加算できないので、税額をマイナスにすることはできません。

入れる数字の集め方

先に手元に集めるもの

この計算に含めていないもの

  • 相続税そのもの。 ここで計算しているのは、売ったときにかかる譲渡所得への課税だけです
  • 空き家特例の細かい要件。 昭和56年5月31日以前の建築であること、区分所有建物でないこと、相続の直前に被相続人が居住していたこと、相続の時から譲渡の時まで事業・貸付け・居住の用に供されていないこと、耐震基準に適合させるか取り壊すこと。要件が多いので、国税庁 No.3306[9]で自分の物件を1つずつ確かめてください
  • 被相続人が要介護認定を受けて老人ホーム等に入居していた場合の扱い。 一定の要件のもとで空き家特例の対象になりますが、この計算機では判定していません
  • 共有で相続した場合の按分。 持分ごとに計算が要ります
  • 3,000万円特別控除(自分が住んでいた家を売る場合)との関係。 相続した家に自分が住んでいた場合は、そちらの適用も検討の対象になります
  • 譲渡損失が出た場合の他の所得との通算。 土地建物の譲渡損失は、原則として他の所得と損益通算できません

売る前に、名義を自分に移しておく必要があります。 相続登記は2024年4月1日から義務になり、起算点から3年という期限もあります。→ 相続登記の義務化

譲渡所得そのものの仕組みは譲渡所得、建物の減価償却は減価償却、相続した空き家を持ち続けた場合の負担は0円住宅にまとめています。

出典 番号は本文中の [n] に対応します

  1. 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 昭和40年

    確認日 2026-09-02

  2. 所得税法施行令(昭和四十年政令第九十六号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 昭和40年

    確認日 2026-09-02

  3. 租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 昭和32年

    確認日 2026-09-02

  4. No.3208 長期譲渡所得の税額の計算

    国税庁

    確認日 2026-08-19

  5. No.3211 短期譲渡所得の税額の計算

    国税庁

    確認日 2026-09-02

  6. No.3258 取得費が分からないとき

    国税庁

    確認日 2026-09-02

  7. No.3261 建物の取得費の計算

    国税庁

    確認日 2026-09-02

よくある質問

相続した不動産を売ると、必ず税がかかりますか?
かかるとは限りません。課されるのは売った金額そのものではなく、譲渡所得(譲渡価額から取得費と譲渡費用を引いた額)に対してです。取得費が大きければ譲渡所得は小さくなり、赤字なら課税されません。ただし相続した不動産では取得費が分からないことが多く、その場合は譲渡価額の5%しか取得費にできないため、売値のほとんどが課税の対象になります。
所有期間は、相続した日から数えるのですか?
いいえ。所得税法60条1項1号により、相続や遺贈で取得した資産は「引き続き所有していたものとみなす」とされています。被相続人が取得した日を引き継ぐため、被相続人が長く持っていた家なら、相続の翌日に売っても長期譲渡所得になります。判定の基準日は売った日ではなく、売った年の1月1日です。なお限定承認による相続は、この引継ぎの対象から除かれています。
売買契約書が見つかりません。どうなりますか?
譲渡価額の5%を取得費とすることができます。3,000万円で売るなら150万円です。実際の取得費がそれより大きかったとしても、証明できなければこの額になります。この計算機では、契約書が見つかった場合と見つからない場合の税額の差を出しています。探すことにいくらの価値があるのかを、先に金額で見てください。
空き家特例と取得費加算は、両方使えますか?
使えません。空き家特例を定める租税特別措置法35条3項は、対象となる譲渡から「第三十九条の規定の適用を受けるもの」を除いています。39条が取得費加算です。どちらか有利なほうを選ぶことになります。この計算機は両方の税額を並べて出すので、条件を入れれば有利なほうが分かります。
空き家特例の控除額は、いつでも3,000万円ですか?
いいえ。令和6年1月1日以後の譲渡で、その家屋と敷地を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合は、2,000万円が上限になります。措置法35条4項が「三千万円」を「二千万円」と読み替える形で定めています。兄弟3人で相続した実家を売る場合などが該当します。
建物の取得費は、買ったときの金額をそのまま使えますか?
使えません。所有していた期間の減価償却費相当額を差し引きます。住んでいただけで事業に使っていなかった建物は、耐用年数を1.5倍した年数に対応する旧定額法の償却率を使い、「取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数」で計算します(所得税法施行令85条)。差し引ける上限は取得価額の95%です。木造で35年経つと、ほぼ上限に達します。

ほかの計算ツール

計算ツール

出口の損益分岐計算機

残債の減り方と価格の下落を年ごとに並べ、何年後に売れば通算の損失が最も小さくな...

計算ツール

繰上返済の効果計算機

繰上返済で減る利息を、期間短縮型と返済額軽減型の両方で出して並べます。どちらか...

計算ツール

賃貸と購入の比較シミュレータ

家賃とローン返済額を並べるだけの比較はしません。税・管理費・修繕積立金・売却の...

計算ツール

住宅ローン控除の計算機

「最大455万円」は、借入限度額いっぱいの残高が13年続き、その全額を引ける税を納...

計算ツール

借り換えの損得計算機

借り換えの損得を、諸費用を引いた後の実額で出します。期間を延ばさずに金利だけ下...

計算ツール

登記費用と諸費用の内訳の計算機

「諸費用は物件価格の7%」という説明は、性質の違う3つを1つに丸めています。条文で...

計算ツール

手出しシミュレータ

家賃収入だけでは足りず、毎月あなたの財布から出る金額を計算します。返済期間の合...

計算ツール

相続税の計算機

相続税は基礎控除を超えた分にだけかかります。この計算機は、配偶者が取得する割合...

計算ツール

実質利回り計算機

表面と実質の利回りを並べて出し、その差がどの費目から来ているかを分解します。目...