0円住宅 ぜろえんじゅうたく
0円住宅とは、無償で譲り渡される空き家のこと。取得のときに贈与税・不動産取得税・登録免許税がかかり、もらった後は固定資産税が続く。管理を怠って勧告を受けると、住宅用地の特例が外れて土地の税が上がる。
この記事の要点
- 「0円住宅」は無償譲渡の空き家と、新築の「実質0円」商法の2つを指す。別の話である
- 無償でも不動産取得税はかかる。条文は有償か無償かを区別していない
- 評価額が小さければ免税点で0円になることがある。土地16万円・その他の家屋34万円が分かれ目
- 登録免許税は評価額の2%。不動産取得税の宅地1/2の特例は、こちらには効かない
- 効いてくるのはもらった後。勧告を受けると住宅用地の特例が外れる
目次(9項目)
不動産の動画や記事で「0円住宅」という言葉を聞いたとき、2つの別のものが同じ名前で呼ばれていることに気をつけてください。
無償譲渡の空き家(0円物件)
- 所有者が引き取り手を探して、無償で譲る中古の家
- 空き家バンクや民間のマッチングの場に出ている
- 物件の代金は本当に0円
この記事で扱うのはこちら
新築の「実質0円」
- 太陽光の売電収入や賃貸併用の家賃で返済を賄う、という売り方
- ローンは組む。0円なのは「実質」であって、代金ではない
- 前提が崩れれば返済だけが残る
「実質」が付いていたら、こちらである
前者は「持っているのが負担だから手放す」話、後者は「新築を売る」話です。方向が逆です。
ここから先は、前者の無償譲渡について書きます。
なぜ0円なのか
売れないから0円なのではなく、持っているほうが損だから0円です。
売れる見込みが立たない地域では、この合計が「持っていることの値段」になります。0円で手放すのは、その値段を止めるためです。
この構造は、もらった人へそのまま移ります。 0円で手に入れた人が、次の「持っているほうが損」な人になります。ここを分かったうえでもらうのか、タダだと思ってもらうのかで、その後がまったく違います。
もらう時点で、いくら出るのか
代金が0円でも、税と登記の費用は出ていきます。
出る額 = 贈与税 + 不動産取得税 + 登録免許税 + 司法書士報酬
- 贈与税
- 個人からもらった場合。相続税評価額の合計が基礎控除以下なら0円
- 不動産取得税
- 都道府県税。無償で取得しても課される
- 登録免許税
- 名義を書き換える登記にかかる国税
- 司法書士報酬
- 登記を自分でやらない場合。相場であり、法定の額ではありません
修繕費は含めていません。実際にはこれがいちばん大きいことがほとんどです。
無償でも不動産取得税はかかる
地方税法[3]73条の2第1項は、こう定めています。
税率は地方税法[3]73条の15により100分の4ですが、租税特別措置法[2]附則11条の2により、住宅と土地は令和9年3月31日までの取得について100分の3とされています。宅地の課税標準は同附則11条の5により価格の2分の1です。
ただし免税点があります。課税標準となるべき額がこれに満たなければ課されません(地方税法[3]73条の15の2)。
土地の取得
16万円
家屋(建築によるもの)
66万円
家屋(その他)
34万円
中古住宅の取得はここ
0円で譲られる空き家は評価額そのものが小さいことが多いため、この免税点で税が0になる場合があります。詳しくは不動産取得税のページにまとめました。
実際に計算してみる
土地の固定資産税評価額50万円、建物30万円の空き家を、個人からもらった場合です。
- 登録免許税(50万円 + 30万円)× 2%16,000円68.1%
- 不動産取得税・土地(25万円 × 3%)7,500円31.9%
合計23,500円。贈与税は相続税評価額の合計が110万円以下なので0円、建物の不動産取得税は評価額30万円が「その他の家屋」の免税点34万円に満たないので0円です。ここに司法書士へ頼むなら報酬が加わります。
★登録免許税には、宅地2分の1の特例が効きません。 あれは不動産取得税の特例です。登録免許税の課税標準は評価額そのままで、贈与による所有権移転の税率は1,000分の20です(登録免許税法[4]別表第一の一)。同じ「評価額」から出す税でも、使う額が違います。
誰からもらうかで、税法そのものが変わる
誰からもらうのか
個人からもらう
贈与税(相続税法)
- 基礎控除は110万円
- 課税価格は相続税評価額
- 空き家バンクや知人からの譲渡は、通常こちら
その年に他の贈与を受けていれば、合わせて判定する。
法人からもらう
所得税。通常は一時所得
- 特別控除50万円、課税されるのは残額の1/2
- 給与などと合算して課税される
- 会社が所有していた物件をもらう場合
税率は他の所得しだいで変わる。
★もらう物が同じでも、相手が個人か法人かで税法そのものが入れ替わります。控除の額も、税率の決まり方も違います。
贈与税の基礎控除は、条文では60万円です(相続税法[1]21条の5)。よく言われる110万円は租税特別措置法[2]70条の2の4による特例で、平成13年1月1日以後の贈与に適用されます。法人からもらった場合は所得税法[6]の一時所得として扱われます。
効いてくるのは、もらった後
取得のときの税は、評価額が小さければ数万円で収まります。判断を分けるのは、その後です。
固定資産税の標準税率は100分の1.4(地方税法[3]350条)。免税点は土地30万円・家屋20万円です(同351条)。
住宅の敷地には住宅用地の特例があり、課税標準が下がります(同349条の3の2)。
200㎡以下の部分
1/6
小規模住宅用地
200㎡を超える部分
1/3
一般住宅用地
この特例があるおかげで、住宅の土地の固定資産税は大きく下がっています。
先ほどの空き家(土地50万円・建物30万円)で計算します。
土地
0円
50万円 × 1/6 = 83,333円。免税点30万円に満たない
建物
4,200円
30万円 × 1.4%
年に4,200円です。この額だけを見ると、持ち続ける負担は軽く見えます。
勧告を受けると、特例が外れる
空家等対策の推進に関する特別措置法[5]13条1項は、適切な管理が行われず、そのまま放置すれば特定空家等に該当するおそれのある状態にある空家等を「管理不全空家等」と定めています。
★指導と勧告は、別の段階です。 税が変わるのは勧告からです。
市町村長が指導する
13条1項。この段階では税は変わらない
改善されなければ勧告するここで変わる
13条2項。指導しても改善されず、特定空家等に該当するおそれが大きいと認めるとき
住宅用地の特例から外れる
地方税法349条の3の2が、勧告を受けた管理不全空家等の敷地を特例の対象から除いている
特定空家等についても、22条2項の勧告を受けると同じように外れます。
- 土地(特例が外れて課税標準50万円 × 1.4%)7,000円62.5%
- 建物(変わらない)4,200円37.5%
合計11,200円。特例が効いていたときの4,200円からは2.7倍です。
確かめること
この記事で扱っていないもの
よくある質問
0円住宅は、本当にタダで手に入るのですか?
なぜ0円で手放すのですか。何か問題がある物件ですか?
固定資産税が6倍になると聞きましたが本当ですか?
勧告されるのは、どういうときですか?
法人からもらう場合も贈与税ですか?
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