損益通算 そんえきつうさん
損益通算とは、ある所得の赤字を他の所得の黒字から差し引くこと。不動産所得の赤字は給与などと通算できるが、土地の取得に要した借入金の利子に相当する部分は除かれる。
この記事の要点
- 不動産所得の赤字は、給与など他の所得と通算できる(所得税法69条1項)
- ただし土地等を取得するための借入金の利子に相当する部分は「生じなかったものとみなす」
- 借入額が土地の分まで及んでいると、赤字が出ても還付がゼロになることがある
- 同じ赤字額でも、課税所得の水準で戻る額が変わる。他人の事例は当てにならない
- 減価償却で作った赤字は、売却時に取得費が減る形で戻ってくる。繰り延べに近い
損益通算とは、ある所得の赤字を、他の所得の黒字から差し引くことです。
投資用不動産の販売で「節税になります」と説明されるとき、指しているのはこの仕組みです。
問題は、試算どおりの額が戻るとは限らないことです。理由が2つあります。
理由1 ― 土地の借入利子は、通算から外れる
これが最も大きく効きます。
さらに、この「相当する部分」の計算方法が政令で決められています。
土地の借入利子 > 赤字の額
- 損失の金額の全額が対象
- つまり通算できる額はゼロ
- 赤字が出ていても還付は無い
赤字が小さいほど、この状態になりやすい。
実際に計算する
中古のワンルームを、フルローンで買った場合で見ます。
物件価格
2,400万円
建物1,000万・土地1,400万
借入
2,400万円
金利2.0%・35年
家賃
8.0万円
月額
建物の耐用年数
31年
RC造・築20年
- 家賃収入960,000円46.9%
- 支払利息475,630円23.2%
- 減価償却330,000円16.1%
- 管理費・修繕積立金144,000円7.0%
- 固都税・管理料・その他138,000円6.7%
不動産所得は ▲127,630円 の赤字です。ここまでは販売資料と同じになります。
土地等に係る負債 = 2,400万円 − 1,000万円 = 1,400万円
- 土地等の負債の割合
- 1,400万 ÷ 2,400万 = 58.3%
- 土地等に係る負債利子
- 475,630円 × 58.3% = 277,451円
- 赤字の額
- 127,630円
負債利子277,451円 > 赤字127,630円。措置法施行令26条の6第1号に当たる。
赤字は出ています。手元からも現金が出ています。それでも税は1円も戻りません。
頭金を入れると、どうなるか
同じ物件で、頭金1,400万円を入れて借入を1,000万円(建物価格と同額)にした場合を計算します。
フルローン 2,400万円
- 初年度の支払利息 475,630円
- 土地等に係る負債 1,400万円
- 不動産所得 ▲127,630円
- 通算できる額 0円 → 還付 0円
赤字は出るが、通算はできない。
借入 1,000万円
- 初年度の支払利息 198,179円
- 土地等に係る負債 0円
- 不動産所得 +149,821円
- 黒字なので通算するものが無い
通算の制限は消えるが、赤字も消える。
通算が実際に効く場合
制限があるからといって、常に効かないわけではありません。減価償却が大きい場合は通算できます。
理由2 ― 還付額は、人によって違う
同じ赤字でも、戻る額は課税所得の水準で変わります。累進課税だからです。
課税所得 300万円
121,260円
課税所得 400万円
182,520円
課税所得 950万円
251,948円
所得税・復興特別所得税・住民税を合わせた概算です。
自分で確かめる手順
2つ目と3つ目は、紙とペンでできます。 相手に計算してもらう必要はありません。
不動産所得の計算の枠組みは国税庁の案内[4]に、損益通算の全体像は損益通算の説明[3]にあります。どちらも一次の資料です。