不動産知識大全 業者が言わない数字まで、検算して解説する。
税金 7分で読めます 2,559字

減価償却 げんかしょうきゃく

減価償却とは、建物や設備の取得費を耐用年数にわたって費用として配分すること。現金が出ていかないのに経費になるため、不動産所得を圧縮する手段として使われる。

この記事の要点

  1. 現金が出ていかないのに経費になる。ここが他の経費と決定的に違う
  2. 土地は減価償却できない。建物と設備だけが対象になる
  3. 耐用年数は構造ごとに省令で定められている。中古には簡便法がある
  4. 償却が終われば経費が消え、そこから帳簿上の所得が跳ね上がる
  5. 償却した分だけ売却時の取得費が下がり、譲渡所得が増える
目次(6項目)

減価償却とは、建物や設備の取得費を、使用できる期間(耐用年数)にわたって費用として配分する会計上の手続きです。

不動産投資の説明で必ず出てくるのは、現金が出ていかないのに経費になるという性質のためです。

他の経費と、何が違うのか

お金の動きと経費の関係

普通の経費

  • 管理費、修繕費、固定資産税、保険料
  • 現金が出ていく
  • 出ていった年に経費になる

現金の動きと経費が一致する。

減価償却費

  • 建物・設備の取得費を配分したもの
  • その年に現金は出ていかない
  • 何年にもわたって経費になり続ける

現金の動きと経費がずれる。

逆の性質を持つのがローンの元金返済です。現金は出ていくのに、経費になりません(経費になるのは利息だけ)。

現金 経費
減価償却費 出ていかない なる
ローンの元金返済 出ていく ならない
管理費・税・保険 出ていく なる

不動産所得の計算の枠組みは国税庁の案内[2]にあります。

計算の順序

償却費が決まるまで
  1. 購入価格を、土地と建物に分けるここで金額が決まる

    土地は減価償却できない。売買契約書に内訳があればそれを使い、無ければ固定資産税評価額の比などで按分する

  2. 建物の耐用年数を決める

    新築なら省令の法定耐用年数。中古なら簡便法で見積もる

  3. 償却率を当てはめる

    建物は定額法。耐用年数に応じた償却率が定められている

  4. 毎年の償却費が出る

    建物の取得価額 × 償却率。この額が毎年の経費になる

1つ目の按分で建物の割合が大きいほど、償却費も大きくなる。契約書に内訳が書かれているかを確かめる価値がある。

定額法による償却費

毎年の償却費 = 建物の取得価額 × 償却率

建物の取得価額
購入価格のうち建物にあたる部分。土地は含まない
償却率
耐用年数ごとに定められた率。定額法では毎年同じ額になる

1998年4月1日以後に取得した建物は定額法に限られる。設備は別に扱う。

計算の基本は国税庁の「減価償却のあらまし」[1]にあります。

耐用年数は構造で決まる

建物の耐用年数は省令[4]の別表で定められています。住宅用では、構造ごとに年数が違います。

中古を買う場合は、そのまま使うわけではありません。

中古資産の耐用年数(簡便法)

法定耐用年数を全部経過 → 法定耐用年数 × 20%

一部を経過している場合
(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%
端数
1年未満は切り捨て。2年に満たないときは2年とする

木造(法定22年)の築25年なら、22 × 0.2 = 4.4 → 4年。短い期間で償却することになる。

2つの「終わり方」

減価償却には、必ず終わりが来ます。終わり方が2つあり、どちらも収支に効きます。

償却が終わったあとに起きること
  1. 償却期間中

    毎年の償却費が経費になり、不動産所得が圧縮される

    赤字になれば給与所得と損益通算できる場合がある

  2. 償却が終わる

    経費が突然消える

    家賃も返済も変わらないのに、帳簿上の所得だけが跳ね上がる。納める税が増える

  3. 売却する

    取得費が、償却した分だけ小さくなっている

    譲渡所得 = 収入金額 −(取得費+譲渡費用)。取得費が小さいほど所得は大きい

建物と設備を分けると、何が変わるか

購入価格を土地と建物に分けたあと、さらに建物本体と建物附属設備に分ける方法があります。

給排水設備、電気設備、昇降機、空調といった附属設備は、建物本体より耐用年数が短く定められています。分けて計上すれば、当初の数年間の償却費は大きくなります。

分けた場合と、分けない場合

建物一括で計上

  • 計算が単純
  • 毎年の償却費が一定になる
  • 長い期間にわたって平準化される

手間が少ない。

附属設備を分けて計上

  • 当初の償却費が大きくなる
  • 設備の償却が終わると、そこで経費が減る
  • 内訳の根拠を示せる資料が必要になる

前倒しになるだけで、総額が増えるわけではない。

総額が増えるわけではありません。 前に寄せているだけです。前に寄せる意味があるのは、その時期の税率が高い場合や、早く売る前提がある場合に限られます。

分ける場合、内訳の根拠が問われます。売買契約書に記載が無ければ、工事内訳書や、合理的な方法による按分の説明が必要になります。判断に迷う場合は税理士に確認してください。

判断のときに確かめること

節税の説明を受けたら

よくある質問

土地も減価償却できますか?
できません。減価償却は時の経過とともに価値が減る資産を対象とする制度で、土地は減価しないものとして扱われるためです。そのため、購入価格を土地と建物に分ける作業が必要になります。この按分の方法によって、毎年の償却費が変わります。
中古物件の耐用年数はどう計算しますか?
法定耐用年数をすべて過ぎている場合は「法定耐用年数×20%」、一部を経過している場合は「(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%」で見積もる簡便法があります。いずれも1年未満は切り捨て、2年に満たない場合は2年とします。木造の築25年なら22年×20%=4.4年で、切り捨てて4年になります。
償却期間が短いほうが得ですか?
一概には言えません。期間が短いほど1年あたりの償却費は大きくなり、その間の節税効果は高まります。しかし早く終わるため、そこから先は経費が消えて帳簿上の所得が跳ね上がります。さらに、償却した分だけ売却時の取得費が下がるため、譲渡所得が増えます。保有期間と出口の計画とあわせて考える必要があります。
減価償却で税金は減るのですか?
保有中の税は減ります。ただし売却時に取得費が下がるため、譲渡所得が増えて課税されます。税が消えるというより、保有中から売却時へ繰り延べられる、という理解が実際に近いです。加えて、給与所得の税率と譲渡所得の税率が違うため、繰り延べた結果として有利になる場合も不利になる場合もあります。

出典 番号は本文中の [n] に対応します

  1. No.2100 減価償却のあらまし

    国税庁

    確認日 2026-08-18

  2. 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和四十年大蔵省令第十五号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 昭和40年

    確認日 2026-08-19

関連する解説