不動産の法律・制度の全体像 ふどうさんのほうりつせいど
不動産の法律は、土地に何を建てられるか・その不動産が誰のものか・誰がどう売ってよいかの3つの層に分かれる。層が分かると、何をどこへ聞けばよいかが決まる。
この記事の要点
- 法律は3つの層に分かれる。何を建てられるか/誰の権利か/誰が売るか
- 層が分かれば、どこへ聞けばよいかが決まる。窓口はそれぞれ違う
- 建てられるかは市区町村の建築指導課と都市計画課で、無料で照会できる
- 権利は登記事項証明書で読める。所有者でなくても誰でも取得できる
- 重要事項説明は契約の直前に来る。それまでに自分で調べておくと確認として聞ける
目次(10項目)
不動産に関わる法律は数が多く、どこから手を付けるか分かりにくくなっています。
3つの層に分けると、整理できます。
第1層 その土地に何を建てられるか場所で決まる
都市計画法、建築基準法。土地そのものにかかる制約
第2層 その不動産は誰のもので、何が付いているか物件で決まる
民法、不動産登記法、区分所有法、借地借家法。権利の話
第3層 誰が、どう売ってよいか相手で決まる
宅地建物取引業法。取引の当事者にかかる規制
知りたいことがどの層かが決まれば、読むべき法律も、聞くべき窓口も決まる。
第1層 ― どこに建てられるか(都市計画法)
第一種住居地域なら床面積3,000平方メートルを超える店舗などは建てられませんが、第二種住居地域では10,000平方メートルまで広がり、ぱちんこ屋やカラオケボックスも建てられます。道路の向かい側だけ別の地域ということが普通に起きるので、周囲一帯の色を見てください。
市街化調整区域では原則として建物を建てられません。用途地域も原則として定められず、都市計画税も課されません。土地が安い理由は、使える範囲が狭いことにあります。
制度の趣旨は国土交通省の資料[8]にまとまっています。詳しくは用途地域にまとめました。
第1層 ― 何を建てられるか(建築基準法)
幅員4メートル未満の2項道路では、中心線から2メートルまで下がるセットバックが求められます。下がった部分は敷地面積に算入されないため、建ぺい率・容積率の分母が減ります。
さらに前面道路の幅員が12メートル未満なら、容積率にもう1つの上限がかかります(52条2項)。住居系は幅員に10分の4を乗じた値です。
詳しくは接道義務にまとめました。
★その前提として、境界がどこかという問題があります。 筆界は「登記された時に」決まっていて、隣と話し合っても動きません。→ 境界(筆界)と越境
この層の規定を守っているかを確かめるのが、建築確認と完了検査です。着工前に確認を受け、完了後に検査を受けます。★2つは別の手続きなので、確認済証はあるが検査済証は無い、という建物が存在します。
検査済証が無いこと自体を罰する条文はありません。効いてくるのは、次に増築や用途変更をするときです。 直近の工事の着手時を特定できない場合、建物全体を現行の規定に適合させることになります。詳しくは建築確認と検査済証にまとめました。
第2層 ― 権利は登記で読む
抵当権の仕組みと、決済の日になぜ全部を同時にやるのかは抵当権にまとめました。
第2層 ― 区分所有(マンションの場合)
もう1つ、買う側にとって金額に直結する条文があります。
詳しくは区分所有にまとめました。
第2層 ― 借地権と借家権
この保護は、買う側から見ると制約として現れます。
入居者のいる物件を買う
- 既存の賃貸借契約を引き継ぐ
- 出ていってもらうことはできない
- 家賃も契約のまま
- 相場より高い古い契約なら、入れ替わりで下がる
オーナーチェンジ。現況の契約書を必ず読む。
第3層 ― 誰が売るか(宅地建物取引業法)
第三者のためにする契約を使った三為契約のように、宅建業法の規制を前提に組まれた取引の形もあります(三為契約)。
どの層にも入らないが、取引を止めるもの
3つの層で整理しきれないのに、実務で取引を止める規制があります。知らないと契約してから気づきます。
農地
- 農地法により、売買や転用には許可が要る
- 登記簿の地目が「田」「畑」なら該当を疑う
- 許可が下りなければ、契約の効力が生じない
- 現況が宅地でも、地目が農地なら手続きが要る
農業委員会が窓口。
文化財・埋蔵文化財
- 周知の埋蔵文化財包蔵地では、工事の前に届出が要る
- 調査が必要と判断されれば、工期と費用に影響する
- 市区町村の教育委員会が窓口
都市部でも該当する区域がある。
土砂災害・洪水など
- ハザードマップの説明は重要事項説明の対象
- 土砂災害特別警戒区域では建築に制限がかかる
- 融資や保険の条件にも影響しうる
市区町村のハザードマップで、自分で見られる。
相続と共有 ― 権利が増えるほど動かせなくなる
なお251条2項・252条2項では、他の共有者を知ることができない場合や、催告しても賛否を明らかにしない場合について、裁判所の裁判により残りの共有者だけで決められる道が用意されています。ただし裁判が要る、という時点で手間と時間がかかります。
所有者不明土地への対応として、相続登記の申請は2024年4月1日から義務になりました。 起算点は死亡日ではなく、相続の開始とその不動産の取得を両方知った日です。★2024年より前の相続にも適用され、その期限は2027年3月31日です。 詳しくは相続登記の義務化にまとめました。
引き取り手のいない土地については、★国に引き取ってもらう制度も2023年4月27日から使えます。ただし建物があると申請すらできません。→ 相続土地国庫帰属制度
買う側から見れば、売主が単独名義かどうかは早い段階で確かめる価値があります。
登記事項証明書の甲区を見れば、所有者が1人か複数かが分かります。複数なら、全員の意思が確認できているかを仲介に聞いてください。
住まいについては、住む権利と所有権を分ける仕組みもあります。配偶者が住み続けながら、所有権は他の相続人が取る形です。★当然には発生せず、遺産分割か遺贈のどちらかが要ります。 → 配偶者居住権