目次(10項目)
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不動産に関わる法律は数が多く、どこから手を付けるか分かりにくくなっています。
3つの層に分けると、整理できます。
3つの層- 1
第1層 その土地に何を建てられるか場所で決まる
都市計画法、建築基準法。土地そのものにかかる制約
- 2
第2層 その不動産は誰のもので、何が付いているか物件で決まる
民法、不動産登記法、区分所有法、借地借家法。権利の話
- 3
第3層 誰が、どう売ってよいか相手で決まる
宅地建物取引業法。取引の当事者にかかる規制
知りたいことがどの層かが決まれば、読むべき法律も、聞くべき窓口も決まる。
第1層 ― どこに建てられるか(都市計画法)
第一種住居地域なら床面積3,000平方メートルを超える店舗などは建てられませんが、第二種住居地域では10,000平方メートルまで広がり、ぱちんこ屋やカラオケボックスも建てられます。道路の向かい側だけ別の地域ということが普通に起きるので、周囲一帯の色を見てください。
市街化調整区域では原則として建物を建てられません。用途地域も原則として定められず、都市計画税も課されません。土地が安い理由は、使える範囲が狭いことにあります。
制度の趣旨は国土交通省の資料[7]にまとまっています。詳しくは用途地域にまとめました。
第1層 ― 何を建てられるか(建築基準法)
幅員4メートル未満の2項道路では、中心線から2メートルまで下がるセットバックが求められます。下がった部分は敷地面積に算入されないため、建ぺい率・容積率の分母が減ります。
さらに前面道路の幅員が12メートル未満なら、容積率にもう1つの上限がかかります(52条2項)。住居系は幅員に10分の4を乗じた値です。
詳しくは接道義務にまとめました。
第2層 ― 権利は登記で読む
抵当権の仕組みと、決済の日になぜ全部を同時にやるのかは抵当権にまとめました。
第2層 ― 区分所有(マンションの場合)
もう1つ、買う側にとって金額に直結する条文があります。
詳しくは区分所有にまとめました。
第2層 ― 借地権と借家権
この保護は、買う側から見ると制約として現れます。
買う側から見た、借りている人の権利借地権のついた土地を買う
- 土地は自分のものだが、使えるのは借地権者
- 地代は借地借家法の枠内でしか動かせない
- 更新を拒むには正当の事由が要る
- 融資が付きにくい
底地と呼ばれる。価格は安いが、動かしにくい。
入居者のいる物件を買う
- 既存の賃貸借契約を引き継ぐ
- 出ていってもらうことはできない
- 家賃も契約のまま
- 相場より高い古い契約なら、入れ替わりで下がる
オーナーチェンジ。現況の契約書を必ず読む。
詳しくは借地権と定期借家にまとめました。
第3層 ― 誰が売るか(宅地建物取引業法)
第三者のためにする契約を使った三為契約のように、宅建業法の規制を前提に組まれた取引の形もあります(三為契約)。
どの層にも入らないが、取引を止めるもの
3つの層で整理しきれないのに、実務で取引を止める規制があります。知らないと契約してから気づきます。
個別の法律で、動かせないもの農地
- 農地法により、売買や転用には許可が要る
- 登記簿の地目が「田」「畑」なら該当を疑う
- 許可が下りなければ、契約の効力が生じない
- 現況が宅地でも、地目が農地なら手続きが要る
農業委員会が窓口。
文化財・埋蔵文化財
- 周知の埋蔵文化財包蔵地では、工事の前に届出が要る
- 調査が必要と判断されれば、工期と費用に影響する
- 市区町村の教育委員会が窓口
都市部でも該当する区域がある。
土砂災害・洪水など
- ハザードマップの説明は重要事項説明の対象
- 土砂災害特別警戒区域では建築に制限がかかる
- 融資や保険の条件にも影響しうる
市区町村のハザードマップで、自分で見られる。
相続と共有 ― 権利が増えるほど動かせなくなる
なお251条2項・252条2項では、他の共有者を知ることができない場合や、催告しても賛否を明らかにしない場合について、裁判所の裁判により残りの共有者だけで決められる道が用意されています。ただし裁判が要る、という時点で手間と時間がかかります。
近年は所有者不明土地への対応として、相続登記の申請が義務化され、相続人が複数いる場合の手続きも整えられてきました。買う側から見れば、売主が単独名義かどうかは早い段階で確かめる価値があります。
登記事項証明書の甲区を見れば、所有者が1人か複数かが分かります。複数なら、全員の意思が確認できているかを仲介に聞いてください。
調べる順序 ― 無料でできることから
契約より前に、この順で
一次資料を、自分で辿る
よくある質問
不動産の法律は何から読めばよいですか?
法律そのものより先に、自分が何を知りたいのかを3つに分けてください。その土地に何を建てられるか(都市計画法・建築基準法)、その不動産が誰のもので何が付いているか(民法・不動産登記法・区分所有法・借地借家法)、誰がどう売ってよいか(宅地建物取引業法)。知りたいことがどの層かが決まれば、読むべき法律も聞くべき窓口も決まります。
買う前に自分で調べられることはありますか?
多くあります。道路種別は市区町村の建築指導課で、用途地域や建ぺい率・容積率は都市計画課または都市計画図で照会できます。登記事項証明書は法務局で誰でも取得できます。いずれも所有者でなくても、検討段階でも可能です。重要事項説明は契約を締結するまでの間に行われるもので、実務では契約の直前です。先に調べておけば、説明を確認として聞けます。
宅建業法は買主を守る法律ですか?
宅地建物取引業者を規制することで、取引の相手方を保護する法律です。重要事項の説明、書面の交付、他人物売買の制限、断定的判断の提供の禁止などが定められています。ただし規制の名宛人は宅地建物取引業者であって、売主が個人の場合には適用されない規定もあります。誰が売主なのかで、受けられる保護の範囲が変わります。
登記を見れば、権利関係はすべて分かりますか?
登記されている権利は分かりますが、登記されていない事情は分かりません。たとえば管理費の滞納、賃貸借契約の内容、境界の争い、近隣とのトラブルは登記簿に出てきません。また登記の債権額は設定時の金額であり、いまの残債ではありません。登記は出発点であって、それだけで足りるものではないという理解が実際に合っています。
法改正はどう追えばよいですか?
e-Gov 法令検索で現行の条文を読むのが最も確実です。解説記事は書かれた時点の内容なので、改正があると食い違います。実際、区分所有法は2026年4月1日施行の改正で決議の数え方が変わっており、不動産取得税の免税点も引き上げられています。数字や要件を書く場面では、必ず条文に当たってください。
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