不動産知識大全 業者が言わない数字まで、検算して解説する。
賃貸 8分で読めます 3,056字 (2026年8月19日公開)

定期借家 ていきしゃっか

定期借家とは、契約期間が満了すると更新されずに確定的に終了する建物の賃貸借契約のこと。成立には書面による契約と、事前の書面による説明が必要になる。

この記事の要点

  1. 期間が満了すると更新されない。普通借家とは性質がまったく違う
  2. 成立には、書面による契約と、契約前の書面による説明の2つが必要
  3. 事前説明を欠くと、定期借家としての定めが無効になり普通借家として扱われる
  4. 期間1年以上なら、貸主は終了の1年前から6か月前までに通知する必要がある
  5. 賃料を増減しない特約を置ける点が、普通借家との実務上の大きな差になる
目次(7項目)

定期借家とは、契約期間が満了すると更新されずに終了する建物の賃貸借契約です。正式には定期建物賃貸借といいます。

同じ「2年契約」でも、普通借家とは性質がまったく違います。 契約書を見ないと区別がつかないのに、住み続けられるかどうかが変わります。

普通借家との違い

期間が満了したとき、何が起きるか

普通借家

  • 期間が満了しても、原則として更新される
  • 貸主が更新を拒むには正当な事由が必要
  • 正当な事由は実際には認められにくい
  • 借主は住み続けられることが多い

借主の居住の安定を重く見た仕組み。

定期借家

  • 期間の満了で、確定的に終了する
  • 貸主に正当な事由は要らない
  • 住み続けるには再契約が必要
  • 貸主に再契約へ応じる義務は無い

期限が決まっていることを前提にした仕組み。

成立には2つの要件がある

定期借家は、当事者が「定期借家にする」と決めただけでは成立しません。

成立までに必要なこと
  1. 契約前に、別の書面で説明する契約書とは別に

    「契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了すること」について、その旨を記載した書面を交付して説明する

  2. 借主が説明を受ける

    説明を受けたことを確認する書面に署名することが多い

  3. 書面で契約を結ぶ

    公正証書である必要はないが、書面(電磁的記録を含む)であることが要る

  4. 定期借家として成立する

    1つ目を欠くと、更新がないとする定めが無効になる

借地借家法38条による。1つ目と3つ目は別の書面でなければならないと解されている。

契約書に「本契約は定期借家契約とする」と書いてあるだけでは足りません。 事前の説明書面が別に必要です。この点が実務でしばしば争われてきました。

終了の通知

期間が1年以上の定期借家では、貸主は終了の通知をする必要があります(借地借家法[1]38条6項)。★通知しなければ、終了を借主に対抗できません。

終了通知の期間

通知期間

1年前〜6か月前

この間に、期間満了により終了する旨を通知する

対象

期間1年以上

1年未満の契約には通知の義務がない

通知を怠ると

対抗できない

通知後6か月を経過するまで、終了を借主に対抗できない

つまり通知が遅れた場合、その分だけ終了の時期がずれます。借りている側から見れば、通知が来ていないうちは、すぐに出る必要はないということになります。

途中で解約できるか

原則としてできません。期間を定めた契約なので、期間の途中で一方的に抜けることは想定されていません。

ただし例外があります。

事業用の物件や、200平方メートル以上の住宅にはこの例外がありません。契約書の中途解約条項がそのまま効きます。

どちらが得か、は立場で変わる

定期借家を選ぶ理由

貸す側から見て

  • 期間が来れば確実に返ってくる
  • 転勤中の持ち家を、期限つきで貸せる
  • 建て替えや売却の予定に合わせられる
  • 賃料を増減しない特約を置ける

予定が立つ代わりに、借り手は限られる。

借りる側から見て

  • 相場より賃料が低いことがある
  • 住む期間が決まっているなら支障が少ない
  • 良い立地・良い物件が出ることがある
  • ただし住み続けられる保証はない

安さの理由が期限にある、という構造。

最後の点について。ここは条文がはっきり分けています。

同じ「賃料を固定したい」でも、普通借家と定期借家では立っている場所が違います。 この違いは、サブリース契約の設計でも意味を持ちます(サブリースを参照)。

再契約は「更新」ではない

期間が満了した後も住み続ける場合、手続きは再契約になります。更新ではありません。

更新と再契約は、法律上の意味が違う
  1. 更新(普通借家)

    従前の契約が続く。敷金もそのまま引き継がれる。条件を変えるには合意が要る

  2. 再契約(定期借家)別の契約になる

    新しい契約を結び直す。前の契約はいったん終了している

  3. 実務上の違い

    敷金の精算、原状回復の確認、仲介手数料や事務手数料の発生。いずれも起こりうる

  4. 条件も変わりうる

    賃料、期間、特約。前と同じ条件で結ぶ義務は、どちらの側にも無い

「住み続けられた」場合でも、費用が発生する形になっていることがある。

再契約のたびに費用がかかる契約になっていないかは、確認しておく価値があります。2年ごとに再契約手数料が発生するなら、実質的な家賃はその分だけ上がります。

長く住む前提なら、契約期間全体の総額に直して比べたほうが正確です。月額の賃料が安くても、再契約の費用を足すと逆転することがあります。

契約前に確認すること

借りる前に確かめる5点

よくある質問

同じ「2年契約」でも何が違うのですか?
更新できるかどうかが違います。普通借家は期間が満了しても、貸主が更新を拒むには正当な事由が必要とされ、実際には更新されるのが通常です。定期借家は期間の満了で終了します。住み続けたい場合は、貸主と合意のうえで再契約する必要があり、貸主に応じる義務はありません。
定期借家は借りる側に不利ですか?
住み続けられる保証がないという点では不利です。一方で、相場より賃料が低く設定されることがあります。転勤中の持ち家を貸す場合など、期限が決まっている物件が定期借家になりやすいためです。住む期間が最初から決まっているなら、選択肢として合理的なこともあります。
事前説明を受けていない場合はどうなりますか?
契約の更新がないこととする定めが無効になります。つまり普通借家契約として扱われ、更新できることになります。この説明は契約書とは別の書面で行う必要があり、契約書に条項として書いてあるだけでは足りないと解されています。
途中で解約できますか?
原則としてできません。ただし居住用建物で床面積200平方メートル未満の場合、転勤・療養・親族の介護などやむを得ない事情により生活の本拠として使用が困難になったときは、借主から解約を申し入れることができるとされています。この場合、申入れから1か月の経過で終了します。

出典 番号は本文中の [n] に対応します

  1. 借地借家法(平成三年法律第九十号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 平成3年

    確認日 2026-09-02

  2. 裁判例検索

    裁判所

    確認日 2026-08-19

  3. 最高裁判例一覧(借地借家法)

    一般財団法人 不動産適正取引推進機構

    確認日 2026-08-26

この分野の全体像

関連する解説