三為契約 さんためけいやく
三為契約とは、売主と買主のあいだに入った不動産会社が所有権を自分に移さないまま転売する取引のこと。民法537条の「第三者のためにする契約」を使い、登記は売主から最終の買主へ直接動く。
この記事の要点
- 中間の不動産会社が所有権を取得しないため、その会社に登録免許税と不動産取得税がかからない
- 2007年1月の法務省通知で登記の扱いが明確になった取引であり、それ自体は違法ではない
- 買主から見ると、売主は「所有者ではない会社」になる。契約不適合責任を負うのもその会社である
- 中間業者の利益は価格に含まれている。ただし仕入れ値を開示する義務はない
- 売主と中間業者のあいだの契約が流れると、買主も買えなくなる
不動産の売買で「売主が、その物件の登記名義人ではない」ことがあります。多くの場合、それが三為契約です。読み方は「さんためけいやく」。正式には第三者のためにする契約[1]といいます。
この形式そのものは違法ではありません。ただし、買主から見た景色は通常の売買と違います。何が違うのかを、お金と登記の動きから見ていきます。
三為契約とは何か
売主A、不動産会社B、買主Cの3者がいるとします。通常なら A→B の売買、B→C の売買と2回の取引が起き、登記も A→B→C と2回動きます。
三為契約では、A→B の売買契約に「所有権はBに移さず、Bが指定する者に直接移す」という特約を付けます。Bは所有権を取得しないまま、Cへ売ります。登記は A→C へ1回だけ動きます。
売主A と 中間業者B が売買契約を結ぶ特約あり
このとき「所有権はBが指定する第三者へ直接移す」旨の特約を入れる。ここが三為契約の核心
中間業者B が 買主C へ売る
Bは所有者ではないが、Aから取得する契約を結んでいるため、売主になれる
決済日に、すべてが同じ日に動く
CがBへ代金を払い、BがAへ代金を払う。同日・同席で行うのが通常
Bが所有権を取得しないことが、この仕組みのすべての出発点になっている。
Bにとっての利点は、この最後の一点に尽きます。所有権を持たなければ、登録免許税も不動産取得税も課されません。物件価格が大きいほど、この差は大きくなります。
中間省略登記との違い
三為契約は「新・中間省略登記」とも呼ばれます。ただし、かつての中間省略登記とは成り立ちが違います。
かつての中間省略登記
- A→B、B→C と所有権は2回移っている
- 移ったはずのB名義の登記だけを省いた
- 登記が実体を映していない状態になる
- 2005年3月施行の新しい不動産登記法で、登記原因証明情報の提供が必要になり通らなくなった
実体と登記がずれるため、法務局が受理しなくなった。
三為契約(新・中間省略登記)
- 所有権はAからCへ1回だけ移る
- Bはもともと所有権を取得していない
- 登記は実体どおり A→C の1回
- 2007年1月の法務省通知で登記の取扱いが明確になった
省略しているのではなく、はじめから移していない。
違いは「省いた」か「はじめから起きていない」かです。かつての中間省略登記は、起きた移転を登記しないものでした。三為契約は、Bへの移転をそもそも発生させません。だから登記原因証明情報[2]と食い違わない。ここが決定的な差です。
2007年に何が起きたのか
2005年3月
新しい不動産登記法が施行される
登記原因証明情報の提供が必要になり、従来型の中間省略登記が通らなくなった
2006年12月
規制改革・民間開放推進会議の第3次答申が閣議決定される
直接移転登記の可否について法務省へ照会が行われた
2007年1月12日
法務省民事局から通知(民二第52号)が出される
「第三者のためにする契約」「買主の地位の譲渡」の2類型について、登記原因証明情報のひな型が示された
2007年以降
実務が三為契約へ移っていく
不動産の買取再販を行う会社にとって、標準的な手法になった
この経緯は不動産適正取引推進機構の解説[3]に詳しくまとめられています。つまり三為契約は、抜け道として編み出されたものではなく、制度の側が取扱いを示したうえで残った形です。
所有者でない会社が、なぜ売主になれるのか
買主から見て最初に引っかかるのがここです。登記簿を取ると所有者はAなのに、契約書の売主はBになっている。
逆にいえば、A-B間の契約がまだ無い状態でBがCと契約していれば、それは例外にあたりません。買主として確認する価値があるのはこの点です。
買主から見て、通常の売買と違うところ
ここからが本題です。違法ではないことと、買主にとって同じ条件であることは別です。