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抵当権 ていとうけん

抵当権とは、貸した側が返済されない場合に不動産を競売にかけて優先的に回収できる権利のこと。登記簿の乙区に記録され、誰がいくら貸しているかを誰でも読める。

この記事の要点

  1. 占有を移さずに担保にできる権利。住み続け、貸し続けたまま担保に入る
  2. 順位は登記の前後で決まる。2番手以降は、1番手が回収した残りからしか取れない
  3. 完済しても抹消は自動ではない。申請しなければ登記に残り続ける
  4. 決済の日に、代金で完済し抹消を同時申請する。どちらが先でも成り立たないため
  5. 登記の債権額は借入当初の額。いまの残債ではない
目次(8項目)

抵当権とは、お金を貸した側が、返済されない場合にその不動産を競売にかけ、他の債権者に先立って回収できる権利です。

不動産を買うほとんどの人が、自分の物件にこれを設定します。そして中古物件を買うときは、売主が設定した抵当権を外してもらうところから取引が始まります。

占有を移さない、という設計

代わりに、担保になっていることを外から分かるようにする必要があります。それが登記です。

登記簿のどこに書かれているか

登記事項証明書の構成
  1. 表題部

    どんな不動産か。所在、地番、地目、地積、構造、床面積

  2. 権利部(甲区)

    所有権に関すること。誰が所有者か、差押えがあるか

  3. 権利部(乙区)ここを見る

    所有権以外の権利。抵当権・根抵当権・地上権・賃借権

  4. 共同担保目録

    1つの抵当権が、どの不動産にまたがっているか

登記事項証明書は、誰でも手数料を払えば取得できる。所有者の許可は要らない。

乙区には、次のことが書かれています。

乙区から読み取れること/読み取れないこと

読み取れる

  • 誰が貸しているか(抵当権者)
  • いくらの枠で設定されたか(債権額・極度額)
  • いつ設定されたか(登記の日付・原因)
  • 何番目の抵当権か(順位)
  • 利息・損害金の定め

登記されている情報は、すべて公開されている。

読み取れない

  • いまの残債がいくらか
  • 返済が滞っているかどうか
  • 完済の見込みがあるか

登記は設定時点の記録。その後の返済は反映されない。

順位が意味すること

同じ不動産に複数の抵当権を設定できます。

競売で1,500万円しか回収できなかった場合
  • 1番抵当(債権額2,000万円)が受け取る1,500万円
  • 2番抵当(債権額800万円)が受け取る0万円

これは物件を買う側にも関係します。すでに1番抵当が付いている物件を担保に融資を受けようとしても、条件が悪化するか、そもそも通りません。

なぜ決済の日に、全部を同時にやるのか

中古物件の売買で最も分かりにくいのが、決済の当日の段取りです。理由は単純です。

順番にできない理由
  1. 売主はローンを完済したい

    しかし完済の原資は、買主が払う売買代金である

  2. 買主は代金を払いたい

    しかし抵当権が消える確証がなければ払えない

  3. どちらも先にできない循環している

    先に払えば買主が危険を負い、先に抹消すれば金融機関が危険を負う

  4. だから同時にやる

    全員が同じ場に集まり、入金の確認と書類の受け渡しを同じ瞬間に行う

決済があの形式である理由は、この循環を断つことにある。

完済しても、抹消は自動ではない

登録免許税はいくらか

設定と抹消で、課税標準の考え方がまったく違います。

抵当権にかかる登録免許税

設定するとき

  • 課税標準は債権金額(根抵当権は極度金額)
  • 税率は1,000分の4
  • 3,000万円の借入なら120,000円
  • 住宅用家屋には軽減がある

借入額に比例するので、額が大きいほど重い。

抹消するとき

  • 課税標準は不動産の個数
  • 1個につき1,000円
  • 土地1筆+建物1棟なら2,000円
  • 借入額とは無関係

消すのは安い。だから放置する理由は費用面には無い。

税率は登録免許税法[3]の別表第一に定められています。設定は「一(五)」、抹消は「一(十五)」です。

3,000万円を借りて自宅を買う場合

本則の税率で計算

120,000

3,000万円 × 4/1000

住宅用家屋の軽減後

30,000

3,000万円 × 1/1000

90,000

要件を満たすかどうかで、この額が変わる

投資用の物件では、この軽減は使えません。自己の居住の用に供する住宅用家屋が対象だからです。

根抵当権が付いているとき

事業者が売主のとき、物件に根抵当権が付いていることがあります。

買う前に、自分で確かめる

登記事項証明書を取って見るところ

登記事項証明書は、所有者の許可なく誰でも取得できます。 法務局の窓口でも、オンラインでも請求できます。手続きは不動産登記法[2]にもとづく制度です。

物件を検討する段階で自分で取る価値があります。仲介から渡される資料を待つ必要はありません。

よくある質問

抵当権が付いたままの物件を買っても大丈夫ですか?
引渡しの時点で抹消されるなら問題ありません。中古物件では売主のローンが残っていることが普通で、決済の日に売買代金で完済し、抵当権抹消の登記を所有権移転と同時に申請します。避けるべきなのは、抹消されないまま引渡しを受けることです。その状態では、売主が返済を怠ったときに自分の物件が競売にかけられます。売買契約書に抹消の時期がどう書かれているかを確認してください。
なぜ完済と抹消を同じ日にやるのですか?
どちらかを先にできないためです。売主は買主から代金を受け取らなければローンを完済できません。買主は抵当権が抹消される確証がなければ代金を払えません。この循環を断つために、金融機関・司法書士・売主・買主が同じ場に集まり、入金の確認と登記書類の受け渡しを同時に行います。決済がなぜあの形式なのかは、ここに理由があります。
登記簿に書かれた債権額が、いまの残債ですか?
違います。登記に記録されるのは、抵当権を設定した時点の債権金額です。その後どれだけ返済しても、登記の数字は変わりません。3,000万円と書かれていても、実際の残高が500万円ということはよくあります。逆に、書かれた額より残高が多くなることは原則ありません。実際の残債は、売主が金融機関から取り寄せる残高証明書でしか分かりません。
根抵当権とは何が違いますか?
担保する債権が特定されているかどうかが違います。通常の抵当権は特定の1本の借入を担保します。根抵当権は、一定の範囲の不特定の債権を、極度額の限度で担保します(民法398条の2)。事業者が売主の場合に付いていることが多く、返済しても元本が確定するまでは枠が残ります。抹消には元本の確定が必要になるため、通常の抵当権より手続きに時間がかかることがあります。
共同担保目録は何を見ればよいですか?
1つの抵当権が、どの不動産にまたがっているかが書かれています。土地と建物の2つだけなら通常ですが、売主の他の物件が並んでいる場合は注意が要ります。その物件だけを買うとき、対象の不動産についてだけ抵当権を外してもらう(一部抹消)交渉が必要になるためです。金融機関が応じるかは、残る担保で債権が保全されるかによります。登記事項証明書を請求するときに「共同担保目録付き」を指定すると出ます。

出典 番号は本文中の [n] に対応します

  1. 民法(明治二十九年法律第八十九号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 明治29年

    確認日 2026-08-18

  2. 不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 平成16年

    確認日 2026-08-18

  3. 登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 昭和42年

    確認日 2026-08-19

  4. No.7191 登録免許税の税額表

    国税庁

    確認日 2026-08-19

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