抵当権 ていとうけん
抵当権とは、貸した側が返済されない場合に不動産を競売にかけて優先的に回収できる権利のこと。登記簿の乙区に記録され、誰がいくら貸しているかを誰でも読める。
この記事の要点
- 占有を移さずに担保にできる権利。住み続け、貸し続けたまま担保に入る
- 順位は登記の前後で決まる。2番手以降は、1番手が回収した残りからしか取れない
- 完済しても抹消は自動ではない。申請しなければ登記に残り続ける
- 決済の日に、代金で完済し抹消を同時申請する。どちらが先でも成り立たないため
- 登記の債権額は借入当初の額。いまの残債ではない
目次(8項目)
抵当権とは、お金を貸した側が、返済されない場合にその不動産を競売にかけ、他の債権者に先立って回収できる権利です。
不動産を買うほとんどの人が、自分の物件にこれを設定します。そして中古物件を買うときは、売主が設定した抵当権を外してもらうところから取引が始まります。
占有を移さない、という設計
代わりに、担保になっていることを外から分かるようにする必要があります。それが登記です。
登記簿のどこに書かれているか
表題部
どんな不動産か。所在、地番、地目、地積、構造、床面積
権利部(甲区)
所有権に関すること。誰が所有者か、差押えがあるか
権利部(乙区)ここを見る
所有権以外の権利。抵当権・根抵当権・地上権・賃借権
共同担保目録
1つの抵当権が、どの不動産にまたがっているか
登記事項証明書は、誰でも手数料を払えば取得できる。所有者の許可は要らない。
乙区には、次のことが書かれています。
読み取れる
- 誰が貸しているか(抵当権者)
- いくらの枠で設定されたか(債権額・極度額)
- いつ設定されたか(登記の日付・原因)
- 何番目の抵当権か(順位)
- 利息・損害金の定め
登記されている情報は、すべて公開されている。
読み取れない
- いまの残債がいくらか
- 返済が滞っているかどうか
- 完済の見込みがあるか
登記は設定時点の記録。その後の返済は反映されない。
順位が意味すること
同じ不動産に複数の抵当権を設定できます。
- 1番抵当(債権額2,000万円)が受け取る1,500万円100.0%
- 2番抵当(債権額800万円)が受け取る0万円0.0%
これは物件を買う側にも関係します。すでに1番抵当が付いている物件を担保に融資を受けようとしても、条件が悪化するか、そもそも通りません。
なぜ決済の日に、全部を同時にやるのか
中古物件の売買で最も分かりにくいのが、決済の当日の段取りです。理由は単純です。
売主はローンを完済したい
しかし完済の原資は、買主が払う売買代金である
買主は代金を払いたい
しかし抵当権が消える確証がなければ払えない
どちらも先にできない循環している
先に払えば買主が危険を負い、先に抹消すれば金融機関が危険を負う
だから同時にやる
全員が同じ場に集まり、入金の確認と書類の受け渡しを同じ瞬間に行う
決済があの形式である理由は、この循環を断つことにある。
完済しても、抹消は自動ではない
登録免許税はいくらか
設定と抹消で、課税標準の考え方がまったく違います。
設定するとき
- 課税標準は債権金額(根抵当権は極度金額)
- 税率は1,000分の4
- 3,000万円の借入なら120,000円
- 住宅用家屋には軽減がある
借入額に比例するので、額が大きいほど重い。
抹消するとき
- 課税標準は不動産の個数
- 1個につき1,000円
- 土地1筆+建物1棟なら2,000円
- 借入額とは無関係
消すのは安い。だから放置する理由は費用面には無い。
税率は登録免許税法[3]の別表第一に定められています。設定は「一(五)」、抹消は「一(十五)」です。
本則の税率で計算
120,000円
3,000万円 × 4/1000
住宅用家屋の軽減後
30,000円
3,000万円 × 1/1000
差
90,000円
要件を満たすかどうかで、この額が変わる
投資用の物件では、この軽減は使えません。自己の居住の用に供する住宅用家屋が対象だからです。
根抵当権が付いているとき
事業者が売主のとき、物件に根抵当権が付いていることがあります。
買う前に、自分で確かめる
登記事項証明書は、所有者の許可なく誰でも取得できます。 法務局の窓口でも、オンラインでも請求できます。手続きは不動産登記法[2]にもとづく制度です。
物件を検討する段階で自分で取る価値があります。仲介から渡される資料を待つ必要はありません。