不動産知識大全 業者が言わない数字まで、検算して解説する。
ローン・お金 7分で読めます 2,626字

返済比率 へんさいひりつ

返済比率とは、家賃収入に対するローン返済額の割合のこと。投資用不動産で収支の余裕を測る指標だが、経費が含まれないため、この数字だけでは判断できない。

この記事の要点

  1. 家賃収入に対するローン返済額の割合。分母を満室家賃にするか実収入にするかで数字が変わる
  2. 経費が入っていないため、比率が低くても手出しが出ることがある
  3. 住宅ローンの「返済負担率」(年収に対する割合)とは別の指標
  4. 空室が何%まで耐えられるかを逆算すると、比率より実感が得られる
  5. 見るべきは比率そのものより、返済後にいくら残るかという実額
目次(6項目)

返済比率とは、家賃収入に対するローン返済額の割合です。投資用不動産の収支の余裕を測る指標として使われます。

返済比率

返済比率 = 毎月のローン返済額 ÷ 毎月の家賃収入 × 100

毎月のローン返済額
元利均等返済なら一定
毎月の家賃収入
満室時の家賃を使うか、空室を引いた実収入を使うかで数字が変わる

どちらの家賃を分母にしたかを確かめないと、比べる意味がなくなる。

「50%以下が目安」が当てにならない理由

この目安はよく語られます。しかし、そのまま使うと判断を誤ります。

管理費、修繕積立金、賃貸管理手数料、固定資産税、保険料。これらはすべて返済比率の外にあります。

返済比率50%でも、手元に残らない例(家賃10万円)
  • ローン返済(返済比率50%)50,000円
  • 管理費・修繕積立金15,000円
  • 賃貸管理手数料(5%)5,000円
  • 固定資産税・都市計画税(月割)6,000円
  • 火災保険など(月割)1,000円

支出の合計は77,000円。家賃10万円なら23,000円残る計算だが、空室率5%を見込むと実収入は95,000円になり、残りは18,000円まで下がる。

同じ返済比率50%でも、管理費と修繕積立金が家賃の20%を占める区分マンションと、5%で済む物件とでは、手元に残る額がまったく違います。

比率は、比較の道具としては使えます。判断の道具としては足りません。

返済負担率とは別のもの

名前が似ているため、頻繁に混同されます。

分母が違う2つの指標

返済比率

  • 分母は家賃収入
  • 投資用不動産の収支を見る
  • 物件ごとに計算する
  • 金融機関の審査基準として明示されることは少ない

その物件が返済を賄えるかを見る。

返済負担率

  • 分母は年収
  • 住宅ローンの審査で使われる
  • 借りる人ごとに計算する
  • 金融機関が上限を定めていることが多い

その人が返済を賄えるかを見る。

住宅ローンの実際の返済負担率の分布は、住宅金融支援機構のフラット35利用者調査[1]に公表されています。投資用ローンとは審査の考え方が違いますが、返済の重さを考える手がかりにはなります。

比率より実感が得られる見方

返済比率を眺めるより、逆算するほうが判断しやすくなります。

何%の空室まで耐えられるか

耐えられる空室率 = 1 −(返済額 + 経費)÷ 満室家賃

返済額
毎月のローン返済
経費
管理費・積立金・管理手数料・税・保険の月額合計
満室家賃
空室を考えない家賃

結果がマイナスなら、満室でも手出しが出るということ。

先ほどの例(家賃10万円、返済5万円、経費27,000円)なら、耐えられる空室率は 1 − 77,000 ÷ 100,000 = 23% です。年間で約2.8か月まで空室に耐えられる、という意味になります。

この数字のほうが、「返済比率50%」より実感が持てるはずです。

金利が動くと、比率はどう動くか

変動金利で借りている場合、返済比率は自分の意思と無関係に動きます。

借入2,490万円・35年で、金利だけを変えたときの毎月の返済額

年1.5%

76,240

年2.0%

82,484

年2.5%

89,016

年3.0%

95,828

元利均等返済の式で計算した額。1.5%から3.0%へ動くと、毎月の差は19,588円、35年では約823万円になる。

家賃10万円なら、返済比率は76%から96%へ動きます。家賃も経費も変えていないのに、収支だけが変わります。

変動金利には「5年ルール」「125%ルール」を設ける商品が多く、金利が上がっても一定期間は毎月の返済額が据え置かれます。ただし返済額が変わらないことと、返済総額が変わらないことは別です。 据え置かれている間、上がった利息の分だけ元金が減りにくくなり、残債の減り方が鈍ります。

出口で効いてくるのはこちらです。売ろうとしたときに、想定より残債が残っている、という形で現れます。

借り換えという選択肢

契約後にできる数少ない手のひとつが借り換えです。

借り換えを検討するときに見る点

4つ目は見落とされやすい点です。借り換えは、団信を契約し直すことでもあります。 借入時に健康だった人が、数年後も同じ条件で加入できるとは限りません。金利差だけで判断しないほうが安全です。

頭金を入れるかどうか

返済比率を下げる最も直接的な方法は、頭金を増やして借入額を減らすことです。

頭金を増やしたときに、両方向で起きること

良くなること

  • 毎月の返済額が減る
  • 返済比率が下がり、空室への耐性が上がる
  • 利息の総額が減る
  • 売却時の残債が少なくなり、出口が取りやすくなる

悪くなること

  • 手元の現金が減る
  • 空室・修繕・設備交換への備えが薄くなる
  • 他の機会に資金を回せなくなる

現金が無いと、耐えられるはずの空室にも耐えられない。

返済比率を下げることと、資金繰りを安全にすることは、必ずしも同じ方向を向きません。 現金を使い切って比率を下げても、退去と設備故障が重なれば行き詰まります。

目安として、空室が数か月続いても返済を続けられるだけの現金を手元に残すことを先に決め、そのうえで残りを頭金に回す、という順序のほうが実際的です。

よくある質問

返済比率は何%以下にすべきですか?
一律の正解はありません。よく「50%以下」といった目安が語られますが、経費の重さは物件によって大きく違います。管理費と修繕積立金が家賃の20%を占める区分マンションと、5%で済む物件とでは、同じ返済比率でも手元に残る額がまったく違います。比率ではなく実額で見たほうが確かです。
返済負担率と何が違うのですか?
分母が違います。返済比率は家賃収入に対する割合で、投資用不動産の収支を見るときに使います。返済負担率は年収に対する年間返済額の割合で、住宅ローンの審査などで使われます。名前が似ているため混同されやすいのですが、測っているものが別です。
頭金を増やせば返済比率は下がりますか?
下がります。借入額が減れば毎月の返済額も減るためです。ただし手元の現金が減るため、空室や修繕への備えは薄くなります。返済比率を下げることと、資金繰りの安全性を高めることは、必ずしも同じ方向を向きません。
何を見れば実態が分かりますか?
家賃から経費とローン返済をすべて引いた後に、毎月いくら残るか(または出ていくか)の実額です。あわせて、空室が何か月続いても手元の資金で耐えられるかを見ておくと、比率よりも判断しやすくなります。

出典 番号は本文中の [n] に対応します

  1. 2025年度 フラット35利用者調査

    独立行政法人 住宅金融支援機構 2026年7月

    確認日 2026-08-18

  2. マンションの修繕積立金に関するガイドライン

    国土交通省 平成23年4月策定・令和6年6月7日改訂

    確認日 2026-08-18

関連する解説