不動産のローンの全体像 ふどうさんのろーん
不動産の借入では、金額・金利・期間・返済方法・団信の5つが契約時に決まる。借りた後に動かせるのは繰上返済・借り換え・条件変更の3つだけで、判断の重心は契約前にある。
この記事の要点
- 借りられる額と、借りてよい額は別のもの。決めるのは前者ではなく後者
- 契約時に決まるのは金額・金利・期間・返済方法・団信の5つ
- 借りた後に動かせるのは繰上返済・借り換え・条件変更の3つだけ
- 毎月の返済額が同じでも、元金の減る速さは金利と期間で大きく変わる
- 諸費用は借入額に比例するものと定額のものがある。定率型は額が大きいほど重い
目次(12項目)
不動産の借入は、契約した時点でほとんどが決まります。
後から動かせる部分は限られていて、しかも動かすたびに費用がかかります。だからこの記事は、借りる前に決まることと借りた後にできることを分けて並べます。
借りられる額と、借りてよい額
最初の分かれ道がここにあります。
借りられる額
- 年収に対する年間返済額の割合で判断される
- 金融機関が「返しきれる見込みがある」と考える線
- 審査を通れば提示される
- 自分で計算しなくても出てくる
貸す側から見た上限。
借りてよい額
- 返済した後に、生活と備えが成り立つ額
- 金利が上がっても払い続けられる額
- 空室や修繕が来ても耐えられる額
- 自分でしか出せない
借りる側から見た上限。
フラット35利用者調査[1]には、実際の借入額と返済負担率の分布が公表されています。自分がどのあたりにいるかを、他人の平均ではなく分布で見ることができます。
決まること1 ― 金利の種類
全期間固定
- 完済まで金利が変わらない
- 借入時点の金利は高めになる
- 返済額が確定する
上がる可能性を貸す側が引き受ける。その対価が金利差。
固定期間選択型
- 当初10年などの期間だけ固定
- 期間が終わると、その時点の金利で再計算される
- 5年ルール・125%ルールが働かない商品もある
期間の終わりに、返済額が一度に大きく上がることがある。
変動金利の基準として使われる短期プライムレートの推移は、日本銀行[4]が公表しています。各行の発表を待たずに、基準そのものを自分で追えます。
住宅ローン利用者の実態調査[2]では、金利タイプの選択と、上昇時にどう対応するつもりかも調べられています。
決まること2 ― 返済方法と、元金の減る速さ
毎月の返済額 = その月の利息 + 元金に充てる分
- その月の利息
- 残高 × 金利 ÷ 12
- 元金に充てる分
- 返済額から利息を引いた残り
利息は残高にかかる。残高が大きい初期ほど、利息の額が大きい。
日本の住宅ローンは元利均等返済が一般的です。毎月の額は変わりませんが、その中身は毎月入れ替わります。
初回
99,379円のうち、元金は49,379円だけ
残り50,000円は利息として消える
10年後
残高 23,446,458円
減ったのは21.8%にとどまる
20年6か月目
ここでようやく元金が半分になる
返済期間の約6割を過ぎたところ
30年後
残高 5,669,796円
最後の5年で残りを一気に返す形になる
元金均等返済を選べる金融機関もあります。同じ条件なら総額で1,214,109円少なくなりますが、初回の返済額が121,429円と重くなり、借入可能額が下がります。 詳しくは元利均等返済にまとめました。
決まること3 ― 期間
25年で借りる
19,759,842円
毎月127,156円
30年で借りる
21,919,252円
毎月110,886円
35年で借りる
23,446,458円
毎月99,379円
期間を延ばすと毎月は軽くなりますが、元金の減りも遅くなります。 25年と35年では、10年後の残高が3,686,616円違います。
数年後に売る前提があるなら、この差は直接効きます。 売却価格が残債に届かなければ、差額を自己資金で埋めなければ売れません。
決まること4 ― 団体信用生命保険
団信があることを理由に他の生命保険を減らしている場合、繰上返済で期間を縮めると保障される期間も縮むという点も、頭に入れておく価値があります。
決まること5 ― 諸費用
抵当権の仕組みと、決済の日になぜ全部を同時にやるのかは抵当権にまとめました。
住宅ローンと投資用ローンは、別物である
同じ「不動産の借入」でも、性質がまったく違います。
住宅ローン
- 返済の原資は本人の収入
- 審査は年収・勤務先・勤続年数が中心
- 金利は低い。5年ルール・125%ルールがある商品が多い
- 住宅ローン控除の対象になりうる
自分が住むことが前提。
投資用ローン
- 返済の原資は家賃収入
- 審査は物件の収益力も見られる
- 金利は高め。5年ルール・125%ルールは無いことが多い
- 住宅ローン控除の対象外
事業性の融資に近い。
変動金利の5年ルール・125%ルールは法令ではなく商品ごとの特約なので、投資用では無いことが多くあります。住宅ローンを前提にした解説を投資用に当てはめると、想定を誤ります。
審査は2段階ある
事前審査(仮審査)買付を入れる前
申込者の属性を中心に、短期間で判断される。数日から1週間程度
売買契約
事前審査の結果を前提に契約する。融資特約を付けるのが通常
本審査
物件の資料と申込者の書類をそろえて正式に審査する。2〜3週間程度
金利・期間・返済方法・団信がここで確定する
事前審査が通っても、本審査で否決されることはある。融資特約の期限を確かめる。
借りた後にできること1 ― 繰上返済
5年後に実行
788,819円
15年後に実行
391,304円
25年後に実行
192,546円
詳しくは繰上返済に、自分の条件での試算は繰上返済の効果計算機にあります。
借りた後にできること2 ― 借り換え
期間を延ばせば、毎月の額はいくらでも下げられます。そして総額は増えます。
残債2,400万円・2.0%・残り30年を1.0%へ借り換えた場合で計算すると、
- 期間を30年のままにする … 毎月11,515円の軽減、諸費用を引いた損得は+3,517,468円
- 期間を35年へ延ばす … 毎月20,960円の軽減、諸費用を引いた損得は+2,852,724円
毎月の軽減は約2倍になりますが、総額は664,744円多く払います。
自分の条件での試算は借り換えの損得計算機にあります。
借りた後にできること3 ― 条件変更
返済が苦しくなったときに、期間の延長や一時的な返済額の減額を相談できる場合があります。
判断の順序
1つ目と4つ目が要です。比率の目安ではなく実額で、そして返済予定表という一次の資料で判断してください。