不動産知識大全 業者が言わない数字まで、検算して解説する。
ローン・お金 14分で読めます 5,527字

不動産のローンの全体像 ふどうさんのろーん

不動産の借入では、金額・金利・期間・返済方法・団信の5つが契約時に決まる。借りた後に動かせるのは繰上返済・借り換え・条件変更の3つだけで、判断の重心は契約前にある。

この記事の要点

  1. 借りられる額と、借りてよい額は別のもの。決めるのは前者ではなく後者
  2. 契約時に決まるのは金額・金利・期間・返済方法・団信の5つ
  3. 借りた後に動かせるのは繰上返済・借り換え・条件変更の3つだけ
  4. 毎月の返済額が同じでも、元金の減る速さは金利と期間で大きく変わる
  5. 諸費用は借入額に比例するものと定額のものがある。定率型は額が大きいほど重い
目次(12項目)

不動産の借入は、契約した時点でほとんどが決まります。

後から動かせる部分は限られていて、しかも動かすたびに費用がかかります。だからこの記事は、借りる前に決まること借りた後にできることを分けて並べます。

借りられる額と、借りてよい額

最初の分かれ道がここにあります。

2つの数字は、別のものである

借りられる額

  • 年収に対する年間返済額の割合で判断される
  • 金融機関が「返しきれる見込みがある」と考える線
  • 審査を通れば提示される
  • 自分で計算しなくても出てくる

貸す側から見た上限。

借りてよい額

  • 返済した後に、生活と備えが成り立つ額
  • 金利が上がっても払い続けられる額
  • 空室や修繕が来ても耐えられる額
  • 自分でしか出せない

借りる側から見た上限。

フラット35利用者調査[1]には、実際の借入額と返済負担率の分布が公表されています。自分がどのあたりにいるかを、他人の平均ではなく分布で見ることができます。

決まること1 ― 金利の種類

3つの型

変動金利

  • 返済の途中で金利が見直される
  • 借入時点の金利は低いことが多い
  • 5年ルール・125%ルールがある商品が多い
  • ★ただしこれは法令ではなく商品ごとの特約

上がる可能性を借りる側が引き受ける。

全期間固定

  • 完済まで金利が変わらない
  • 借入時点の金利は高めになる
  • 返済額が確定する

上がる可能性を貸す側が引き受ける。その対価が金利差。

固定期間選択型

  • 当初10年などの期間だけ固定
  • 期間が終わると、その時点の金利で再計算される
  • 5年ルール・125%ルールが働かない商品もある

期間の終わりに、返済額が一度に大きく上がることがある。

変動金利の基準として使われる短期プライムレートの推移は、日本銀行[4]が公表しています。各行の発表を待たずに、基準そのものを自分で追えます。

住宅ローン利用者の実態調査[2]では、金利タイプの選択と、上昇時にどう対応するつもりかも調べられています。

決まること2 ― 返済方法と、元金の減る速さ

毎月の返済額の中身

毎月の返済額 = その月の利息 + 元金に充てる分

その月の利息
残高 × 金利 ÷ 12
元金に充てる分
返済額から利息を引いた残り

利息は残高にかかる。残高が大きい初期ほど、利息の額が大きい。

日本の住宅ローンは元利均等返済が一般的です。毎月の額は変わりませんが、その中身は毎月入れ替わります。

3,000万円・35年・2.0%で、元金がどう減るか
  1. 初回

    99,379円のうち、元金は49,379円だけ

    残り50,000円は利息として消える

  2. 10年後

    残高 23,446,458円

    減ったのは21.8%にとどまる

  3. 20年6か月目

    ここでようやく元金が半分になる

    返済期間の約6割を過ぎたところ

  4. 30年後

    残高 5,669,796円

    最後の5年で残りを一気に返す形になる

元金均等返済を選べる金融機関もあります。同じ条件なら総額で1,214,109円少なくなりますが、初回の返済額が121,429円と重くなり、借入可能額が下がります。 詳しくは元利均等返済にまとめました。

決まること3 ― 期間

3,000万円・2.0%を、期間だけ変えた場合の10年後の残高

25年で借りる

19,759,842

毎月127,156円

30年で借りる

21,919,252

毎月110,886円

35年で借りる

23,446,458

毎月99,379円

期間を延ばすと毎月は軽くなりますが、元金の減りも遅くなります。 25年と35年では、10年後の残高が3,686,616円違います。

数年後に売る前提があるなら、この差は直接効きます。 売却価格が残債に届かなければ、差額を自己資金で埋めなければ売れません。

決まること4 ― 団体信用生命保険

団信があることを理由に他の生命保険を減らしている場合、繰上返済で期間を縮めると保障される期間も縮むという点も、頭に入れておく価値があります。

決まること5 ― 諸費用

借入額に比例するものと、しないもの

比例するもの

  • 事務手数料の定率型(借入額の2.2%程度)
  • 保証料(一括前払型)
  • 抵当権設定登記の登録免許税
  • 印紙税(段階的だが額に応じる)

借入額が大きいほど重くなる。

しないもの

  • 事務手数料の定額型(数万円)
  • 司法書士報酬
  • 抵当権抹消の登録免許税(不動産1個1,000円)

額に関係なくかかる。

抵当権の仕組みと、決済の日になぜ全部を同時にやるのかは抵当権にまとめました。

住宅ローンと投資用ローンは、別物である

同じ「不動産の借入」でも、性質がまったく違います。

判断の基準が違う

住宅ローン

  • 返済の原資は本人の収入
  • 審査は年収・勤務先・勤続年数が中心
  • 金利は低い。5年ルール・125%ルールがある商品が多い
  • 住宅ローン控除の対象になりうる

自分が住むことが前提。

投資用ローン

  • 返済の原資は家賃収入
  • 審査は物件の収益力も見られる
  • 金利は高め。5年ルール・125%ルールは無いことが多い
  • 住宅ローン控除の対象外

事業性の融資に近い。

変動金利の5年ルール・125%ルールは法令ではなく商品ごとの特約なので、投資用では無いことが多くあります。住宅ローンを前提にした解説を投資用に当てはめると、想定を誤ります。

審査は2段階ある

事前審査と本審査
  1. 事前審査(仮審査)買付を入れる前

    申込者の属性を中心に、短期間で判断される。数日から1週間程度

  2. 売買契約

    事前審査の結果を前提に契約する。融資特約を付けるのが通常

  3. 本審査

    物件の資料と申込者の書類をそろえて正式に審査する。2〜3週間程度

  4. 金銭消費貸借契約

    金利・期間・返済方法・団信がここで確定する

事前審査が通っても、本審査で否決されることはある。融資特約の期限を確かめる。

借りた後にできること1 ― 繰上返済

100万円を繰上返済したときに減る利息(3,000万円35年2.0%・期間短縮型)

5年後に実行

788,819

15年後に実行

391,304

25年後に実行

192,546

詳しくは繰上返済に、自分の条件での試算は繰上返済の効果計算機にあります。

借りた後にできること2 ― 借り換え

期間を延ばせば、毎月の額はいくらでも下げられます。そして総額は増えます。

残債2,400万円・2.0%・残り30年を1.0%へ借り換えた場合で計算すると、

  • 期間を30年のままにする … 毎月11,515円の軽減、諸費用を引いた損得は+3,517,468円
  • 期間を35年へ延ばす … 毎月20,960円の軽減、諸費用を引いた損得は+2,852,724円

毎月の軽減は約2倍になりますが、総額は664,744円多く払います。

自分の条件での試算は借り換えの損得計算機にあります。

借りた後にできること3 ― 条件変更

返済が苦しくなったときに、期間の延長や一時的な返済額の減額を相談できる場合があります。

判断の順序

契約の前に、この順で数字を出す

1つ目と4つ目が要です。比率の目安ではなく実額で、そして返済予定表という一次の資料で判断してください。

比率での見方は返済比率に、毎月の持ち出しの計算は手出しシミュレータにまとめました。

よくある質問

いくらまで借りられますか?
年収に対する年間返済額の割合(返済負担率)を基準に判断されることが多く、金融機関ごとに上限が定められています。ただしその上限は「返しきれる見込みがある」と金融機関が判断できる線であって、生活が成り立つ線ではありません。借りられる額と借りてよい額は別のものです。判断すべきは後者で、これは自分でしか出せません。
変動金利と固定金利はどちらがよいですか?
一律の正解はありません。判断できるのは、金利が上がったときに家計が耐えられるかどうかです。いまの返済額ではなく、金利が2%や3%になったときの返済額を先に計算し、その額を払えるかを確かめてください。払えないなら、変動金利の5年ルールは払えるようにしてくれるものではなく、払えないことに気づく時期を遅らせるだけです。
頭金はいくら入れるべきですか?
一律の目安はありません。頭金を増やせば借入が減り、毎月の返済も売却時の残債も減ります。一方で手元の現金が減るため、空室や修繕、生活の予備費が薄くなります。投資用では、借入額が建物の価格を超えた部分の利子が損益通算の対象から外れるという税務上の論点も加わります。どちらの方向にも理由があるので、両方を数字にして比べてください。
借りた後に条件を変えられますか?
動かせるものは3つあります。繰上返済、借り換え、条件変更(期間の延長や一時的な返済額の減額)です。金利の種類を変えることは、同じ金融機関の中では扱いがある場合とない場合があります。いずれも手数料や諸費用がかかるため、契約時に決めた条件がその後も効き続けると考えたほうが実際に合っています。
借入の諸費用はいくらかかりますか?
事務手数料、保証料、登録免許税、印紙税、団信の保険料(金利に含まれることが多い)があります。事務手数料は借入額の2.2%程度とする定率型と数万円の定額型に分かれ、定率型は借入額が大きいほど重くなります。抵当権の設定登記にかかる登録免許税は債権金額の1,000分の4が本則で、住宅用家屋には要件を満たせば1,000分の1とする軽減があります。

出典 番号は本文中の [n] に対応します

  1. 2025年度 フラット35利用者調査

    独立行政法人 住宅金融支援機構 2026年7月

    確認日 2026-08-18

  2. 住宅ローン利用者の実態調査

    独立行政法人 住宅金融支援機構 2026年2月

    確認日 2026-08-19

  3. 団体信用生命保険(機構団信)

    独立行政法人 住宅金融支援機構

    確認日 2026-08-19

  4. 登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 昭和42年

    確認日 2026-08-19

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