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手出し てだし

手出しとは、不動産投資で家賃収入だけでは返済と経費をまかなえず、毎月自分の財布から払う不足分のこと。持ち出しともいう。月額で示されるため、総額の大きさが見えにくい。

この記事の要点

  1. 家賃から返済と経費を引いて足りない分が手出し。毎月あなたの財布から出ていく
  2. 月額で示されるため小さく見えるが、35年で見ると数百万から一千万円台になる
  3. 手出しがあること自体が悪いのではない。総額を知らずに契約することが問題になる
  4. 手出しは時間とともに増えやすい。家賃は下がり、修繕積立金は上がるため
  5. 節税で取り返せるかは人によって違う。一律の前提で説明されたら数字を出してもらう
目次(5項目)

手出しとは、家賃収入だけでは返済と経費をまかなえず、不足分を毎月自分の財布から払うことです。「持ち出し」ともいいます。

販売の場面では「月々わずか1万円で」という言い方で出てきます。この言葉自体は正確です。問題は、その数字が月額でしか示されないことにあります。

手出しは、単なる引き算で決まる

手出しの正体

手出し = (ローン返済 + 管理費 + 管理手数料 + 税 + 保険) − 実際に入る家賃

ローン返済
元利均等返済の毎月の額
管理費
管理費と修繕積立金の合計(区分所有の場合)
管理手数料
賃貸管理を委託する場合の手数料。家賃の5%前後が多い
固定資産税都市計画税を12で割った額
実際に入る家賃
満室時の家賃から、空室のぶんを引いた額

難しい式ではない。難しいのは、それぞれの数字を正直に埋めることのほう。

複雑な計算ではありません。それでも手出しの大きさが読めなくなるのは、右側の数字が小さめに、左側の数字が大きめに見積もられがちだからです。

自分の条件で計算するなら、手出しシミュレータに入れてみてください。入力した内容は送信されません。

月額を、35年分に直してみる

ここがこの記事の要点です。

同じ金額を、返済期間の合計で見ると

月5,000円

210万円

月10,000円

420万円

月20,000円

840万円

月30,000円

1,260万円

「月額 × 12 × 35年」で計算した額。家賃の下落と修繕積立金の値上げは含んでいないため、実際にはこれより大きくなりやすい。

月1万円は、小さな金額に聞こえます。420万円は、そうは聞こえません。どちらも同じ金額です。

人は月額で示されると小さく感じ、総額で示されると大きく感じます。売る側が月額で説明するのは、そのほうが売れるからです。責める話ではなく、買う側が両方に直して見ればよいというだけのことです。

手出しは、放っておくと増える方向に動く

契約時の手出しが、35年間そのまま続く前提は現実的ではありません。

時間とともに、どちらへ動くか

手出しを増やす方向

  • 家賃は築年数とともに下がりやすい
  • 修繕積立金は長期修繕計画にもとづいて上がるのが通常
  • 設備の交換・原状回復の費用が発生する
  • 変動金利なら、金利が上がれば返済額も上がる
  • 空室が出れば、その月の家賃はゼロになる

いずれも、時間が経てば起きうること。

手出しを減らす方向

  • 繰上返済をすれば返済額が減る
  • 賃料の高い地域なら、家賃が下がりにくいことがある
  • 借り換えで金利が下がることがある

いずれも、こちらから動かないと起きないこと。

片方は自動で起き、もう片方は自分で動かないと起きません。 この非対称が、手出しの見積もりで最も見落とされるところです。

修繕積立金については、国土交通省がガイドライン[2]を出しており、長期修繕計画の事例から専有面積あたりの目安を示しています。現在の積立金がその目安より低い場合、将来上がる可能性を見ておく必要があります。

「節税で取り返せる」の中身

手出しの説明とセットで出てくるのが節税の話です。仕組み自体は実在します。

損益通算で税が戻る仕組み
  1. 減価償却費を経費として計上する現金は動かない

    建物の取得費を耐用年数にわたって費用として配分する。実際に現金が出ていくわけではない

  2. 不動産所得が赤字になる

    家賃収入より経費のほうが大きくなると、帳簿上は赤字になる

  3. 給与所得と損益通算する

    赤字を給与所得から差し引くことで、課税される所得が減る

  4. 源泉徴収された税の一部が戻る

    確定申告で還付を受ける

減価償却の考え方は国税庁の「減価償却のあらまし」にある。

減価償却[3]の仕組みは正しく、還付も実際にあります。そのうえで、判断のときに確かめる点が3つあります。

節税の説明を受けたときに確かめること

3つ目は見落とされやすい点です。譲渡所得の計算[4]では、取得費から減価償却費相当額を差し引きます。保有中に減らした税の一部は、売却時に戻ってくる形になりえます。 節税は消滅ではなく、繰り延べの側面を持ちます。

どこまでの手出しなら許容できるのか

一律の正解はありません。ただ、判断の材料にできる考え方はあります。

借入の実際の水準については、住宅金融支援機構のフラット35利用者調査[1]に、借入額や返済負担率の分布が公表されています。投資用ローンとは条件が違いますが、返済の重さを考える手がかりにはなります。

よくある質問

手出しがあると、その物件は買ってはいけないのですか?
そうとは限りません。売却時の価格が残債を十分に上回れば、手出しを含めても通算で利益が出ることがあります。問題になるのは、手出しの総額と出口の見込みを知らないまま契約する場合です。判断の前に、総額がいくらになるかを計算しておく価値があります。
「月々1万円で資産が持てる」という説明は嘘ですか?
嘘ではありません。月1万円という数字自体は正しいことが多いです。ただし同じ金額を35年分に直すと420万円になります。どちらも同じ金額で、どちらを見せるかの違いです。両方を見てから判断するのが確実です。
手出しは途中で減りますか?
減る要素と増える要素の両方があります。繰上返済をすれば返済額は減ります。一方で家賃は築年数とともに下がりやすく、修繕積立金は計画にもとづいて上がるのが通常です。何もしなければ、手出しは増える方向に動きやすいと考えたほうが安全です。
節税で手出しは取り返せますか?
取り返せる場合もありますが、金額は人によって大きく変わります。減価償却などで不動産所得が赤字になれば給与所得と損益通算できますが、効果は所得の水準・物件の構造・築年数で違います。しかも建物の減価償却は耐用年数で終わります。「節税で実質ゼロ」と説明されたら、自分の所得で計算した数字を出してもらってください。

出典 番号は本文中の [n] に対応します

  1. 2025年度 フラット35利用者調査

    独立行政法人 住宅金融支援機構 2026年7月

    確認日 2026-08-18

  2. マンションの修繕積立金に関するガイドライン

    国土交通省 平成23年4月策定・令和6年6月7日改訂

    確認日 2026-08-18

  3. No.2100 減価償却のあらまし

    国税庁

    確認日 2026-08-18

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