手出し てだし
手出しとは、不動産投資で家賃収入だけでは返済と経費をまかなえず、毎月自分の財布から払う不足分のこと。持ち出しともいう。月額で示されるため、総額の大きさが見えにくい。
この記事の要点
- 家賃から返済と経費を引いて足りない分が手出し。毎月あなたの財布から出ていく
- 月額で示されるため小さく見えるが、35年で見ると数百万から一千万円台になる
- 手出しがあること自体が悪いのではない。総額を知らずに契約することが問題になる
- 手出しは時間とともに増えやすい。家賃は下がり、修繕積立金は上がるため
- 節税で取り返せるかは人によって違う。一律の前提で説明されたら数字を出してもらう
手出しとは、家賃収入だけでは返済と経費をまかなえず、不足分を毎月自分の財布から払うことです。「持ち出し」ともいいます。
販売の場面では「月々わずか1万円で」という言い方で出てきます。この言葉自体は正確です。問題は、その数字が月額でしか示されないことにあります。
手出しは、単なる引き算で決まる
手出し = (ローン返済 + 管理費 + 管理手数料 + 税 + 保険) − 実際に入る家賃
難しい式ではない。難しいのは、それぞれの数字を正直に埋めることのほう。
複雑な計算ではありません。それでも手出しの大きさが読めなくなるのは、右側の数字が小さめに、左側の数字が大きめに見積もられがちだからです。
自分の条件で計算するなら、手出しシミュレータに入れてみてください。入力した内容は送信されません。
月額を、35年分に直してみる
ここがこの記事の要点です。
月5,000円
210万円
月10,000円
420万円
月20,000円
840万円
月30,000円
1,260万円
「月額 × 12 × 35年」で計算した額。家賃の下落と修繕積立金の値上げは含んでいないため、実際にはこれより大きくなりやすい。
月1万円は、小さな金額に聞こえます。420万円は、そうは聞こえません。どちらも同じ金額です。
人は月額で示されると小さく感じ、総額で示されると大きく感じます。売る側が月額で説明するのは、そのほうが売れるからです。責める話ではなく、買う側が両方に直して見ればよいというだけのことです。
手出しは、放っておくと増える方向に動く
契約時の手出しが、35年間そのまま続く前提は現実的ではありません。
片方は自動で起き、もう片方は自分で動かないと起きません。 この非対称が、手出しの見積もりで最も見落とされるところです。
修繕積立金については、国土交通省がガイドライン[2]を出しており、長期修繕計画の事例から専有面積あたりの目安を示しています。現在の積立金がその目安より低い場合、将来上がる可能性を見ておく必要があります。
「節税で取り返せる」の中身
手出しの説明とセットで出てくるのが節税の話です。仕組み自体は実在します。
減価償却費を経費として計上する現金は動かない
建物の取得費を耐用年数にわたって費用として配分する。実際に現金が出ていくわけではない
不動産所得が赤字になる
家賃収入より経費のほうが大きくなると、帳簿上は赤字になる
給与所得と損益通算する
赤字を給与所得から差し引くことで、課税される所得が減る
源泉徴収された税の一部が戻る
確定申告で還付を受ける
減価償却の考え方は国税庁の「減価償却のあらまし」にある。
減価償却[3]の仕組みは正しく、還付も実際にあります。そのうえで、判断のときに確かめる点が3つあります。
3つ目は見落とされやすい点です。譲渡所得の計算[4]では、取得費から減価償却費相当額を差し引きます。保有中に減らした税の一部は、売却時に戻ってくる形になりえます。 節税は消滅ではなく、繰り延べの側面を持ちます。
どこまでの手出しなら許容できるのか
一律の正解はありません。ただ、判断の材料にできる考え方はあります。
借入の実際の水準については、住宅金融支援機構のフラット35利用者調査[1]に、借入額や返済負担率の分布が公表されています。投資用ローンとは条件が違いますが、返済の重さを考える手がかりにはなります。
よくある質問
手出しがあると、その物件は買ってはいけないのですか?
「月々1万円で資産が持てる」という説明は嘘ですか?
手出しは途中で減りますか?
節税で手出しは取り返せますか?
出典 番号は本文中の [n] に対応します
関連する解説
不動産投資
ワンルーム投資
ワンルーム投資とは、マンションの一室を購入して賃貸に出し、家賃収入を得る投資の...
10分で読めます 3,607字
不動産投資
実質利回り
実質利回りとは、年間の家賃収入から運営経費を差し引いた額を、物件の取得価格で割...
7分で読めます 2,793字
不動産投資
不動産投資の全体像
不動産投資とは、不動産を取得して賃料収入や売却益を得ること。利益は保有中の収支...
14分で読めます 5,442字
税金
減価償却
減価償却とは、建物や設備の取得費を耐用年数にわたって費用として配分すること。現...
7分で読めます 2,559字
ローン・お金
返済比率
返済比率とは、家賃収入に対するローン返済額の割合のこと。投資用不動産で収支の余...
7分で読めます 2,626字
不動産投資
サブリース
サブリースとは、業者が物件を一括で借り上げ、入居者へ転貸する仕組みのこと。空室...
8分で読めます 3,104字