繰上返済 くりあげへんさい
繰上返済とは、毎月の返済とは別にまとまった額を返して元金を減らすこと。期間短縮型と返済額軽減型があり、同じ額でも実行する時期で効果が大きく変わる。
この記事の要点
- 繰上返済した額は、全額が元金に充てられる。以後その分の利息がかからない
- 早い時期ほど効く。同じ100万円でも5年後と25年後で軽減額が約4倍違う
- 期間短縮型は利息の軽減が大きく、返済額軽減型は毎月の余裕が増える
- 期間短縮型で償還期間が10年未満になると、住宅ローン控除の対象から外れる
- 手元の現金が減る。空室・修繕・生活の予備費を残したうえでの話になる
繰上返済とは、毎月の返済とは別に、まとまった額を返して元金を減らすことです。
払った額は全額が元金に充てられます。 以後その分の利息がかからなくなるので、効果は「減った利息」として表れます。
2つの型がある
期間短縮型
- 毎月の返済額は変わらない
- 返済期間が短くなる
- 利息の軽減額が大きい
総額を減らしたいとき。
返済額軽減型
- 返済期間は変わらない
- 毎月の返済額が下がる
- 利息の軽減額は小さめ
毎月の余裕を作りたいとき。
3,000万円を35年・金利2.0%で借り、5年後に100万円を繰上返済した場合で計算します。
期間短縮型で減る利息
788,819円
期間が1年6か月短くなる
返済額軽減型で減る利息
330,630円
毎月3,696円下がる
どちらが正しいという話ではありません。総額を減らしたいのか、毎月の余裕を作りたいのか。目的が違えば、選ぶ型も変わります。
時期で、効果が4倍変わる
同じ100万円を、実行する時期だけ変えて計算します。
5年後
- 残高 26,886,795円
- 減る利息 788,819円
- 期間が1年6か月短くなる
残高が大きいうちほど効く。
15年後
- 残高 19,644,614円
- 減る利息 391,304円
- 期間が1年2か月短くなる
半分以下になる。
25年後
- 残高 10,800,467円
- 減る利息 192,546円
- 期間が1年短くなる
5年後の約4分の1。
- 5年後に実行788,819円57.5%
- 15年後に実行391,304円28.5%
- 25年後に実行192,546円14.0%
元利均等返済では、返済の初期ほど利息の割合が大きくなります。繰上返済が早いほど効くのは、この構造の裏返しです。
住宅ローン控除を失う条件
ここが最も見落とされます。
制度そのものの要件と、途中で止まる場面は住宅ローン控除にまとめました。
資格を失わなくても、額は減る
10年ルールに当たらなくても、年末残高が減れば控除の枠は減ります。 控除率0.7%は租税特別措置法[3]41条4項2号・8項にあり、令和4年から令和12年までの各年に当たります。減り方は掛け算で出ます。
減る枠 = 繰上返済した額 × 0.7% × 残っている控除年数
- 0.7%
- 控除率(措置法41条4項2号・8項。令和4年から令和12年までの各年)
- 残っている控除年数
- 13年または10年のうち、まだ来ていない年の数
控除5年目に100万円を返済額軽減型で返すなら、1,000,000 × 0.007 × 8年 = 56,000円。
★ただし、これは「枠」が減る額であって、「控除」が減る額ではありません。
住宅ローン控除で実際に戻るのは、枠と、その年に納めた所得税・住民税の小さいほうです。枠が納めた税を上回っている年は、上回っている部分がもともと使えていません。そこが削られても、戻る額は変わりません。
その年、枠を使い切っているか
使い切っている
枠が減った分だけ、控除も減る
- 納めた税のほうが枠より多い状態
- 繰上返済額 × 0.7% が、その年の減少額
- 残りの控除年数のぶん、毎年続く
借入額が大きく、所得も高い人はこちらになりやすい。
余っている
枠が減っても、控除は減らない
- 枠のほうが、納めた税より多い状態
- もともと使えていなかった部分が削られるだけ
- 余りを使い切るまでは、1円も減らない
★借入初期の残高が大きい年ほど、余りが出やすい。
余りは残高が減るにつれて小さくなります。返す時期が早いほど、影響を受ける年が増えます。
実額は住宅ローン控除の計算機で出せます。控除期間が終わってから繰上返済する、という判断もありえます。利息の減り方は早いほど大きく、控除の減り方も早いほど大きい。 どちらが上回るかは、額と残りの年数で決まります。
「実質何%で運用したのと同じか」
繰上返済の効果は、投資の利回りに直して比べられます。
実質の利回り = 減った利息 ÷ 繰上返済した額 ÷ 残りの年数
- 減った利息
- 5年後に100万円を期間短縮型なら 788,819円
- 繰上返済した額
- 1,000,000円
- 残りの年数
- 30年
788,819 ÷ 1,000,000 ÷ 30 = 年 2.63%
見落とされやすい2つ
やる前に確かめること
1つ目を飛ばさないでください。繰上返済は、いつでもできます。 しかし手元の現金が無い状態で空室や修繕が来たときに、後から現金を戻すことはできません。
借入額の実際の水準はフラット35利用者調査[2]に公表されています。返済比率とあわせて、返済後にいくら残るかを実額で見てください。