不動産知識大全 業者が言わない数字まで、検算して解説する。
ローン・お金 8分で読めます 2,924字

繰上返済 くりあげへんさい

繰上返済とは、毎月の返済とは別にまとまった額を返して元金を減らすこと。期間短縮型と返済額軽減型があり、同じ額でも実行する時期で効果が大きく変わる。

この記事の要点

  1. 繰上返済した額は、全額が元金に充てられる。以後その分の利息がかからない
  2. 早い時期ほど効く。同じ100万円でも5年後と25年後で軽減額が約4倍違う
  3. 期間短縮型は利息の軽減が大きく、返済額軽減型は毎月の余裕が増える
  4. 期間短縮型で償還期間が10年未満になると、住宅ローン控除の対象から外れる
  5. 手元の現金が減る。空室・修繕・生活の予備費を残したうえでの話になる
目次(6項目)

繰上返済とは、毎月の返済とは別に、まとまった額を返して元金を減らすことです。

払った額は全額が元金に充てられます。 以後その分の利息がかからなくなるので、効果は「減った利息」として表れます。

2つの型がある

何が変わるのか

期間短縮型

  • 毎月の返済額は変わらない
  • 返済期間が短くなる
  • 利息の軽減額が大きい

総額を減らしたいとき。

返済額軽減型

  • 返済期間は変わらない
  • 毎月の返済額が下がる
  • 利息の軽減額は小さめ

毎月の余裕を作りたいとき。

3,000万円を35年・金利2.0%で借り、5年後に100万円を繰上返済した場合で計算します。

5年後に100万円(残高 26,886,795円 / 残り360回)

期間短縮型で減る利息

788,819

期間が1年6か月短くなる

返済額軽減型で減る利息

330,630

毎月3,696円下がる

どちらが正しいという話ではありません。総額を減らしたいのか、毎月の余裕を作りたいのか。目的が違えば、選ぶ型も変わります。

時期で、効果が4倍変わる

同じ100万円を、実行する時期だけ変えて計算します。

100万円を、いつ繰上返済するか(期間短縮型)

5年後

  • 残高 26,886,795円
  • 減る利息 788,819円
  • 期間が1年6か月短くなる

残高が大きいうちほど効く。

15年後

  • 残高 19,644,614円
  • 減る利息 391,304円
  • 期間が1年2か月短くなる

半分以下になる。

25年後

  • 残高 10,800,467円
  • 減る利息 192,546円
  • 期間が1年短くなる

5年後の約4分の1。

同じ100万円で減る利息(円)
  • 5年後に実行788,819円
  • 15年後に実行391,304円
  • 25年後に実行192,546円

元利均等返済では、返済の初期ほど利息の割合が大きくなります。繰上返済が早いほど効くのは、この構造の裏返しです。

住宅ローン控除を失う条件

ここが最も見落とされます。

年末残高が減ることによる控除額の減少も、別に効きます。控除期間が終わってから繰上返済する、という判断もありえます。

「実質何%で運用したのと同じか」

繰上返済の効果は、投資の利回りに直して比べられます。

実質の利回りに直す

実質の利回り = 減った利息 ÷ 繰上返済した額 ÷ 残りの年数

減った利息
5年後に100万円を期間短縮型なら 788,819円
繰上返済した額
1,000,000円
残りの年数
30年

788,819 ÷ 1,000,000 ÷ 30 = 年 2.63%

見落とされやすい2つ

やる前に確かめること

この順で確かめる

1つ目を飛ばさないでください。繰上返済は、いつでもできます。 しかし手元の現金が無い状態で空室や修繕が来たときに、後から現金を戻すことはできません。

借入額の実際の水準はフラット35利用者調査[2]に公表されています。返済比率とあわせて、返済後にいくら残るかを実額で見てください。

よくある質問

期間短縮型と返済額軽減型はどちらを選ぶべきですか?
利息の軽減だけを見れば期間短縮型です。3,000万円を35年・2.0%で借り、5年後に100万円を繰上返済した場合、期間短縮型なら788,819円、返済額軽減型なら330,630円の利息が減ります。ただし期間短縮型では毎月の返済額は1円も下がりません。毎月の資金繰りを楽にしたいなら返済額軽減型です。どちらが正しいという話ではなく、いま何を必要としているかで決まります。
早くやったほうがよいのですか?
同じ額なら早いほうが効きます。3,000万円35年2.0%で100万円を繰上返済した場合、期間短縮型の利息軽減額は5年後で788,819円、15年後で391,304円、25年後で192,546円です。5年後と25年後で約4倍違います。ただし手元の現金を減らすことでもあるため、備えを確保したうえでの話になります。
住宅ローン控除への影響はありますか?
2つあります。1つは年末残高が減ることで控除額が減ること。もう1つがより重要で、期間短縮型で償還期間が10年未満になると、そもそも控除の対象から外れることです。国税庁の案内では、対象となる借入金は償還期間が10年以上であることが要件とされ、この10年は最初の返済の時から返済が終了する時までの期間をいうとされています。控除期間中の期間短縮型は、この点を確かめてから行ってください。
手数料はいくらかかりますか?
金融機関と手続きの方法で違います。窓口では数千円から数万円、インターネット経由では無料としている金融機関もあります。一部繰上返済と全額繰上返済で扱いが違うこともあります。少額を何度も行う場合、手数料が軽減額を上回ることがあるため、無料かどうかは先に確かめてください。
繰上返済と投資、どちらに回すべきですか?
比べるための数字は出せます。3,000万円35年2.0%で5年後に100万円を期間短縮型で繰上返済すると、788,819円の利息が減ります。100万円を30年で割り戻すと年2.63%にあたります。この率より確実に高い利回りを得られる先があるなら、そちらへ回す判断もありえます。ただしローンの金利は確定していて、投資の利回りは確定していません。同じ土俵では比べられないという点は残ります。

出典 番号は本文中の [n] に対応します

  1. 2025年度 フラット35利用者調査

    独立行政法人 住宅金融支援機構 2026年7月

    確認日 2026-08-18

関連する解説