変動金利 へんどうきんり
変動金利とは、返済の途中で金利が見直される借り方のこと。5年ルール・125%ルールは負担を減らす仕組みではなく、負担の表面化を遅らせる仕組みである。
この記事の要点
- 5年ルール・125%ルールは法令ではなく、金融機関ごとの特約。無い商品もある
- 返済額が据え置かれても、利息は上がった金利で計算される。差は元金の減りが止まる形で現れる
- 金利が高くなりすぎると、返済額が利息に届かず未払利息が積み上がる
- 5年ルールは安全装置ではなく、問題に気づくのが5年遅れる仕組みでもある
- 投資用ローンにはこの2つのルールが無いことが多い。同じ「変動」でも別物
目次(8項目)
変動金利とは、返済の途中で金利が見直される借り方です。借入時点の金利は固定金利より低いことが多く、その差が選ばれる理由になっています。
説明の多くは「5年ルールと125%ルールがあるので、急に返済額が上がることはありません」で終わります。この文は事実です。ただし、その2つが何をしているのかを書いていません。
何が変わり、何が変わらないのか
差はどこへ行くのか。元金の減りが遅くなる形で現れます。
毎月の返済額 = その月の利息 + 元金に充てる分
- その月の利息
- 残高 × 金利 ÷ 12。金利が上がれば、ここが増える
- 元金に充てる分
- 返済額から利息を引いた残り
返済額が据え置かれると、利息が増えたぶん、元金に充てる分がそのまま減る。
実際に計算する
3,000万円を35年、当初金利0.5%で借りた場合で見ます。
借入額
3,000万円
期間
35年
当初金利
0.5%
毎月の返済額
77,876円
5年間このまま返すと、残高は26,028,858円になります。3,000万円のうち約397万円が減った状態です。
ここで金利が2.0%へ上がったとします。5年ルールがある場合と無い場合を並べます。
5年ルールあり
- 毎月の返済額は77,876円のまま
- 家計の見た目は何も変わらない
- 10年後の残高 23,854,091円
- 元金の減りが遅くなっている
請求額は据え置かれる。減っていないことは通帳に出ない。
5年ルールなし
- 毎月の返済額が96,208円へ改定される
- 月18,332円の負担増がすぐ来る
- 10年後の残高 22,698,300円
- 予定どおりに元金が減る
痛みは早く来るが、状況は正しく伝わる。
125%ルールは、いつ効くのか
5年経つと、返済額が見直されます。このとき「直前の返済額の1.25倍まで」という上限がかかる商品が多い、というのが125%ルールです。
上の例で、11年目の見直しを計算します。
- 125%の上限で払える額97,345円96.3%
- 上限に阻まれて払えない額3,762円3.7%
残った期間で返しきるには月101,107円が必要ですが、125%の上限は月97,345円です。上限に当たります。
未払利息 ― 元金が1円も減らなくなる状態
さらに進むと、毎月の返済額が、その月の利息にすら足りなくなります。
残高 × 金利 ÷ 12 > 毎月の返済額
- 残高
- 5年後の例では 26,028,858円
- 毎月の返済額
- 据え置かれた 77,876円
この式が成り立つ金利を逆算すると、約3.59%になる。
金利 2.0%
元金の減りが遅くなる
返済額の中で利息の割合が増える。まだ元金は減っている
金利 3.0%
元金がほとんど減らなくなる
返済額の大半が利息に消える
金利 3.59%を超える
元金が1円も減らない。不足した利息が別枠で積み上がる
毎月の請求額は77,876円のまま。通帳を見ても分からない
5年ルールは、安全装置なのか
これは欠点だけとは言えません。金利の一時的な変動で家計が揺れるのを防ぐ、という効き方をします。
ただし金利が上がり続ける局面では、逆に働きます。 対応する時間を稼ぐどころか、対応が必要だと気づく時期を5年遅らせます。
一時的に上がって戻る場合
- 返済額が動かず、家計が揺れない
- 元金の遅れも一時的で済む
- 見直しの時点では影響が小さい
この場合、5年ルールは有効に働く。
上がったまま戻らない場合
- 5年間、元金の遅れが積み上がり続ける
- 気づくのが見直しの通知を受けたとき
- そのときには借換えの条件も悪化している
早く知りたい情報が、いちばん遅く届く。
変動金利の「基準」は公開されている
変動金利型の住宅ローンは、短期プライムレートを基準にする商品が多くあります。この基準そのものは公開されています。
投資用ローンは、同じ「変動」でも別物
借りる前に確かめること
1つ目が最も重要です。返済比率や返済負担率の目安は、借入時点の金利で計算された数字であることがほとんどです。フラット35利用者調査[3]にある返済負担率の分布も、その時点の金利にもとづきます。
金利が上がった後も同じ比率でいられるかは、別に計算しなければ分かりません。