不動産知識大全 業者が言わない数字まで、検算して解説する。
ローン・お金 9分で読めます 3,542字

変動金利 へんどうきんり

変動金利とは、返済の途中で金利が見直される借り方のこと。5年ルール・125%ルールは負担を減らす仕組みではなく、負担の表面化を遅らせる仕組みである。

この記事の要点

  1. 5年ルール・125%ルールは法令ではなく、金融機関ごとの特約。無い商品もある
  2. 返済額が据え置かれても、利息は上がった金利で計算される。差は元金の減りが止まる形で現れる
  3. 金利が高くなりすぎると、返済額が利息に届かず未払利息が積み上がる
  4. 5年ルールは安全装置ではなく、問題に気づくのが5年遅れる仕組みでもある
  5. 投資用ローンにはこの2つのルールが無いことが多い。同じ「変動」でも別物
目次(8項目)

変動金利とは、返済の途中で金利が見直される借り方です。借入時点の金利は固定金利より低いことが多く、その差が選ばれる理由になっています。

説明の多くは「5年ルールと125%ルールがあるので、急に返済額が上がることはありません」で終わります。この文は事実です。ただし、その2つが何をしているのかを書いていません。

何が変わり、何が変わらないのか

差はどこへ行くのか。元金の減りが遅くなる形で現れます。

毎月の返済額の中身

毎月の返済額 = その月の利息 + 元金に充てる分

その月の利息
残高 × 金利 ÷ 12。金利が上がれば、ここが増える
元金に充てる分
返済額から利息を引いた残り

返済額が据え置かれると、利息が増えたぶん、元金に充てる分がそのまま減る。

実際に計算する

3,000万円を35年、当初金利0.5%で借りた場合で見ます。

借入直後の姿

借入額

3,000万円

期間

35

当初金利

0.5

毎月の返済額

77,876

5年間このまま返すと、残高は26,028,858円になります。3,000万円のうち約397万円が減った状態です。

ここで金利が2.0%へ上がったとします。5年ルールがある場合と無い場合を並べます。

6年目に金利が0.5%→2.0%になったとき

5年ルールあり

  • 毎月の返済額は77,876円のまま
  • 家計の見た目は何も変わらない
  • 10年後の残高 23,854,091円
  • 元金の減りが遅くなっている

請求額は据え置かれる。減っていないことは通帳に出ない。

5年ルールなし

  • 毎月の返済額が96,208円へ改定される
  • 月18,332円の負担増がすぐ来る
  • 10年後の残高 22,698,300円
  • 予定どおりに元金が減る

痛みは早く来るが、状況は正しく伝わる。

125%ルールは、いつ効くのか

5年経つと、返済額が見直されます。このとき「直前の返済額の1.25倍まで」という上限がかかる商品が多い、というのが125%ルールです。

上の例で、11年目の見直しを計算します。

11年目の見直しで起きること(月あたり)
  • 125%の上限で払える額97,345円
  • 上限に阻まれて払えない額3,762円

残った期間で返しきるには月101,107円が必要ですが、125%の上限は月97,345円です。上限に当たります。

未払利息 ― 元金が1円も減らなくなる状態

さらに進むと、毎月の返済額が、その月の利息にすら足りなくなります。

未払利息が生まれる条件

残高 × 金利 ÷ 12 > 毎月の返済額

残高
5年後の例では 26,028,858円
毎月の返済額
据え置かれた 77,876円

この式が成り立つ金利を逆算すると、約3.59%になる。

未払利息が積み上がるまで
  1. 金利 2.0%

    元金の減りが遅くなる

    返済額の中で利息の割合が増える。まだ元金は減っている

  2. 金利 3.0%

    元金がほとんど減らなくなる

    返済額の大半が利息に消える

  3. 金利 3.59%を超える

    元金が1円も減らない。不足した利息が別枠で積み上がる

    毎月の請求額は77,876円のまま。通帳を見ても分からない

5年ルールは、安全装置なのか

これは欠点だけとは言えません。金利の一時的な変動で家計が揺れるのを防ぐ、という効き方をします。

ただし金利が上がり続ける局面では、逆に働きます。 対応する時間を稼ぐどころか、対応が必要だと気づく時期を5年遅らせます。

同じ仕組みが、局面によって逆に働く

一時的に上がって戻る場合

  • 返済額が動かず、家計が揺れない
  • 元金の遅れも一時的で済む
  • 見直しの時点では影響が小さい

この場合、5年ルールは有効に働く。

上がったまま戻らない場合

  • 5年間、元金の遅れが積み上がり続ける
  • 気づくのが見直しの通知を受けたとき
  • そのときには借換えの条件も悪化している

早く知りたい情報が、いちばん遅く届く。

変動金利の「基準」は公開されている

変動金利型の住宅ローンは、短期プライムレートを基準にする商品が多くあります。この基準そのものは公開されています。

投資用ローンは、同じ「変動」でも別物

借りる前に確かめること

契約の前に、この5つを数字で出す

1つ目が最も重要です。返済比率や返済負担率の目安は、借入時点の金利で計算された数字であることがほとんどです。フラット35利用者調査[3]にある返済負担率の分布も、その時点の金利にもとづきます。

金利が上がった後も同じ比率でいられるかは、別に計算しなければ分かりません。

よくある質問

5年ルールがあれば、金利が上がっても返済額は変わらないのですか?
5年間は変わりません。ただし利息は上がった後の金利で計算され続けます。返済額が同じまま利息だけ増えるので、そのぶん元金の返済に回る額が減ります。3,000万円を35年・当初0.5%で借り、6年目に2.0%へ上がった例では、10年後の残高が5年ルールの無い場合より約115万円多く残りました。返済額が変わらないことと、負担が変わらないことは別です。
125%ルールがあれば返済額は1.25倍までしか上がらないのですか?
見直しのたびに、直前の返済額の1.25倍が上限になります。ただし上限で止まった分の元金は消えません。残りの期間で返しきれない場合、最終回にまとめて残ります。上と同じ条件では、11年目の見直しで本来必要な額が月101,107円、125%の上限が月97,345円となり、上限に当たりました。上限に当たったということは、そこから先は予定どおりに減らないということです。
未払利息とは何ですか?
毎月の返済額が、その月の利息にすら足りない状態で生じる不足分です。上の例では、5年後の残高26,028,858円に対して返済額が77,876円なので、金利が約3.59%を超えると利息が返済額を上回ります。この状態では元金が1円も減らないどころか、不足した利息が別枠で積み上がっていきます。5年ルールは返済額を据え置く仕組みなので、この状態に入っても毎月の請求額は変わらず、通帳を見ているだけでは気づけません。
変動と固定はどちらを選ぶべきですか?
一律の正解はありません。判断できるのは、金利が上がったときに家計が耐えられるかどうかです。いまの返済額ではなく、金利が2%・3%になったときの返済額を先に計算し、その額を毎月払えるかを確かめてください。払えないなら、5年ルールは払えるようにしてくれるものではなく、払えないことに気づく時期を遅らせるだけです。
投資用ローンでも5年ルールは使えますか?
無いことが多い商品です。5年ルール・125%ルールは主に住宅ローンの商品性であり、法律で決まったものではありません。投資用ローンでは金利の見直しがそのまま毎月の返済額に反映される契約が一般的です。住宅ローンの解説をそのまま投資用に当てはめると、想定を誤ります。契約前に金銭消費貸借契約書と商品説明書で確認してください。

出典 番号は本文中の [n] に対応します

  1. 住宅ローン利用者の実態調査

    独立行政法人 住宅金融支援機構 2026年2月

    確認日 2026-08-19

  2. 2025年度 フラット35利用者調査

    独立行政法人 住宅金融支援機構 2026年7月

    確認日 2026-08-18

関連する解説