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修繕積立金 しゅうぜんつみたてきん

修繕積立金は、販売資料に載る額が将来も続くとは限らない。国土交通省のガイドラインは、月6,000円が30年後に月21,000円になる例を挙げている。

この記事の要点

  1. 販売資料の額は「いま払う額」で、将来払う額ではない
  2. 国交省のガイドラインは、月6,000円が30年後に月21,000円になる例を挙げている
  3. 目安は専有面積あたりの単価で決まる。自分の物件でも計算できる
  4. 令和6年の改定で「初期は均等額の0.6倍以上、最終は1.1倍以内」という考え方が入った
  5. 滞納のある部屋を買うと、その滞納分を引き継ぐ(区分所有法8条)
目次(6項目)

修繕積立金とは、マンションの大規模な修繕にそなえて、区分所有者が毎月積み立てていくお金です。管理費とは別のもので、管理費が日々の運営費なのに対し、こちらは将来の工事のための貯金にあたります。

販売資料に書かれている額が、そのまま続くとは限りません。 そこが本題です。

販売資料の額は、いま払う額である

区分マンションの販売資料には、修繕積立金の月額が書かれています。その数字は、いま払う額です。

国土交通省のガイドライン[1]は、集め方を2つ挙げています。

同じ522万円を、どう集めるか

積み立て方は、どちらか

  • 均等積立方式

    30年間ずっと月14,500円

    • 将来の増額を組み込んでいない
    • 安定して積み立てられる
    • 国土交通省が「望ましい方式」としている

    当初の負担は大きいが、後から揉めない。

  • 段階増額積立方式

    初年度は月6,000円。26〜30年目は月21,000円

    • 購入時に修繕積立基金36万円を払う
    • 5年ごとに月3,000円ずつ上がる前提
    • 増額の合意が取れないと、不足する

    ★初年度の額は、均等の半分以下になる。

どちらも国土交通省のガイドラインが挙げている例です。築後30年に必要な修繕工事費を戸あたり522万円としたときの数字で、集める総額は同じです。

同じ522万円を集めるのに、初年度の額は2倍以上違います。

販売資料に載るのは、この初年度の額です。どちらの方式かは、販売資料には書かれていないことがあります。 長期修繕計画を見るしかありません。

目安は、専有面積あたりの単価で決まる

国土交通省のガイドライン[1]は、長期修繕計画の事例を集めて、専有面積1㎡あたりの月額の目安を示しています。

計画期間全体での修繕積立金の平均額の目安(機械式駐車場を除く)

地上20階未満

  • 延床5,000㎡未満 … 平均335円(235〜430円)
  • 5,000〜10,000㎡ … 平均252円(170〜320円)
  • 10,000〜20,000㎡ … 平均271円(200〜330円)
  • 20,000㎡以上 … 平均325円ではなく255円(190〜325円)

括弧内は、事例の3分の2が包含される幅。

地上20階以上

  • 階数を問わず 平均338円(240〜410円)
  • 外壁の修繕に特殊な足場が要る
  • 共用部分の占める割合が高い

超高層は、修繕工事費が増大する傾向にあるとされる。

平成23年4月策定・令和6年6月改定。事例のばらつきが大きいため、平均値と「3分の2が包含される幅」の両方が示されています。

このガイドラインは5年程度ごとに見直されます。 最新版は国土交通省のマンション管理のページ[2]から辿れます。ここに書いた数字も、改定されれば変わります。

自分の物件でも計算できます。

自分の物件の平均額(ガイドラインの計算式)

平均額 =(計画期間当初の残高 + 期間中に集める総額 + 専用使用料等からの繰入額)÷ 総専有床面積 ÷ 計画期間の月数

3つの額
いずれも長期修繕計画に書かれている
総専有床面積
戸あたりの専有面積 × 戸数でも出せる
計画期間
30年で組まれることが多い。5年程度ごとに見直す

ガイドラインのモデルケース(10階建・延床7,000㎡・総専有4,900㎡・30年)では 424,600,000 ÷ 4,900 ÷ 360 = 約241円/㎡・月。目安の252円をやや下回ります。

この式に入れる数字は、すべて長期修繕計画に載っています。 見せてもらえば、その場で出せます。

令和6年に、増やし方の目安が入った

段階増額積立方式そのものは禁じられていません。どこまで上げてよいかの考え方が、令和6年6月の改定で入りました。

段階増額積立方式における適切な引上げの考え方

0.6 × 均等額 ≦ 初期額 かつ 1.1 × 均等額 ≧ 最終額

均等額
均等積立方式とした場合の月あたりの金額(基準額)
初期額
計画期間中の月あたりの最低額
最終額
計画期間中の月あたりの最高額

早期に引き上げを終えて、均等積立方式へ寄せることを目的としたものです。

前の節の例を、この式に当てはめてみます。均等額は月14,500円でした。

ガイドラインが挙げた段階増額の例を、同じガイドラインの考え方に当てる

初期額 6,000円 ÷ 均等額 14,500円

0.41

0.6倍以上という考え方を下回る

最終額 21,000円 ÷ 均等額 14,500円

1.45

1.1倍以内という考え方を上回る

この図は、積み立て方の違いを説明するためのものであって、望ましい増え方を示したものではありません。 同じガイドラインが、いまはこの範囲に収めることを求めています。

買う前に確かめられます。 長期修繕計画の最低額と最高額を、均等額で割るだけです。

足りなくなると、何が起きるか

国土交通省は、段階増額積立方式について「増額しようとする際に区分所有者間の合意形成ができず修繕積立金が不足する事例も生じている」と書いています。

積立金が足りないとき、管理組合が選べる道

工事の時期に、お金が足りているか

  • 足りている

    計画どおりに工事ができる

    • 大規模修繕は12〜15年程度の周期で来る
    • 2回目、3回目は給排水管やエレベーターが加わる
    • 先送りしないので、劣化が進まない

    均等積立方式が望ましいとされる理由がここにある。

  • 足りていない

    一時金・借入・先送りのいずれか

    • 一時金は、区分所有者全員に現金を求める
    • 借入は、管理組合が返済していく
    • 先送りすると、劣化が進んで次がさらに高くなる

    ★どれも、決めるには総会の決議が要る。

増額そのものにも決議が要ります。合意が取れなければ、額は上がらないまま工事の時期が来ます。

「積立金が上がる」という説明は、上がることが決まっているという意味ではありません。 上げる必要があるが、上げられるとは限らない、という意味です。

投資として持つ場合、この上げ幅は手出しに直接効きます。手出しシミュレータの管理費・修繕積立金の欄に、いまの額ではなく将来の額を入れて確かめてください。

20年を超えたマンションには、税の減額がある

積立金を引き上げて大規模修繕を行った場合、固定資産税が減額される仕組みがあります。地方税法[4]附則15条の9の3です。

マンション長寿命化促進税制(地方税法附則15条の9の3)
  1. 前提

    新築された日から20年以上を経過したマンション

    管理計画認定マンション、または助言・指導を受けた管理者等に係るマンション

  2. 令和5年4月1日〜令和9年3月31日

    外壁の修繕または模様替を含む大規模な工事を行う

    総務省令で定めるもの。工事が行われた棟に限る

  3. 工事完了から3か月以内

    申告する

    ★期限を過ぎると、原則として適用されない

  4. 工事完了の翌年1月1日を賦課期日とする年度

    建物部分の固定資産税額を減額

    6分の1以上2分の1以下の範囲で市町村の条例が定める(参酌基準は3分の1)

★減額されるのは1年度分だけです。毎年ではありません。同じマンションが2回受けることもできません。

要件の一つが修繕積立金の引き上げです。令和3年9月1日以降に、計画期間全体の平均額を、目安の「3分の2が包含される幅」の下限を下回る額から上回る額へ引き上げたことが求められます。

つまり、積立金が低すぎる状態から抜け出したマンションが対象です。 低いままのマンションには、この減額はありません。

買う前に確かめる順序

長期修繕計画を見せてもらって確かめる

1つ目から4つ目までは、長期修繕計画だけで分かります。5つ目は管理組合へ確かめます。

滞納の引き継ぎは、建物の区分所有等に関する法律[3]8条にもとづきます。管理組合は、滞納者の特定承継人に対しても請求できます。売主が払っていない分を、買主が払うことになります。

仕組みは区分所有にまとめました。

よくある質問

販売資料の修繕積立金は、そのまま続きますか?
続くとは限りません。積み立て方には均等積立方式と段階増額積立方式があり、後者は当初の額を抑えて段階的に引き上げる前提で組まれています。国土交通省のガイドラインは、築後30年に必要な修繕工事費を戸あたり522万円としたとき、均等なら月14,500円、段階増額なら購入時に修繕積立基金36万円を払ったうえで初年度は月6,000円、5年ごとに月3,000円ずつ上げて26〜30年目に月21,000円という例を挙げています。★同じ522万円を集めるのに、初年度の額は2倍以上違います。どちらの方式かは、販売資料ではなく長期修繕計画に書かれています。
自分の物件の積立金が妥当かどうか、確かめられますか?
確かめられます。国土交通省のガイドラインが、専有面積1㎡あたりの月額の目安を、建物の階数と建築延床面積の区分ごとに示しています。20階未満で建築延床面積5,000㎡以上1万㎡未満なら、平均252円/㎡・月、事例の3分の2が170円〜320円に入ります。専有70㎡なら月17,640円が平均にあたります。★機械式駐車場があれば、その分を加算します。長期修繕計画から自分の物件の平均額を出して、この目安と並べれば位置が分かります。
積立金が足りなくなると、どうなりますか?
一時金の徴収、金融機関からの借入、工事の先送りのいずれかになります。国土交通省は、段階増額積立方式について「増額しようとする際に区分所有者間の合意形成ができず修繕積立金が不足する事例も生じている」と書き、★「将来にわたって安定的な修繕積立金の積立てを確保する観点からは、均等積立方式が望ましい」としています。工事を先送りすると劣化が進み、次の工事費がさらに大きくなります。
中古で買うとき、何を見ればよいですか?
長期修繕計画、直近の総会の議事録、修繕積立金の残高、そして滞納の有無です。★滞納のある部屋を買うと、その滞納分を引き継ぎます。建物の区分所有等に関する法律8条が、管理組合は滞納者の特定承継人に対しても請求できるとしているためです。売主が払っていない分を、買主が払うことになります。重要事項説明で説明されますが、金額と、いつからの滞納かを自分で確かめてください。
修繕積立金が上がると、税が安くなることがあると聞きました
マンション長寿命化促進税制のことです。地方税法附則15条の9の3が、新築から20年以上経過したマンションで、令和5年4月1日から令和9年3月31日までの間に外壁の修繕を含む大規模な工事が行われた場合、その建物部分の固定資産税額を6分の1以上2分の1以下(参酌基準は3分の1)減額すると定めています。★ただし減額されるのは工事完了の翌年度分の1年度だけで、申告は工事完了から3か月以内です。管理計画の認定など、管理組合の側で満たす要件もあります。
管理費とは何が違いますか?
使う先が違います。管理費は日常の清掃、点検、管理員の人件費など、毎年出ていく費用に充てます。修繕積立金は、外壁の塗り替えや屋上防水、給排水管の更新といった、長い周期でまとめて出る工事に備えて貯めるものです。★合算した額だけを見ていると、貯まっているのか出ていっているのかが分かりません。課税明細や管理費等の内訳で、必ず分けて読んでください。

出典 番号は本文中の [n] に対応します

  1. マンションの修繕積立金に関するガイドライン

    国土交通省 平成23年4月策定・令和6年6月7日改訂

    確認日 2026-08-18

  2. 住宅:マンション管理

    国土交通省

    確認日 2026-08-18

  3. 建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 昭和37年

    確認日 2026-08-19

  4. 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 昭和25年

    確認日 2026-09-02

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