積算価格と収益価格 せきさんかかくとしゅうえきかかく
積算価格は原価法、収益価格は収益還元法で出す試算価格。不動産鑑定評価基準が定義している。金融機関が融資審査で言う「積算」は、同じ語でも中身が違う。
この記事の要点
- 積算価格・収益価格・比準価格は、不動産鑑定評価基準が定義している語である
- 積算価格は「再調達原価 − 減価修正」。収益価格は「純収益 ÷ 還元利回り」
- 金融機関が融資審査で言う「積算」は、鑑定評価基準の積算価格とは別物である
- 基準自身が「価格の上昇が著しいときは、収益価格を験証手段として使え」と書いている
- 銀行の再調達単価は公表されていない。外から検算できない数字である
目次(6項目)
不動産の値段の出し方には、まったく別の考え方がいくつかあります。そのうち2つが、これです。
- 積算価格(せきさんかかく)… いま同じものを作ったらいくらかから出す値段
- 収益価格(しゅうえきかかく)… その物件がいくら稼ぐかから出す値段
どちらも不動産鑑定評価基準という国の基準が定めた言葉です。★そして「積算」という語は、銀行の融資審査でも使われますが、中身が違います。
3つの価格は、手法の名前から来ている
「積算価格」「収益価格」「比準価格」は、業界の言い回しではありません。不動産鑑定評価基準[1]が定義している語です。
原価法 → 積算価格
- 価格時点における再調達原価を求める
- 減価修正を行って試算価格を出す
- 建物、または建物とその敷地に有効
「いま同じものを作ったらいくらか」から出す。
収益還元法 → 収益価格
- 将来生み出される純収益の現在価値の総和
- 賃貸用不動産の価格を求める場合に特に有効
- 直接還元法とDCF法がある
「いくら稼ぐか」から出す。
3つ目は取引事例比較法で、こちらの試算価格を「比準価格」といいます。実際の鑑定評価では、3つを出したうえで調整して評価額を決めます。
★1つだけを見て高い安いを言うのは、基準の使い方ではありません。
積算価格 — いま同じものを作ったらいくらか
積算価格 = 再調達原価 − 減価修正額
- 再調達原価
- 対象不動産を価格時点において再調達すると想定した場合に必要な適正な原価の総額
- 求め方
- 標準的な建設費 + 発注者が直接負担すべき通常の付帯費用
- 付帯費用
- 建物引渡しまでの資金調達費用や、標準的な開発リスク相当額が含まれる場合がある
建設資材や工法の変遷で再調達原価を求めることが難しい場合は、同等の有用性を持つものに置き換えた「置換原価」を再調達原価とみなします。
減価修正で引く額は、3つの要因から求めます。
- 物理的要因(時の経過、使用による摩耗、損傷)1 33.3%
- 機能的要因(設計の陳腐化、設備の不足、機能的な欠陥)1 33.3%
- 経済的要因(周辺環境の変化、市場性の減退)1 33.3%
★経済的要因があるので、建物が傷んでいなくても減価することがあります。ここが減価償却と大きく違うところです。
収益価格 — いくら稼ぐか
収益価格 = 一期間の純収益 ÷ 還元利回り
- 純収益
- 総収益 − 総費用。★家賃収入そのものではない
- 総費用
- 維持管理費、公租公課、損害保険料、空室損失相当額など
- 還元利回り
- 将来の収益に影響する要因の変動予測と、その不確実性を含む率
複数期間の純収益と復帰価格を現在価値に割り引いて合計する方法(DCF法)もあります。基準は両方を挙げています。
★純収益は、家賃収入ではありません。 表面利回りと実質利回りの差と同じ構造です。詳しくは実質利回りにまとめました。
管理費と修繕積立金は総費用に入ります。これらは将来上がりうるので、いまの額で計算した収益価格は将来の姿ではありません。→ 修繕積立金
★基準自身が「価格が上がるときこそ収益価格で確かめよ」と書いている
収益還元法の意義の中に、こう書かれています。
★「価格が上がっているから買う」の反対を、基準が書いています。
上がっている局面ほど、その価格が収益で説明できるかを確かめよ、という趣旨です。同じことは実質利回り計算機でも確かめられます。目標利回りから逆算した価格と、提示された価格を並べてください。
銀行の「積算」は、同じ語で中身が違う
投資用不動産の営業でよく聞くのが「積算が出る物件です」という言い方です。これは鑑定評価基準の積算価格ではありません。
目的が違うので、出し方が違うこと自体は問題ではありません。問題は、同じ語で呼ばれることです。
★このサイトは、銀行の再調達単価の水準を書きません。 出典・発行者・確認日の3つが揃う資料が無いためです。
「積算が出る」と言われたら、誰の基準でいくらなのかを聞いてください。 融資が付くかどうかの話であって、その価格で売れるという話ではありません。
3つを並べて初めて意味を持つ
鑑定評価では、3つの試算価格を出したうえで調整し、評価額を決めます。1つだけを取り出すと、その手法の弱いところがそのまま出ます。
成約価格の傾向はレインズの市況レポート[3]で分かります。 土地と建物の按分は、国税庁 No.4124[2]が示す考え方と同じ問題です。
1つ目と2つ目が食い違うときは、その差が何から来ているのかを説明できるかどうかで判断します。
★差があること自体は、おかしなことではありません。 鑑定評価基準も、3つの試算価格が一致する前提を置いていません。説明できない差が残るときに、止まる理由になります。
よくある質問
積算価格と収益価格は、どちらが正しいのですか?
銀行の「積算が出る物件」は、この積算価格のことですか?
収益価格はどう計算しますか?
還元利回りは、どこで調べればよいですか?
価格が上がっているときは、どう見ればよいですか?
減価修正は、減価償却と同じですか?
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