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積算価格と収益価格 せきさんかかくとしゅうえきかかく

積算価格は原価法、収益価格は収益還元法で出す試算価格。不動産鑑定評価基準が定義している。金融機関が融資審査で言う「積算」は、同じ語でも中身が違う。

この記事の要点

  1. 積算価格・収益価格・比準価格は、不動産鑑定評価基準が定義している語である
  2. 積算価格は「再調達原価 − 減価修正」。収益価格は「純収益 ÷ 還元利回り」
  3. 金融機関が融資審査で言う「積算」は、鑑定評価基準の積算価格とは別物である
  4. 基準自身が「価格の上昇が著しいときは、収益価格を験証手段として使え」と書いている
  5. 銀行の再調達単価は公表されていない。外から検算できない数字である
目次(6項目)

不動産の値段の出し方には、まったく別の考え方がいくつかあります。そのうち2つが、これです。

  • 積算価格(せきさんかかく)… いま同じものを作ったらいくらかから出す値段
  • 収益価格(しゅうえきかかく)… その物件がいくら稼ぐかから出す値段

どちらも不動産鑑定評価基準という国の基準が定めた言葉です。★そして「積算」という語は、銀行の融資審査でも使われますが、中身が違います。

3つの価格は、手法の名前から来ている

積算価格」「収益価格」「比準価格」は、業界の言い回しではありません。不動産鑑定評価基準[1]が定義している語です。

価格を求める3つの手法と、その試算価格

原価法 → 積算価格

  • 価格時点における再調達原価を求める
  • 減価修正を行って試算価格を出す
  • 建物、または建物とその敷地に有効

「いま同じものを作ったらいくらか」から出す。

収益還元法 → 収益価格

  • 将来生み出される純収益の現在価値の総和
  • 賃貸用不動産の価格を求める場合に特に有効
  • 直接還元法とDCF法がある

「いくら稼ぐか」から出す。

3つ目は取引事例比較法で、こちらの試算価格を「比準価格」といいます。実際の鑑定評価では、3つを出したうえで調整して評価額を決めます。

1つだけを見て高い安いを言うのは、基準の使い方ではありません。

積算価格 — いま同じものを作ったらいくらか

原価法(不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節Ⅱ)

積算価格 = 再調達原価 − 減価修正額

再調達原価
対象不動産を価格時点において再調達すると想定した場合に必要な適正な原価の総額
求め方
標準的な建設費 + 発注者が直接負担すべき通常の付帯費用
付帯費用
建物引渡しまでの資金調達費用や、標準的な開発リスク相当額が含まれる場合がある

建設資材や工法の変遷で再調達原価を求めることが難しい場合は、同等の有用性を持つものに置き換えた「置換原価」を再調達原価とみなします。

減価修正で引く額は、3つの要因から求めます。

減価の要因は3つに分かれる
  • 物理的要因(時の経過、使用による摩耗、損傷)1 
  • 機能的要因(設計の陳腐化、設備の不足、機能的な欠陥)1 
  • 経済的要因(周辺環境の変化、市場性の減退)1 

★経済的要因があるので、建物が傷んでいなくても減価することがあります。ここが減価償却と大きく違うところです。

収益価格 — いくら稼ぐか

直接還元法(同 総論第7章第1節Ⅳ)

収益価格 = 一期間の純収益 ÷ 還元利回り

純収益
総収益 − 総費用。★家賃収入そのものではない
総費用
維持管理費、公租公課、損害保険料、空室損失相当額など
還元利回り
将来の収益に影響する要因の変動予測と、その不確実性を含む率

複数期間の純収益と復帰価格を現在価値に割り引いて合計する方法(DCF法)もあります。基準は両方を挙げています。

純収益は、家賃収入ではありません。 表面利回り実質利回りの差と同じ構造です。詳しくは実質利回りにまとめました。

管理費と修繕積立金は総費用に入ります。これらは将来上がりうるので、いまの額で計算した収益価格は将来の姿ではありません。→ 修繕積立金

★基準自身が「価格が上がるときこそ収益価格で確かめよ」と書いている

収益還元法の意義の中に、こう書かれています。

「価格が上がっているから買う」の反対を、基準が書いています。

上がっている局面ほど、その価格が収益で説明できるかを確かめよ、という趣旨です。同じことは実質利回り計算機でも確かめられます。目標利回りから逆算した価格と、提示された価格を並べてください。

銀行の「積算」は、同じ語で中身が違う

投資用不動産の営業でよく聞くのが「積算が出る物件です」という言い方です。これは鑑定評価基準の積算価格ではありません。

同じ「積算」でも、出し方が違う

誰が、何のために出した数字か

  • 不動産鑑定士が、鑑定評価のために

    鑑定評価基準の積算価格

    • 再調達原価を求め、3つの要因で減価修正する
    • 比準価格・収益価格と並べて調整する
    • 手順が公表されている

    鑑定評価書に、根拠が書かれる。

  • 金融機関が、融資審査のために

    内規による簡便な「積算」

    • 土地は路線価などで、建物は内規の再調達単価で出す
    • 単価 × 残存年数 ÷ 耐用年数、という形が一般的
    • ★その単価は公表されていない

    外から同じ数字を出すことはできない。

目的が違うので、出し方が違うこと自体は問題ではありません。問題は、同じ語で呼ばれることです。

このサイトは、銀行の再調達単価の水準を書きません。 出典・発行者・確認日の3つが揃う資料が無いためです。

「積算が出る」と言われたら、誰の基準でいくらなのかを聞いてください。 融資が付くかどうかの話であって、その価格で売れるという話ではありません。

3つを並べて初めて意味を持つ

鑑定評価では、3つの試算価格を出したうえで調整し、評価額を決めます。1つだけを取り出すと、その手法の弱いところがそのまま出ます。

成約価格の傾向はレインズの市況レポート[3]で分かります。 土地と建物の按分は、国税庁 No.4124[2]が示す考え方と同じ問題です。

提示された価格を、自分で確かめる順序

1つ目と2つ目が食い違うときは、その差が何から来ているのかを説明できるかどうかで判断します。

差があること自体は、おかしなことではありません。 鑑定評価基準も、3つの試算価格が一致する前提を置いていません。説明できない差が残るときに、止まる理由になります。

よくある質問

積算価格と収益価格は、どちらが正しいのですか?
どちらも「試算価格」で、それ自体が答えではありません。不動産鑑定評価基準は、価格を求める手法を原価法・取引事例比較法・収益還元法の3つに大別し、それぞれの手法で出た価格を積算価格・比準価格・収益価格と呼び分けています。鑑定評価では、この3つを出したうえで調整して評価額を決めます。★1つだけを見て高い安いを言うのは、基準の使い方ではありません。
銀行の「積算が出る物件」は、この積算価格のことですか?
別物です。不動産鑑定評価基準の積算価格は、価格時点における再調達原価を求め、物理的・機能的・経済的な減価を修正して出します。一方、金融機関が融資審査で使う「積算」は、土地を路線価などで、建物を内規の再調達単価×残存年数÷耐用年数で簡便に出したものが一般的です。★その単価は公表されていません。同じ語ですが、出し方も目的も違います。
収益価格はどう計算しますか?
一期間の純収益を還元利回りで割ります(直接還元法)。不動産鑑定評価基準は P = a ÷ R と書いています。Pが収益価格、aが一期間の純収益、Rが還元利回りです。複数期間の純収益と復帰価格を現在価値に割り引いて合計するDCF法もあります。★純収益は家賃収入ではありません。総収益から維持管理費・公租公課・損害保険料・空室損失相当額などの総費用を引いた額です。
還元利回りは、どこで調べればよいですか?
公表された一次資料としては手に入りにくい数字です。不動産鑑定評価基準は還元利回りを求める方法を4つ例示していますが(類似の取引事例との比較、借入金と自己資金の加重平均、土地と建物の加重平均、割引率との関係)、いずれも事例や個別の条件が要ります。★このサイトが㎡単価や利回りの水準を書けないのは、出典・発行者・確認日の3つが揃う資料が無いためです。書けないことを書けると言わないのが、この分野では重要です。
価格が上がっているときは、どう見ればよいですか?
不動産鑑定評価基準自身が答えを書いています。「市場における不動産の取引価格の上昇が著しいときは、取引価格と収益価格との乖離が増大するものであるので、先走りがちな取引価格に対する有力な験証手段として、この手法が活用されるべきである」。★つまり価格が上がっている局面ほど、収益価格で確かめよという趣旨です。実質利回りの計算機に自分の条件を入れると、同じことが確かめられます。
減価修正は、減価償却と同じですか?
違います。減価償却は税の計算のために、法定耐用年数にわたって取得費を配分する手続きです。減価修正は、価格を出すために対象不動産の減価額を求めるもので、不動産鑑定評価基準は減価の要因を物理的要因・機能的要因・経済的要因の3つに分けています。★経済的要因には、周辺の環境の変化や市場性の減退が入ります。建物が傷んでいなくても減価することがある、という点が減価償却との大きな違いです。

出典 番号は本文中の [n] に対応します

  1. 不動産鑑定評価基準

    国土交通省 平成14年7月3日全部改正・平成26年5月1日一部改正

    確認日 2026-09-02

  2. No.4124 小規模宅地等の特例

    国税庁

    確認日 2026-09-02

  3. 首都圏不動産流通市場の動向

    公益財団法人 東日本不動産流通機構(東日本レインズ) 2025年

    確認日 2026-08-18

この分野の全体像

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