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正当事由と立退料 せいとうじゆうとたちのきりょう

貸主から建物の賃貸借を終わらせるには正当事由が要る。立退料はそれを補う一要素であって、それ単独で明渡しを成立させるものではない。

この記事の要点

  1. 貸主から終わらせるには正当事由が要る。期間が来ただけでは終わらない
  2. 借地借家法28条が挙げる考慮要素は4つ。双方の事情を比べる形になっている
  3. 立退料は正当事由を補う一要素。それ単独では明渡しを成立させない
  4. 期間の定めがある契約と無い契約で、手順も期間も違う
  5. 期間を1年未満とすると、期間の定めが無い契約とみなされる(29条1項)
目次(8項目)

正当事由(せいとうじゆう)とは、貸主の側から建物の賃貸借を終わらせるために必要な理由のことです。借地借家法が求めています。

立退料は、出ていってもらうために貸主が払うお金のことです。法律に「立退料」という言葉はなく、条文では「財産上の給付」と書かれています。

この2つの関係を取り違えると、話が噛み合いません。 立退料だけで明渡しが決まるわけではないためです。

期間が来ても、終わらない

建物の賃貸借は、期間が満了しただけでは終わりません。

期間の定めがある契約が、更新されるまで
  1. 期間満了の1年前から6か月前までの間通知期間

    貸主が「更新しない旨の通知」または「条件を変更しなければ更新しない旨の通知」をする

  2. 通知に正当事由があるか

    28条。無ければ、通知そのものが効かない

  3. 通知をしなかった場合

    従前と同一の条件で更新したものとみなされる(26条1項)

  4. 通知をしていても

    期間満了後に借主が使用を続け、貸主が遅滞なく異議を述べなければ、同じ扱いになる(26条2項)

★26条1項のただし書きで、更新後の「期間は、定めがないものとする」とされています。更新はされますが、期間の定めは消えます。

条文は借地借家法[1]26条と28条にあります。

通知の期間を守っても、正当事由が無ければ更新は止まりません。

正当事由は、双方の事情を比べる

考慮する事情は4つです。

28条が挙げる考慮要素

1つ目が「双方について」と書かれているところが要点です。貸主に事情があっても、借主の事情のほうが重ければ足りません。

貸主の事情と借主の事情を並べて比べる、という形になっています。

立退料は、正当事由を補う一要素である

28条は、財産上の給付の申出を「考慮して」正当事由を判断するとしています。

立退料を積めば終わらせられるか

貸主の側に、建物の使用を必要とする事情があるか

  • まったく無い

    いくら積んでも正当事由にはならない

    • 28条は4つの事情を「考慮して」判断するとしている
    • 立退料はそのうちの1つにすぎない
    • 単独で明渡しを成立させる仕組みではない

    ★「お金を払えば出ていってもらえる」という制度ではない。

  • ある程度ある

    金額が結論を分けることがある

    • 貸主の事情と借主の事情が拮抗している場面
    • 差を埋めるものとして働く
    • 引越し費用、賃料の差額、営業の補償などが中身になる

    相場が決まっている性質の金銭ではない。

★立退料の額に、法律上の基準はありません。個別の事情で決まります。このサイトが金額の水準を書かないのは、出典・発行者・確認日の3つが揃う資料が無いためです。

期間の定めが無い契約は、手順が違う

期間の定めがある契約と無い契約で、終わらせ方が変わります。

貸主から終わらせるときの手順

期間の定めがある

  • 満了の1年前から6か月前までに通知(26条1項)
  • 通知に正当事由が要る(28条)
  • 通知が無ければ、同じ条件で更新とみなされる
  • ★更新後は、期間の定めが無いものになる

通知期間を過ぎたら、その期間は打てない。

期間の定めが無い

  • 解約の申入れをする(27条1項)
  • 申入れにも正当事由が要る(28条)
  • 申入れの日から6か月の経過で終了
  • 借主が使用を続け、貸主が異議を述べなければ継続(27条2項)

6か月は待つ期間であって、正当事由の代わりではない。

★続けるかどうかを実質的に決められるのは借主の側、という設計になっています。

借主の側からの解約は、契約の定めにしたがって申し入れれば足ります(民法[2]617条・618条)。

6か月の経過は、正当事由を不要にするものではありません。 両方が要ります。

期間を短くすると、かえって終わらせにくくなる

半年で区切ったつもりの契約は、期間の定めが無い契約になります。すると27条の解約申入れと6か月の経過、そして28条の正当事由が必要になります。

短くしたつもりが、終わらせにくくなります。

期間を区切る効果を持たせられるのは、定期借家として38条の要件を満たした場合だけです。公正証書等の書面(または電磁的記録)で契約し、更新がない旨をあらかじめ書面で説明する必要があります。

特約で外すことはできない

この「節」に含まれるのは26条から29条までです。更新、解約、正当事由、期間の扱いが、すべて入ります。

契約書に「更新しない」「1年で明け渡す」と書いてあっても、普通借家であれば効きません。

同じ構造は更新料にもあります。法律上の支払義務が無いものは契約で作れますが、法律が借主に与えているものを契約で削ることはできません。

貸す側から見た順序

明渡しを求める前に確かめる

1つ目から4つ目までは、契約書と現況で確かめられます。5つ目は、次の契約に向けた話です。

借りる側から見ると

通知が来ても、それだけで出る必要はありません。 正当事由の有無が問題になります。

ただし、争うことと住み続けることは同じではありません。 争っている間の賃料は払い続ける必要があり、決着まで時間もかかります。

条件の交渉として扱うなら、28条が挙げる4つの要素のうち、自分の側の「使用を必要とする事情」を具体的に示せるかが要点になります。通勤、通学、通院、営業の継続。説明できる形にしておくことが、金額の交渉にも効きます。

退去することにした場合は、原状回復の範囲を先に確かめてください。明渡しの条件と、原状回復の負担は別の話です。

そもそも賃料を払っていない場合は、この仕組みが働きません。 無償なら使用貸借で、借地借家法の対象外です。→ 使用貸借(無償で貸す)

よくある質問

契約期間が終われば、出ていってもらえますか?
出ていってもらえません。借地借家法26条1項は、期間満了の1年前から6か月前までの間に更新しない旨の通知をしなければ、従前と同じ条件で更新したものとみなすと定めています。そして28条が、その通知には正当事由が必要だとしています。★通知の期間を守っても、正当事由が無ければ更新は止まりません。さらに26条2項は、通知をしていても期間満了後に借主が使用を続け、貸主が遅滞なく異議を述べなければ同じ扱いになるとしています。
正当事由は、何で決まりますか?
借地借家法28条が4つの考慮要素を挙げています。貸主と借主の双方が建物の使用を必要とする事情、賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況と現況、そして貸主が明渡しの条件として申し出た財産上の給付です。★要点は、双方の事情を比べる形になっていることです。貸主に事情があっても、借主の事情のほうが重ければ足りません。
立退料を払えば出ていってもらえますか?
それだけでは足りません。28条は財産上の給付の申出を「考慮して」正当事由を判断するとしており、立退料は正当事由を補う一要素という位置づけです。★貸主の側に使用の必要がまったく無ければ、いくら積んでも正当事由にはならないと解されています。逆に、貸主の事情がある程度あって借主の事情も重い、という場面では金額が結論を分けることがあります。相場が決まっている性質の金銭ではありません。
期間の定めが無い契約は、どうやって終わらせますか?
解約の申入れをします。借地借家法27条1項は、貸主が解約の申入れをした場合、申入れの日から6か月の経過によって終了すると定めています。★この申入れにも28条の正当事由が要ります。借主の側からの解約は、契約の定めにしたがって申し入れれば足ります(民法617条・618条)。続けるかどうかを実質的に決められるのは借主の側、という設計になっています。
契約期間を半年にすれば、半年で終わりますか?
終わりません。借地借家法29条1項は、期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなすと定めています。★期間の定めが無い扱いになるので、貸主から終わらせるには解約の申入れと6か月の経過、そして正当事由が必要になります。短くしたつもりが、かえって終わらせにくくなります。期間を区切りたいなら定期借家です。
借主に不利な特約を書けば、この仕組みを外せますか?
外せません。借地借家法30条が「この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする」と定めています。★契約書に「更新しない」「1年で明け渡す」と書いてあっても、普通借家であれば効きません。この節に含まれるのは26条から29条までで、更新、解約、正当事由、期間の扱いがすべて入ります。期間を区切る効果を持たせられるのは、38条の定期借家として要件を満たした場合だけです。

出典 番号は本文中の [n] に対応します

  1. 借地借家法(平成三年法律第九十号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 平成3年

    確認日 2026-09-02

  2. 民法(明治二十九年法律第八十九号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 明治29年

    確認日 2026-09-02

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