使用貸借(無償で貸す) しようたいしゃくむしょうでかす
無償で貸すと使用貸借になり、借地借家法の対象から外れる。借主の死亡で終了し、期間も目的も定めなければ貸主はいつでも解除できる。
この記事の要点
- 借地借家法1条の対象は地上権・賃借権・建物の賃貸借。使用貸借は入らない
- 借主の死亡によって終了する(597条3項)。賃借権は相続されるのと逆
- 期間も目的も定めなければ、貸主はいつでも解除できる(598条2項)
- 通常の必要費は借主が負担する。賃貸借は貸主に修繕義務がある
- 建物の引渡しによる対抗力(借地借家法31条)が無い
目次(6項目)
使用貸借(しようたいしゃく)とは、無償で物を貸し借りすることです。賃料を取れば賃貸借、取らなければ使用貸借になります。
親の土地に子が家を建てる、相続した実家に親族が住んでいる。★こうした場面の多くが、これにあたります。
そして無償にした瞬間、借りている側に届く保護が大きく変わります。
無償にした瞬間、別の法律の話になる
★使用貸借は、ここに入っていません。 地上権でも賃借権でも賃貸借でもないためです。
賃貸借(有償)
- 貸主から終わらせるには正当事由が要る(借地借家法28条)
- 通知しなければ法定更新される(26条)
- 建物の引渡しで対抗力が生じる(31条)
- 賃借権は相続される
- 貸主に修繕義務がある(民法606条1項)
借りる側が構造として守られている。
使用貸借(無償)
- 正当事由の仕組みが無い
- 法定更新の仕組みが無い
- 引渡しによる対抗力が無い
- ★借主の死亡で終了する(民法597条3項)
- 借主が通常の必要費を負担する(595条1項)
民法の使用貸借の規定だけが適用される。
★同じ「借りて住んでいる」でも、対価があるかどうかで届く保護がまったく違います。
★借主の死亡で終了する
★賃借権は相続されます。 そこが最も大きく違うところです。
有償だったか、無償だったか
賃貸借だった
賃借権が相続される
- 相続人が借主の地位を引き継ぐ
- 貸主から終わらせるには正当事由が要る
- 建物を借りていたなら、引渡しによる対抗力も残る
家族が住み続けられる見込みが立つ。
使用貸借だった
その時点で終了する(597条3項)
- ★相続されない
- 家族が住み続けるには、貸主と新たに合意するほかない
- 貸主が代替わりしていると、話が通らないことがある
建物を建てていた場合、土地の使用の根拠が消える。
★親の土地を無償で借りて家を建てた子が亡くなった場合が、この形にあたります。建物は相続されますが、土地を使う根拠は終わっています。
建物は相続されるのに、土地を使う根拠だけが消える。 これが、使用貸借で最も重い場面です。
何も決めずに貸すのが、いちばん弱い
- 期間を定めた → その期間の満了で終了(597条1項)1 33.3%
- 期間を定めず目的を定めた → 目的に従い使用収益を終えたときに終了(597条2項)1 33.3%
- ★期間も目的も定めなかった → 貸主はいつでも解除できる(598条2項)1 33.3%
借主の側は、どの場合でもいつでも解除できます(598条3項)。
★3つ目が、実際にはいちばん多い形です。 親族間で「しばらく使っていい」とだけ言われて住んでいる、という状態がこれにあたります。
費用の負担が、賃貸借と逆になっている
賃貸借
- 606条1項「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」
- ただし賃借人の責めに帰すべき事由によるときは除く
- 賃料を受け取っている以上、維持は貸主の側
対価があることの裏返し。
★「無償だから借主が得」とは限りません。維持の負担は借主に乗ります。
用法と、第三者に使わせること
★2項の違反は、又貸しだけでなく、承諾なく他人を住まわせる場合にも及びえます。
同じ形は配偶者居住権にもあります。1032条3項が所有者の承諾を要求し、4項が違反した場合に消滅させる仕組みを置いています。★無償で使う権利に共通する組み方です。
使う前・貸す前に決めること
★1つ目と4つ目が、後から動かせない部分です。貸し始める前に決めてください。
土地を借りて建物を建てる形で、有償ならば借地権の話になります。存続期間も更新も、法律が守っています。 無償だと、そのどれも及びません。
建物を有償で借りている場合に貸主から終わらせる手順は正当事由と立退料にまとめました。★使用貸借には、この仕組みがありません。