賃料の増額請求と減額請求 ちんりょうのぞうがくせいきゅうとげんがくせいきゅう
賃料が不相当になれば、契約の条件にかかわらず将来に向かって増減を請求できる。協議が調わない間は相当と認める額でよいが、裁判で外れた分には年1割の利息が付く。
この記事の要点
- 「契約の条件にかかわらず」請求できる。ただし将来に向かってのみ
- 増額しない特約は条文が認めている。減額しない特約は条文に書かれていない
- 協議が調わない間は、請求を受けた側が「相当と認める額」で払う・受け取る
- 裁判で外れた分には、年1割の利息が付く
- 訴える前に、まず調停の申立てをしなければならない
目次(5項目)
家賃や地代は、契約したときの額のまま固定されるわけではありません。貸主からも借主からも、変えてほしいと求めることができます。
この権利を、条文では借賃増減請求権(しゃくちんぞうげんせいきゅうけん)といいます。借地借家法32条にあります。
★もめたときにどう振る舞えばよいかまで、条文が決めています。 そこが実務では効きます。
契約書に何と書いてあっても、請求はできる
理由は3つに絞られています。
- 租税その他の負担の増減(固定資産税が上がった、下がった)1 33.3%
- 土地・建物の価格の上昇・低下その他の経済事情の変動1 33.3%
- ★近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったとき1 33.3%
★「収入が減ったから」「ローンが苦しいから」は、ここに入りません。3つ目がいちばん使いやすい入口です。
★増額しない特約は条文にある。減額しない特約は無い
ただし書をもう一度読むと、名指しされているのは片方だけです。
減額請求を封じる特約は、条文の側に根拠がない。
サブリースの事案では、賃料自動増額特約があっても32条の適用は妨げられないと最高裁が判断しています(平成15年10月21日)。事件番号は不動産適正取引推進機構の一覧[4]で確認しました。判決は裁判所の判例検索[3]で、裁判年月日と事件番号から引けます。
★この非対称が、サブリースの保証賃料が下がりうる理由です。 業者が特別なことをしているのではなく、建物の賃貸借に共通する仕組みです。
協議が調わない間は、自分が相当と思う額でよい
ここが実務でいちばん効きます。
請求されたのはどちらか
増額を請求された(借主の側)
裁判が確定するまで、相当と認める額を支払えば足りる
- 提示された額を払う義務は、まだ無い
- 自分が相当と考える額を払っていれば、不払いにならない
- ★確定後、不足があれば年1割の利息を付けて支払う
払わないのと、相当と認める額を払うのは違う。
減額を請求された(貸主の側)
裁判が確定するまで、相当と認める額の支払を請求できる
- これまでどおりの額を請求し続けてよい
- ★確定後、受け取りすぎがあれば年1割の利息を付けて返還する
- 利息は「受領の時から」付く
受け取り続けること自体は、違法ではない。
★どちらも「請求を受けた側が、自分の考える額で暫定的に処理してよい」という同じ形です。外れた分に年1割が付くところまで同じです。
★「払わない」と「相当と認める額を払う」は、まったく違います。 前者は賃料の不払いで、正当事由を持ち出すまでもなく契約解除の理由になりえます。
★訴える前に、まず調停
相手に請求する
内容証明などで、いつ請求したかを残す。★「将来に向かって」の起点になる
協議する
調わない間は、請求を受けた側が相当と認める額で払う・受け取る
調停を申し立てる前置
★訴えの前に必ず通る(民事調停法24条の2第1項)
調停が不成立なら、訴え
裁判が確定すると、差額に年1割の利息が付いて精算される
★2つ目の期間が長引くほど、3つ目・4つ目で動く金額が大きくなります。
借地の地代(借地借家法11条)も同じ扱いです。 24条の2は11条と32条を並べて書いています。
貸す側・借りる側が、それぞれ確かめること
★4つ目は貸主の側の資料ですが、借主も自分が借りている建物の課税台帳を閲覧できます(地方税法382条の2)。
固定資産税の評価額そのものを確かめる手続きは固定資産税の評価に不服があるときにまとめました。★借りている人も、その建物と敷地の台帳を閲覧できます。
更新のときにまとめて話が出ることもありますが、更新料と賃料の増減は別の話です。 更新料は契約で定めた金銭、賃料の増減は32条による請求です。