不動産の税金の全体像 ふどうさんのぜいきん
不動産の税は、買うとき・持っている間・貸している間・売るときの4段階でかかる。保有中に減らした税の一部は売却時に戻るため、通算で見ないと判断を誤る。自分が住む場合だけ、逆向きに動くものが1つある。
この記事の要点
- 税は買うとき・持っている間・貸している間・売るときの4段階でかかる
- 不動産取得税は引渡しの数か月後に届く。諸費用の一覧から落ちやすい
- 保有中の税と売却時の税は連動している。減価償却は繰り延べに近い
- 「節税になる」と言われる仕組みには、土地の借入利子という大きな制限がある
- 課税の基準は売買価格ではなく、固定資産課税台帳の価格
- 住宅ローン控除と3,000万円特別控除は併用できない。ぶつかる期間は前々年から翌年以後3年まで
目次(11項目)
不動産にかかる税は、段階ごとに別のものがかかります。
しかも段階どうしが連動しています。保有中に減らした税の一部は、売却時に戻ってきます。通算で見ないと判断を誤るのは、この連動があるからです。
保有中の税と売却時の税は連動している。片方だけを見ると通算を誤る。
買うとき ― 決済の場で払うものと、後から来るもの
決済の場で払う
- 印紙税(契約書に貼る)
- 登録免許税(司法書士へ預ける)
- 消費税(建物の代金に含まれる)
諸費用の見積りに、必ず入っている。
数か月後に来る
- 不動産取得税
決済の場で払わないため、一覧から落ちやすい。
買うとき ― 消費税と印紙税
見落とされやすい2つを、分けて書いておきます。
課税される
- 課税事業者(不動産会社など)が売る建物
- 仲介手数料
- 司法書士報酬
- 住宅ローンの事務手数料
建物の代金に含まれた形で提示されることが多い。
課税されない
- 土地の代金(消費されるものではないため非課税)
- 個人が売主の場合の建物(事業として行うものでないため)
- 保証料、登録免許税、印紙税
土地は誰が売っても非課税。
これは税額の話にとどまりません。建物と土地の価格の内訳は、減価償却の計算にも、土地等に係る負債利子の計算にも使う数字です。
印紙税は売買契約書と金銭消費貸借契約書に、それぞれ記載金額に応じてかかります。電子契約なら課されません。 紙で交わすか電子で交わすかで、数万円単位の差が出ることがあります。
★貸す側から見ると、もう1つ効く規定があります。 居住用の賃貸建物を1,000万円以上で取得しても、その消費税は仕入税額控除できません(消費税法30条10項)。→ 不動産と消費税
買った後 ― 4段階のどこにも入らないもの
ここまで「買う・持つ・貸す・売る」の順に見てきました。この4つは、いずれも払う話です。
自分が住むために買った場合だけ、逆向きに動くものが1つあります。 住宅ローン控除です。
控除額の式は租税特別措置法[7]41条2項にあります。
控除額 = その年12月31日の残高と借入限度額の小さいほう × 0.7%
- 借入限度額
- 住宅の省エネ性能・新築か中古か・世帯で決まる(41条7項・9項)
- 期間
- 認定住宅等で令和8年から令和12年までに入居したなら13年(41条6項)
- 上限
- ★その年に納めた所得税と、住民税の一部を超えては戻らない
★広告に出る「最大◯◯万円」との差は、条件によっては150万円を超えます。
実額は住宅ローン控除の計算機で出せます。
条件の当てはめ(誰から買うか、床面積、転勤したときの届出、途中で止まる場面)は住宅ローン控除にまとめました。
★これは減税であって、給付ではありません。 納めていない税は戻りません。所得税から引き切れなかった分は翌年度の住民税から引けますが、そちらにも上限があります(地方税法[1]附則5条の4。課税総所得金額等の5%、97,500円まで)。
★買い替えのとき、「売る」の判断が「買う」を消すことがある
住宅ローン控除は、他の特例と併用できません。併用できない期間が、かなり長く取られています。
居住した年の前々年・前年
この間に35条1項の適用を受けていると、住宅ローン控除は使えない
措置法41条21項
居住した年
同上
41条21項
居住した年の翌年から3年以内
他の資産を譲渡して35条1項などを受けると、遡って使えなくなる
41条22項
★合わせて6年ある。前の家を売る年と、新居に住み始める年が近いほど、正面からぶつかります。
どちらか一方しか選べません。 額を比べる必要があります。
- 3,000万円特別控除は、売却益が出ているときに一度だけ効きます。譲渡所得が3,000万円以内なら税額はゼロになります
- 住宅ローン控除は、13年にわたって毎年効きます。ただし年ごとの上限は、納めた所得税と住民税97,500円までです
★売却益が小さいなら、住宅ローン控除のほうが大きくなります。 譲渡所得500万円に長期の税率20.315%を当てると約102万円ですが、住宅ローン控除の13年合計は条件しだいで300万円近くになります。
★なお、35条3項の空き家特例は、41条21項のかっこ書きで除かれています。 相続した空き家を売って空き家特例を使う場合は、住宅ローン控除と併用できます。同じ35条でも、1項と3項で扱いが違います。
持っている間 ― 毎年かかり続けるもの
税額 = 課税標準額 × 税率
- 課税標準額
- 固定資産課税台帳の評価額をもとに、特例などを適用した後の額
- 税率
- 標準税率は1.4%。市町村が条例で定める
評価額は原則として3年ごとに評価替えが行われる。仕組みは総務省の説明にある。
市街化区域では、これに都市計画税が加わります。税率の上限は0.3%で、固定資産税とあわせて1通の納税通知書で届くことが多いため、まとめて「固都税」と呼ばれます。
なお建物の固定資産税は、築年数が経ってもゼロにはなりません。 減価償却が終わって帳簿上の価値が消えても課され続けます。この2つは別の制度です。
貸している間 ― 不動産所得
不動産所得 = 総収入金額 − 必要経費
- 総収入金額
- 家賃、共益費、更新料、礼金など
- 必要経費
- 管理費、修繕費、固定資産税、保険料、減価償却費、借入金の利子など
計算の枠組みは国税庁の案内にある。何が必要経費に入るかを確かめる出発点になる。
枠組みは国税庁の案内[4]にあります。この式の中で最も判断を左右するのが減価償却です。
建物の取得費を、耐用年数にわたって配分する
土地は償却しない。建物だけが対象になる
毎年、必要経費として計上する保有中は有利
現金は出ていかないのに、経費として引ける
不動産所得が赤字になれば、給与などと通算できる
所得税法69条1項による
売却時、償却した分だけ取得費が減る売却時に戻ってくる
そのぶん譲渡所得が増える
保有中に減らした税の一部が、売却時に戻ってくる形になる。
耐用年数の考え方は国税庁の案内[5]に、詳しくは減価償却にまとめました。
「節税になる」の実態
赤字は出ています。手元からも現金が出ています。それでも税は1円も戻りません。
還付額そのものも、課税所得の水準で変わります。同じ▲60万円の通算でも、課税所得300万円で121,260円、400万円で182,520円、950万円で251,948円です。販売資料の還付額は、その資料を作った人の所得を前提にした数字です。
売るとき ― 譲渡所得
譲渡所得 = 収入金額 −(取得費 + 譲渡費用)
- 収入金額
- 売却価格
- 取得費
- 買ったときの価格や費用。ただし建物は減価償却費相当額を差し引く
- 譲渡費用
- 仲介手数料、印紙税、測量費など
枠組みは国税庁の案内にある。給与など他の所得とは分けて課税される(分離課税)。
枠組みは国税庁の案内[6]にあります。
住んでいた家を売るときは、3,000万円控除のほかに軽減税率と買換え特例があります。★併用できる組とできない組があり、買換え特例は非課税ではありません。 → 買換え特例と軽減税率
繰り延べという見方
保有中
- 減価償却で不動産所得を圧縮できる
- 赤字なら給与などと通算できる(制限あり)
- 源泉徴収された税の一部が還付される
現金は出ていかないのに経費になる。
売却時
- 償却した分だけ取得費が小さくなる
- そのぶん譲渡所得が大きくなる
- 譲渡損失は原則として給与と通算できない
保有中に減らした税の一部が戻ってくる。
さらに非対称があります。保有中の不動産所得の赤字は給与と通算できるのに、売却時の譲渡損失は原則として通算できません。 この差が、出口の計算で見落とされやすい点です。
申告のタイミング
買った年
住宅ローン控除を受けるなら、初年度は確定申告が必要
給与所得者でも初年度は自分で申告する
買った数か月後
不動産取得税の納税通知書が届く
軽減の申告が必要な場合がある。都道府県税事務所へ確認する
毎年4〜6月ごろ
固定資産税・都市計画税の納税通知書が届く
課税明細書が同封されている。面積や特例の適用を確認する
貸している間、毎年2〜3月
不動産所得を確定申告する
青色申告の承認を受けるなら、申請には期限がある
売った翌年2〜3月
譲渡所得を確定申告する
買ったときの書類をここで使う
判断の順序
6つ目が、いま何もしていない人にとって最も費用対効果の高い備えです。保管場所を決めておくだけで、将来の税額が変わりえます。