不動産知識大全 業者が言わない数字まで、検算して解説する。
税金 13分で読めます 5,173字

不動産の税金の全体像 ふどうさんのぜいきん

不動産の税は、買うとき・持っている間・貸している間・売るときの4段階でかかる。保有中に減らした税の一部は売却時に戻るため、通算で見ないと判断を誤る。

この記事の要点

  1. 税は買うとき・持っている間・貸している間・売るときの4段階でかかる
  2. 不動産取得税は引渡しの数か月後に届く。諸費用の一覧から落ちやすい
  3. 保有中の税と売却時の税は連動している。減価償却は繰り延べに近い
  4. 「節税になる」と言われる仕組みには、土地の借入利子という大きな制限がある
  5. 課税の基準は売買価格ではなく、固定資産課税台帳の価格
目次(9項目)

不動産にかかる税は、段階ごとに別のものがかかります。

しかも段階どうしが連動しています。保有中に減らした税の一部は、売却時に戻ってきます。通算で見ないと判断を誤るのは、この連動があるからです。

4つの段階
  1. 買うとき一度だけ

    印紙税、登録免許税不動産取得税、消費税(建物のみ)

  2. 持っている間毎年

    固定資産税都市計画税(市街化区域)

  3. 貸している間毎年

    不動産所得への所得税・住民税

  4. 売るとき一度だけ

    譲渡所得への所得税・住民税、印紙税、登録免許税

保有中の税と売却時の税は連動している。片方だけを見ると通算を誤る。

買うとき ― 決済の場で払うものと、後から来るもの

支払いのタイミングが違う

決済の場で払う

  • 印紙税(契約書に貼る)
  • 登録免許税(司法書士へ預ける)
  • 消費税(建物の代金に含まれる)

諸費用の見積りに、必ず入っている。

数か月後に来る

  • 不動産取得税

決済の場で払わないため、一覧から落ちやすい。

買うとき ― 消費税と印紙税

見落とされやすい2つを、分けて書いておきます。

消費税は、建物だけにかかる

課税される

  • 課税事業者(不動産会社など)が売る建物
  • 仲介手数料
  • 司法書士報酬
  • 住宅ローンの事務手数料

建物の代金に含まれた形で提示されることが多い。

課税されない

  • 土地の代金(消費されるものではないため非課税)
  • 個人が売主の場合の建物(事業として行うものでないため)
  • 保証料、登録免許税、印紙税

土地は誰が売っても非課税。

これは税額の話にとどまりません。建物と土地の価格の内訳は、減価償却の計算にも、土地等に係る負債利子の計算にも使う数字です。

印紙税は売買契約書と金銭消費貸借契約書に、それぞれ記載金額に応じてかかります。電子契約なら課されません。 紙で交わすか電子で交わすかで、数万円単位の差が出ることがあります。

持っている間 ― 毎年かかり続けるもの

固定資産税の計算

税額 = 課税標準額 × 税率

課税標準額
固定資産課税台帳の評価額をもとに、特例などを適用した後の額
税率
標準税率は1.4%。市町村が条例で定める

評価額は原則として3年ごとに評価替えが行われる。仕組みは総務省の説明にある。

市街化区域では、これに都市計画税が加わります。税率の上限は0.3%で、固定資産税とあわせて1通の納税通知書で届くことが多いため、まとめて「固都税」と呼ばれます。

なお建物の固定資産税は、築年数が経ってもゼロにはなりません。 減価償却が終わって帳簿上の価値が消えても課され続けます。この2つは別の制度です。

貸している間 ― 不動産所得

不動産所得の計算

不動産所得 = 総収入金額 − 必要経費

総収入金額
家賃、共益費、更新料、礼金など
必要経費
管理費、修繕費、固定資産税、保険料、減価償却費、借入金の利子など

計算の枠組みは国税庁の案内にある。何が必要経費に入るかを確かめる出発点になる。

枠組みは国税庁の案内[4]にあります。この式の中で最も判断を左右するのが減価償却です。

減価償却が、税をどう動かすか
  1. 建物の取得費を、耐用年数にわたって配分する

    土地は償却しない。建物だけが対象になる

  2. 毎年、必要経費として計上する保有中は有利

    現金は出ていかないのに、経費として引ける

  3. 不動産所得が赤字になれば、給与などと通算できる

    所得税法69条1項による

  4. 売却時、償却した分だけ取得費が減る売却時に戻ってくる

    そのぶん譲渡所得が増える

保有中に減らした税の一部が、売却時に戻ってくる形になる。

耐用年数の考え方は国税庁の案内[5]に、詳しくは減価償却にまとめました。

「節税になる」の実態

赤字は出ています。手元からも現金が出ています。それでも税は1円も戻りません。

還付額そのものも、課税所得の水準で変わります。同じ▲60万円の通算でも、課税所得300万円で121,260円、400万円で182,520円、950万円で251,948円です。販売資料の還付額は、その資料を作った人の所得を前提にした数字です。

売るとき ― 譲渡所得

譲渡所得の計算

譲渡所得 = 収入金額 −(取得費 + 譲渡費用)

収入金額
売却価格
取得費
買ったときの価格や費用。ただし建物は減価償却費相当額を差し引く
譲渡費用
仲介手数料、印紙税、測量費など

枠組みは国税庁の案内にある。給与など他の所得とは分けて課税される(分離課税)。

枠組みは国税庁の案内[6]にあります。

繰り延べという見方

保有中と売却時は、逆を向く

保有中

  • 減価償却で不動産所得を圧縮できる
  • 赤字なら給与などと通算できる(制限あり)
  • 源泉徴収された税の一部が還付される

現金は出ていかないのに経費になる。

売却時

  • 償却した分だけ取得費が小さくなる
  • そのぶん譲渡所得が大きくなる
  • 譲渡損失は原則として給与と通算できない

保有中に減らした税の一部が戻ってくる。

さらに非対称があります。保有中の不動産所得の赤字は給与と通算できるのに、売却時の譲渡損失は原則として通算できません。 この差が、出口の計算で見落とされやすい点です。

申告のタイミング

いつ、何をするか
  1. 買った年

    住宅ローン控除を受けるなら、初年度は確定申告が必要

    給与所得者でも初年度は自分で申告する

  2. 買った数か月後

    不動産取得税の納税通知書が届く

    軽減の申告が必要な場合がある。都道府県税事務所へ確認する

  3. 毎年4〜6月ごろ

    固定資産税・都市計画税の納税通知書が届く

    課税明細書が同封されている。面積や特例の適用を確認する

  4. 貸している間、毎年2〜3月

    不動産所得を確定申告する

    青色申告の承認を受けるなら、申請には期限がある

  5. 売った翌年2〜3月

    譲渡所得を確定申告する

    買ったときの書類をここで使う

判断の順序

買う前に、この順で出しておく

6つ目が、いま何もしていない人にとって最も費用対効果の高い備えです。保管場所を決めておくだけで、将来の税額が変わりえます。

実質利回りに税を入れる方法は実質利回りに、毎月の持ち出しの計算は手出しシミュレータにまとめました。

よくある質問

不動産を買うと、どんな税がかかりますか?
買うときには印紙税、登録免許税、不動産取得税、そして課税事業者から建物を買う場合は消費税がかかります。持っている間は毎年、固定資産税と、市街化区域なら都市計画税がかかります。貸していれば不動産所得として所得税と住民税が、売れば譲渡所得として所得税と住民税がかかります。段階ごとに違う税がかかる、という構造になっています。
不動産取得税はいつ来ますか?
引渡しから数か月後です。決済の日には請求されません。都道府県が取得を把握し、価格を確定してから納税通知書を送るため、時間差が生じます。半年から1年近くかかることもあります。決済の場で払わないため諸費用の一覧から落ちやすく、忘れたころに数十万円の請求が届くことになります。
「不動産投資は節税になる」というのは本当ですか?
仕組みそのものは実在します。減価償却などで不動産所得が赤字になれば、給与など他の所得と損益通算できます。ただし2つの制限があります。1つは、土地を取得するための借入金の利子に相当する部分が通算の対象から外れること。もう1つは、減価償却で減らした税が売却時に取得費の減少という形で戻ってくることです。節税というより繰り延べに近い、というのが実際に合った理解です。
税額は売買価格で決まりますか?
不動産取得税と固定資産税は、売買価格ではなく固定資産課税台帳に登録された評価額をもとに計算します。市場での売買価格とは別の物差しなので、ずれが生じます。一方、譲渡所得は実際の売却価格と取得費で計算します。どの税がどの数字を使うのかを分けて把握しておくと、見積りの誤差が減ります。
買ったときの書類はいつまで必要ですか?
売るときまで必要です。譲渡所得の計算では取得費を差し引きますが、これを証明できないと収入金額の5%を取得費とみなす扱いになります。3,000万円で売れば取得費は150万円として計算されることになり、実際に2,500万円で買っていても証明できなければこの扱いです。売買契約書、仲介手数料の領収書、登記費用の明細は、何十年たっても必要になる書類です。

出典 番号は本文中の [n] に対応します

  1. 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 昭和25年

    確認日 2026-08-19

  2. 地方税法施行令(昭和二十五年政令第二百四十五号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 昭和25年

    確認日 2026-08-19

  3. 地方税制度|固定資産税

    総務省

    確認日 2026-08-19

  4. No.2100 減価償却のあらまし

    国税庁

    確認日 2026-08-18

  5. 租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 昭和32年

    確認日 2026-08-19

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