相続土地国庫帰属制度 そうぞくとちこっこきぞくせいど
相続した土地を国に引き取ってもらえる制度。ただし建物があると申請できず、手数料は一筆14,000円、負担金は原則20万円かかる。
この記事の要点
- 建物があると、申請そのものができない
- 境界が明らかでない土地も、申請できない
- 手数料は一筆14,000円。却下・不承認でも戻らない
- 負担金は原則20万円。市街化区域の宅地は面積に応じて上がる
- 負担金は通知から30日以内。納めなければ承認は効力を失う
目次(6項目)
相続土地国庫帰属制度とは、相続でもらった土地を、一定の条件のもとで国に引き取ってもらえる制度です。2023年4月27日から使えるようになりました。
売れない土地、使い道のない土地を相続すると、固定資産税と管理の手間だけが残ります。★そこから抜ける道として作られたものです。
ただしただでは引き取ってもらえません。 条文には10の関門と、2種類のお金が書かれています。
目的は「所有者不明土地を増やさないこと」
★制度の目的は、持ち主の救済ではありません。 名義が分からない土地を増やさないことです。
そのため、対象は相続または遺贈で取得した土地に限られます。買った土地は使えません。同じ理由で、相続登記の義務化と一組の制度として作られています。
★関門は10ある
条文は2段構えになっています。申請そのものができない土地(2条3項)と、申請はできるが承認されない土地(5条1項)です。
申請ができない(法2条3項)
- ★建物の存する土地
- 担保権または使用収益を目的とする権利が設定されている土地
- 通路その他の他人による使用が予定される土地を含む土地
- 特定有害物質により汚染されている土地
- ★境界が明らかでない土地、所有権に争いがある土地
窓口の手前で止まる。手数料は納めた後になる。
承認されない(法5条1項)
- 政令の基準の崖があり、管理に過分の費用・労力を要する土地
- 管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
- 除去しなければ管理・処分できない有体物が地下にある土地
- 隣接地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分できない土地
- そのほか、管理・処分に過分の費用または労力を要する土地
審査を経て、そこで止まる。
★崖の基準は施行令4条1項で「勾配30度以上かつ高さ5メートル以上」と決まっています。
かかるお金は、入口と出口に1つずつ
承認申請14,000円
法務大臣に申請書を提出する。★手数料は土地の一筆ごとに14,000円(施行令3条)
審査
却下事由・不承認事由に当たらないかを見る。実地の調査もある
承認の通知と、負担金の額の通知
承認されると、併せて負担金の額が通知される(法10条2項)
負担金の納付30日
★通知を受けた日から30日以内。納めなければ承認は効力を失う(法10条3項)
国庫へ帰属
負担金を納付した時に、所有権が国庫に帰属する
★手数料は、却下されても不承認になっても戻りません。申請の前に、10の関門を自分で当てておく価値があります。
★手数料と負担金は別です。 手数料は入口で、負担金は出口です。
負担金は「国が10年管理する費用」
額は施行令5条1項が決めています。原則は20万円ですが、3つの区分だけが面積に応じた算定になります。
- 四号 前三号以外の土地 … 20万円1 25.0%
- 一号 市街化区域等の宅地 … 地積に応じて算定1 25.0%
- 二号 市街化区域・農用地区域等の農地 … 地積に応じて算定1 25.0%
- 三号 主に森林として利用されている土地 … 地積に応じて算定1 25.0%
★市街化調整区域の雑種地や山林の多くは四号にあたり、20万円で済みます。千円未満の端数は切り捨てます(5条2項)。
負担金 = 地積 ✕ 単価 + 定額
- 50㎡以下
- 地積 ✕ 4,070円 + 208,000円
- 50〜100㎡
- 地積 ✕ 2,720円 + 276,000円
- 100〜200㎡
- 地積 ✕ 2,450円 + 303,000円
- 200〜400㎡
- 地積 ✕ 2,250円 + 343,000円
- 800㎡超
- 地積 ✕ 2,010円 + 479,000円
面積が大きいほど1平方メートルあたりの単価は下がりますが、総額は増えます。
森林は単価が低く設定されています。750平方メートル以下なら「地積 ✕ 59円 + 210,000円」、750〜1,500平方メートルなら「地積 ✕ 24円 + 237,000円」です。1,000平方メートルの山林なら 261,000円 になります。
使う前に、順番に当てる
★1つ目から5つ目までは、手数料を払う前に確かめられます。ここで止まる土地は、申請しても戻りません。
この制度が向いている土地・向いていない土地
★「売れないから国へ」とは限りません。
その土地は、いくらでも売れるか
二束三文でも買い手がいる
売るほうが軽いことが多い
- 手数料も負担金もかからない
- 建物の解体も、買主が引き受けることがある
- 境界の確定が求められる点は、どちらでも同じ
0円で譲る形も含めて、相手を探す価値がある。
引き取り手がまったくいない
国庫帰属が選択肢になる
- ★確実に手を離せる(承認されれば)
- 費用は手数料14,000円+負担金20万円〜
- 持ち続ける場合の固定資産税と管理費と比べる
10の関門を通れることが前提。
★どちらを選ぶにせよ、境界の確定を求められる点は変わりません。
譲り渡す形の落とし穴は0円住宅にまとめました。★0円でも、もらう側に税がかかることがあります。
建て替えのできない土地は、そもそも買い手が限られます。→ 再建築不可物件