買換え特例と軽減税率 かいかえとくれいとけいげんぜいりつ
3,000万円控除と軽減税率は併用できるが、買換え特例はそのどちらとも併用できない。買換え特例は非課税ではなく、課税の繰延べである。
この記事の要点
- 3,000万円控除と軽減税率は併用できる。条文の除外リストに入っていない
- 買換え特例は、そのどちらとも併用できない
- 買換え特例は非課税ではない。次に売るときに出てくる
- 軽減税率は6,000万円以下の部分が10%。所有期間は1月1日で見る
- 買換え特例には期限がある。令和9年12月31日までの譲渡
目次(5項目)
住んでいた家を売るときの特例が3つあります。名前が似ていて、混ざりやすいところです。
- 3,000万円特別控除(措置法35条)… 譲渡所得から3,000万円を引ける
- 軽減税率の特例(措置法31条の3)… 所有期間10年超なら、税率が下がる
- 買換え特例(措置法36条の2)… 買い換えたぶんだけ、課税を先送りできる
★このうち、併用できる組とできない組があります。 そして買換え特例は、税が消える制度ではありません。
★併用できるのは、1組だけ
3,000万円控除 + 軽減税率
- 併用できる
- 3,000万円を引いた後の金額に、軽減税率をあてる
- 31条の3の除外リストに、35条が入っていない
- ★条文が「入れていない」ことで併用が成り立っている
使えるならこの組が基本になる。
買換え特例
- ★上の2つのどちらとも併用できない
- 36条の2が、31条の3と35条を名指しで除いている
- その年・前年・前々年に受けていれば使えない
- 選ぶのは1つだけ
先送りするか、いま引くかの二択になる。
★条文が併用を許す方法は、除外リストに載せないことです。
条文は租税特別措置法[1]にあります。国税庁の説明はNo.3355[2]と、3,000万円控除のNo.3302[3]にあります。
★「書かれていないから使える」という読み方です。 条文が併用を許す方法は、除外リストに載せないことです。
なお31条の3には、前年または前々年に既にこの項の適用を受けている場合を除くという制限があります。実質的に3年に1回です。
買換え特例は「非課税」ではない
★これがいちばん誤解されるところです。
家Aを売る課税なし
譲渡収入が買換資産の取得価額以下なら、譲渡がなかったものとされる(36条の2第1項)
家Bを買う
買換資産。ここで一度、税は止まる
家Bを売るここで出る
★取得価額は、政令で定めるところにより計算される(36条の4)
★家Bの取得価額は、実際に払った額ではなく、家Aから引き継いだ額をもとに計算されます。だから家Bを売るときの譲渡所得が大きくなります。
税が消えたのではなく、次の売却まで持ち越されただけです。次に売るときに3,000万円控除が使えるかどうかは、そのときの状況によります。
★「もう住み替えない」と決めているなら、繰り延べる意味は小さくなります。
要件の数字
取得の期限は「譲渡の日の属する年の前年1月1日から、譲渡の日の属する年の12月31日まで」、入居の期限は「取得の日から、譲渡の日の属する年の翌年12月31日まで」です。
数字で比べる
★買換え特例が効くのは、譲渡所得が大きい場合です。3,000万円を大きく超える益が出ていて、なお住み替えを続ける見込みがあるとき、という限られた場面になります。
なお、この試算に住民税と復興特別所得税は入れていません。 実際の負担はこれより増えます。長期譲渡所得の税率の構造は国税庁 No.3208[4]と譲渡所得にまとめました。
決める順序
譲渡所得は3,000万円に収まるか
収まる
3,000万円控除だけで足りることが多い
- 控除後の課税長期譲渡所得金額が0なら、税額も0
- 軽減税率を重ねる余地も残る
- ★買換え特例を使うと、この控除が使えなくなる
先送りする必要が無い。
大きく超える
買換え特例が選択肢に入る
- ただし売却代金1億円以下が条件
- 買換資産の面積の条件もある
- ★次に売るときに出てくることを織り込む
住み替えを続ける見込みがあるかどうかで変わる。
★どちらを選んでも、確定申告が要ります。申告しなければ、どの特例も適用されません。
相続した空き家を売る場合は、また別の特例(措置法35条3項の空き家特例)の話になります。そちらは要件が多く、1つ外すと3,000万円がまるごと消えます。 → 相続した不動産を売るときの税の計算機