分譲 ぶんじょう
分譲とは、事業者が土地や建物を区分けして複数の相手へ売ること。法律上の定義は無い商慣行の言葉だが、分譲では売主が宅建業者になるため、個人が売主の中古売買とは買主の保護の厚さが変わる。
この記事の要点
- 分譲は「分割譲渡」の略。法律上の定義は無く、商慣行の言葉である
- 実際に効いてくるのは、分譲だと売主が宅建業者になる点
- 業者が売主なら、手付は代金の2割まで。契約不適合責任は引渡しから2年以上
- 買主も業者なら、この保護は働かない。素人の買主のための決まりだから
- 「分譲賃貸」の貸主は業者ではなく、部屋を買った個人である
目次(12項目)
分譲とは、事業者が土地や建物を区分けして、複数の相手へ売ることです。「分割譲渡」の略にあたります。
分譲住宅(建売)
- 土地を区画に割り、建物を建てて売る
- 建物ができている、または設計が決まっている
- 対になるのは注文住宅
契約は売買
分譲地
- まとまった土地を区画に割って売る
- 建物は買主が別に建てる
- 対になるのは一括での土地取引
建築条件が付くことがある
いずれも「1つのまとまりを分けて、複数の相手へ売る」点が共通しています。
効いてくるのは「誰が売主か」
同じ中古マンションの1室でも、売主が誰かで買主の立場は変わります。
売主は、宅建業者か
宅建業者が売主(分譲)
宅地建物取引業法の8つの制限が働く
- 手付は代金の2割まで
- 契約不適合責任は引渡しから2年以上
- 事務所以外での申込みならクーリング・オフ
- 違約金の予定額も代金の2割まで
上限が引かれているだけで、その範囲は交渉次第。
個人が売主(中古の売買)
民法の原則にもとづき、契約で決まる
- 手付の額に法律上の上限は無い
- 契約不適合責任の期間を短縮する特約も、免責の特約も有効になりうる
- クーリング・オフの制度は無い
- 違約金の額に法律上の上限は無い
契約書に書いてあることが、そのまま効く。
★業者が売主なら安心、という意味ではありません。最低限の線が引かれている、という意味です。
この差は契約書を読む前から決まっています。 重要事項説明でも売買契約書でも、売主が誰かは最初に書かれています。そこを先に見てください。
業者が売主のときに働く制限
宅地建物取引業法[1]は、業者が自ら売主となる場合について、いくつもの制限を置いています。実務でよく効くものを条文から挙げます。
手付は代金の2割まで(39条)
手付そのものの仕組みは手付金にまとめました。
契約不適合責任は引渡しから2年以上(40条)
個人が売主なら、期間を短くする特約も、責任を負わないとする特約も有効になりえます。同じ築年数の物件でも、売主が違えば買主が背負う危険が違います。 詳しくは契約不適合責任にあります。
違約金の予定も代金の2割まで(38条)
債務不履行を理由とする解除に伴う損害賠償の額を予定し、または違約金を定めるときは、合算した額が代金の2割を超える定めをしてはならないとされています。超える部分は無効です。
事務所以外での申込みなら撤回できる(37条の2)
いわゆるクーリング・オフです。業者の事務所など定められた場所以外で買受けの申込みをした場合、書面により申込みの撤回や契約の解除ができ、業者は損害賠償や違約金を請求できません。
工事完了前なら手付金等の保全(41条)
造成や建築の工事が完了する前に売る場合、業者は保証委託契約などの措置を講じた後でなければ手付金等を受領できません。ただし買主へ所有権移転の登記がされたとき、または受領しようとする額が代金の5%以下かつ政令で定める額以下であるときは、この限りではありません。
★新築の分譲マンションを、建物が建つ前に契約する場合に効いてくる規定です。
★買主も業者なら、これらは働かない
ここが、これらの決まりの性格をよく表しています。
手付の2割上限も、契約不適合責任の2年ルールも、クーリング・オフも、買主が業者なら働きません。
つまりこれらは、知識と情報の差を埋めるために置かれた決まりです。差が無い相手どうしなら要らない、という組み立てになっています。買主として物件を見るとき、自分がどちら側にいるのかを意識しておくと、契約書の読み方が変わります。
分譲住宅と注文住宅は、契約の型が違う
同じ「家を建てて住む」でも、契約の種類が変わります。
分譲住宅(建売)
- 完成した建物、または建てる予定の建物を「買う」
- 売買契約
- 売主が業者なら、上記の制限が働く
土地と建物をまとめて買う形が多い
注文住宅
- 建ててもらう。工事を「注文する」
- 請負契約
- 適用される条文が売買とは別になる
土地は別に買い、建築は工務店等と契約する
分譲住宅の売買に宅建業法の制限が働くのは、それが売買契約だからです。請負契約には、同じ形の制限はありません。
「分譲賃貸」の貸主は、業者ではない
物件情報で見かける「分譲賃貸」は、分譲マンションの1室を、買った人が貸しているものです。
事業者が分譲する
1棟を各室に分けて売る。買った人は区分所有者になる
買った個人が、その部屋を貸すここが普通の賃貸と違う
貸主は区分所有者である個人。宅建業者ではない
借主が住む
建物の仕様は分譲のものだが、契約の相手は個人
建物は分譲、貸主は個人、という組み合わせになります。
ここから2つの帰結が出ます。
1つめは、管理規約に従う必要があること。 建物は区分所有なので、区分所有法[3]にもとづく管理規約があります。ペット、楽器、フローリングへの変更などの決まりは、貸主個人ではなく管理組合が定めています。貸主が了解しても、規約で禁じられていればできません。
2つめは、貸主が変わりうること。 区分所有者がその部屋を売れば、新しい所有者が貸主になります。借地借家法[4]により賃借人の地位は保護されるため、契約が当然に終わるわけではありませんが、相手は変わります。