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売買・契約 7分で読めます 2,531字

手付金 てつけきん

手付金とは、売買契約のときに買主が売主へ渡す金銭のこと。特約がなければ解約手付とされ、相手が履行に着手するまでは、買主は放棄、売主は倍返しで契約を解除できる。

この記事の要点

  1. 特約がなければ解約手付とされ、契約から抜ける権利の対価になる
  2. 抜けられるのは「相手が履行に着手するまで」。日付ではなく行為が基準になる
  3. 契約書では、争いを避けるために解除の期限を日付で定めるのが通常
  4. 宅建業者が売主なら、手付は代金の2割を超えられない
  5. 期限を過ぎると手付放棄では抜けられず、違約金の話になる
目次(6項目)

手付金とは、売買契約を結ぶときに買主が売主へ渡す金銭です。売買代金の5〜10%程度とされることが多いものの、法律上の決まりはありません。

「頭金」と混同されがちですが、別のものです。頭金は代金のうち自己資金で払う部分、手付金は契約から抜ける権利の対価にあたります。

3つの性質

手付には3つの意味があるとされる

解約手付

  • 相手が履行に着手するまでは、契約を解除できる
  • 買主は手付を放棄する
  • 売主は手付の倍額を返す

特約がなければ、これと推定される。

証約手付・違約手付

  • 証約手付は、契約が成立したことの証
  • 違約手付は、約束を破ったときの制裁
  • どれにあたるかは契約書の定めによる

実務ではほとんどが解約手付として扱われる。

いつまで抜けられるのか

ここが実務で最も問題になります。

「履行の着手」とは、契約内容の実現に向けた客観的な行為で、外から分かる形のものを指すとされています。売主が引渡しの準備として建物を取り壊した、買主が代金の一部を支払った、といった例が挙げられます。

しかしこの判断は難しく、当事者の見解が割れます。そこで実務では、契約書に期限を日付で定めるのが通常です。

契約書で定められる期限
  1. 契約日

    手付金を支払う。ここから手付解除ができる期間が始まる

  2. 手付解除の期限(契約書に日付で明記)ここが分かれ目

    この日までなら、買主は手付放棄、売主は倍返しで解除できる

  3. 期限を過ぎる

    手付解除はできなくなる。抜けるには違約金の話になる

  4. 決済・引渡し

    手付金は売買代金の一部に充当される

「その期限が具体的に何月何日か」を、重要事項説明の場で確かめておく価値がある。

宅建業者が売主のときの決まり

売主が宅地建物取引業者の場合、買主を保護するための決まりが2つあります。

保全措置が講じられているかどうかは、重要事項説明で説明されます。

ローン特約による白紙解除は、手付解除とは別

契約から抜ける道は、手付解除だけではありません。

抜け方が2つある

手付解除

  • 買主の都合で抜ける
  • 手付金は返らない(放棄する)
  • 期限は契約書で定めた日まで
  • 理由は問われない

費用を払って抜ける道。

ローン特約による白紙解除

  • 融資が承認されなかった場合に抜ける
  • 手付金は全額返るのが通常
  • 期限は契約書に定めたローン特約の期限まで
  • 金融機関の否決という理由が要る

費用をかけずに抜ける道。ただし条件がある。

個人が売主の場合は、保護が薄くなる

前の節で挙げた「2割の上限」と「保全措置」は、宅地建物取引業者が自ら売主となる場合の決まりです。

中古住宅の売買では、売主が個人であることが珍しくありません。その場合、これらの決まりは適用されません。手付の額に上限は無く、保全措置の義務もありません。

とはいえ個人が売主なら倒産の心配は薄く、実務上は問題になりにくい面もあります。注意すべきは「業者が売主だと思っていたら個人だった」場合です。登記簿の所有者と、契約書の売主が誰かを確かめておけば分かります。

手付金の額を、どう考えるか

手付が少ないとき・多いとき

手付が少ない

  • 手付解除をするときの負担が軽い
  • 契約時に用意する現金が少なくて済む

買主から見た身軽さ。

手付が多い

  • 売主から見て、契約の確かさが増す
  • 価格や条件の交渉で有利に働くことがある
  • 売主が手付解除する場合、倍額を返す必要があり抑止になる

買う意思の強さを示す材料にもなる。

どちらが良いという話ではありません。 手付は「抜ける権利の値段」なので、抜ける可能性をどう見るかで適切な額が変わります。

ローンの審査に不安があるなら、手付を抑えるよりもローン特約の期限を確かめるほうが効きます。融資が通らなかった場合の白紙解除では、手付金は全額返るのが通常です。

よくある質問

手付金はいくらが相場ですか?
売買代金の5〜10%程度とされることが多いですが、法律上の決まりはありません。ただし宅地建物取引業者が自ら売主となる場合は、代金の2割を超える手付を受け取れません。手付が少ないほど解除の負担は軽くなりますが、売主から見た契約の確かさも下がるため、交渉の材料になります。
手付金は返ってきますか?
契約どおり決済まで進めば、売買代金の一部に充当されます。買主の側から手付解除をした場合は返りません。ローン特約により契約が白紙解除になった場合は、全額返還されるのが通常です。どの場合にどうなるかは契約書に書かれているため、署名前に確認してください。
「履行に着手」とは具体的に何ですか?
契約内容の実現に向けた客観的な行為で、外から分かる形のものを指すとされています。売主が引渡しの準備として建物を取り壊した、買主が代金の一部を支払った、といった例が挙げられます。判断が難しいため、実務では契約書に「◯年◯月◯日まで」と期限を定めて、争いを避けるのが通常です。
手付金を預けたのに業者が倒産したら?
宅地建物取引業者が自ら売主となる場合、一定額を超える手付金等を受け取るには保全措置が義務づけられています。銀行の保証や保険により、業者が倒産しても手付金が戻る仕組みです。保全措置の内容は重要事項説明で説明されます。

出典 番号は本文中の [n] に対応します

  1. 民法(明治二十九年法律第八十九号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 明治29年

    確認日 2026-08-18

  2. 宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 昭和27年

    確認日 2026-08-18

  3. 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(令和8年4月1日施行版)

    国土交通省 令和8年4月1日施行版

    確認日 2026-08-18

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