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建物状況調査(インスペクション) たてものじょうきょうちょうさ

宅建業法は3か所で建物状況調査に触れているが、どこにも「実施しなければならない」とは書いていない。あっせんの有無と、実施の有無の説明が義務である。

この記事の要点

  1. 条文は3か所にあるが、どこにも「実施しなければならない」と書いていない
  2. 重要事項説明の対象になるのは、実施後1年(鉄筋コンクリート造等の共同住宅等は2年)以内のもの
  3. 実施できるのは、建築士であり、かつ大臣が定める講習を修了した者
  4. 書類の保存状況として、確認済証・検査済証を含む6つが挙げられている
  5. 昭和56年5月31日以前に着手した住宅は、耐震関係の書類も対象になる
目次(6項目)

建物状況調査とは、中古住宅を売買するときに、建築士が建物の状態を目で見て確かめる調査のことです。インスペクションとも呼ばれます。

見るのは、構造耐力上主要な部分(柱・梁・基礎など建物を支える部分)と、雨水の浸入を防止する部分(屋根・外壁など)です。

宅建業法が3か所でこの調査に触れていますが、どこにも「実施しなければならない」とは書いていません。 そこが要点です。

条文は3か所にある

取引の進み方と、条文の位置
  1. 媒介契約あっせん

    調査を実施する者のあっせんに関する事項を、書面に記載する(34条の2第1項4号)

  2. (実施するなら、ここで実施)

    ★条文は実施を義務づけていない

  3. 重要事項説明説明

    実施の有無と、実施している場合の結果の概要。書類の保存の状況(35条1項6号の2)

  4. 契約・37条書面記載

    建物の構造耐力上主要な部分等の状況について、当事者の双方が確認した事項(37条1項2号の2)

★4つのうち、義務になっているのは1つ目・3つ目・4つ目です。

条文は宅地建物取引業法[1]にあります。

★★どの条文も「実施しなければならない」とは書いていません。

義務になっているのは、あっせんするかどうかを書くことと、実施しているかどうかを説明することまでです。

有効期間は1年。ただし鉄筋コンクリート造等の共同住宅等は2年

その期間を定めているのが、施行規則[2]16条の2の2です。

重要事項説明の対象になる期間

原則

  • 実施後 1年
  • 木造の戸建てなどはここに入る
  • 1年を過ぎた調査は、対象から外れる

説明されないだけで、調査自体が無効になるわけではない。

鉄筋コンクリート造等の共同住宅等

  • ★実施後 2年
  • 鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造
  • 共同住宅等の定義は品確法施行規則1条4号

マンションの多くはこちらに当たる。

★「1年以内」とだけ書いた説明を見かけますが、条文は2つに分けています。

期間を過ぎていれば、説明の対象から外れます。 「説明が無かった」=「調査していない」とは限りません。

実施できるのは、建築士かつ講習修了者

建築士であるだけでは足りません。 講習の修了が要ります。

そして「大臣が定める基準に従って行う」とされているので、調査の範囲と方法は、実施者ごとに勝手に決まるものではありません。

「書類の保存の状況」は、6つある

施行規則16条の2の3が挙げる書類

★あるかどうかの説明であって、内容の説明ではありません。「無い」と説明されることもあります。

検査済証が無いと、増築や用途変更のときに詰まります。→ 建築確認と検査済証

6つ目の「昭和56年5月31日以前」は、旧耐震かどうかの線です。 この日付は、住宅ローン控除不動産取得税の要件でも出てきます。

調査の結果と、売主の責任は別

調査で問題が見つからなかった場合

何が確定して、何が確定しないか

  • 確定すること

    37条書面に「双方が確認した事項」として残る

    • 37条1項2号の2による記載
    • 後の争いで、前提として扱われる
    • 何を確認したかが書面で残る

    「言った・言わない」を減らす働きがある。

  • 確定しないこと

    隠れた欠陥が無いことまでは示さない

    • 非破壊で、目視等により確認できる範囲の調査である
    • 壁の中、床下、配管の内部には限界がある
    • 契約不適合責任は、別の制度として残る

    調査を受けたことは、責任の免除ではない。

★調査の結果と、売主が負う責任は別の制度です。

売主の責任の範囲は契約不適合責任にまとめました。民法566条の1年の通知期間も、そちらにあります。

買う側が確かめる順序

中古を見に行く前・見た後

★2つ目と3つ目は、重要事項説明の場で初めて聞くと判断の時間がありません。先に聞いてください。

重要事項説明そのものの位置づけは重要事項説明にまとめました。契約を締結するまでの間に行うものですが、実務では契約の直前です。

よくある質問

中古を買うとき、建物状況調査は必ず行われますか?
行われません。宅建業法が定めているのは3つで、媒介契約書に調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載すること(34条の2第1項4号)、重要事項説明で実施の有無と結果の概要を説明すること(35条1項6号の2イ)、37条書面に当事者の双方が確認した事項を記載すること(37条1項2号の2)です。★どの条文も「実施しなければならない」とは書いていません。実施するかどうかは、依頼者と当事者が決めます。
「あっせん無し」と書かれていたら、調査は受けられませんか?
受けられます。あっせんは、業者が調査を実施する者を紹介する行為です。あっせんが無くても、自分で調査を実施する者を探して依頼できます。★媒介契約書の「あっせんの有無」は、業者が紹介するかどうかの記載であって、調査ができるかどうかではありません。国土交通省の標準媒介契約約款では、あっせん「無」とする場合にその理由を記入することとされています。
過去に調査していれば、必ず説明されますか?
期間の制限があります。宅建業法35条1項6号の2イは「実施後国土交通省令で定める期間を経過していないものに限る」としており、施行規則16条の2の2がその期間を1年としています。★ただし鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅等は2年です。1年を過ぎた調査は、重要事項説明の対象から外れます。
誰が調査するのですか?
宅建業法施行規則15条の8が、次のいずれにも該当する者としています。建築士法2条1項に規定する建築士であること、そして国土交通大臣が定める講習を修了した者であることです。★建築士であるだけでは足りず、講習の修了が要ります。2項は、調査を実施するときは大臣が定める基準に従って行うものとしています。
「書類の保存の状況」とは何を見るのですか?
宅建業法35条1項6号の2ロを受けて、施行規則16条の2の3が6つ挙げています。確認申請書と確認済証、検査済証、建物状況調査の結果についての報告書、既存住宅に係る建設住宅性能評価書、建築基準法施行規則の定期報告関係の書類、そして昭和56年5月31日以前に新築の工事に着手した住宅では耐震関係の書類です。★あるかどうかの説明であって、内容の説明ではありません。
調査で問題が無ければ、後から欠陥が出ても文句を言えませんか?
そうはなりません。建物状況調査は、非破壊で目視等により確認できる範囲の調査です。壁の中や床下の隠れた部分は限界があります。★調査の結果と、売主が負う契約不適合責任は別の制度です。ただし37条書面に「当事者の双方が確認した事項」が記載されるため、そこに書かれた状態は、後の争いで前提として扱われることになります。

出典 番号は本文中の [n] に対応します

  1. 宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 昭和27年

    確認日 2026-09-02

  2. 宅地建物取引業法施行規則(昭和三十二年建設省令第十二号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 昭和32年

    確認日 2026-09-02

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