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境界(筆界)と越境 きょうかいひっかいとえっきょう

筆界は登記された時に決まったもので、当事者の合意では動かせない。筆界特定は新たに決める手続ではなく、どこかを明らかにする手続である。

この記事の要点

  1. 筆界は「登記された時に」決まったもの。当事者の合意では動かせない
  2. 筆界特定は新たに決める手続ではない。位置を明らかにする手続である
  3. 位置を特定できないときは「範囲」を特定する、と条文が認めている
  4. 筆界確定訴訟の判決が確定すれば、筆界特定は抵触する範囲で効力を失う
  5. 越境した枝は原則「切除させる」。根は自分で切り取れる
目次(6項目)

筆界(ひっかい)とは、登記の上での土地の切れ目のことです。土地は登記簿の上で1つずつ数えられていて、その1つを一筆(いっぴつ)といいます。隣り合う一筆と一筆の間の線が筆界です。

越境とは、木の枝や根、塀、屋根、配管などが、隣の土地との境を越えてはみ出している状態をいいます。

日常語の「境界」は、この2つをまたいで使われます。★そして、揉めるのはほぼここです。 同じ「境界」という言葉で、動かせない線の話と、動かせる線の話が混ざるためです。

「境界」と呼ばれているもの

筆界(動かせない)

  • 登記の上での、一筆と一筆の間の線
  • 土地が登記された時に決まっている
  • 隣の人と話し合っても動かない
  • 分筆・合筆の登記によってのみ変わる

公の記録としての線。

所有権がどこまで及ぶか(動きうる)

  • 誰がどこまで持っているか、という話
  • 契約や時効取得によって動きうる
  • 筆界と一致しないことがある
  • ★この語は不動産登記法に出てこない

当事者の間の話。

★塀の位置が筆界と一致している保証は、どこにもありません。2つがずれている土地は珍しくないためです。

以下、この2つを分けて読んでください。

筆界は、合意では動かせない

「登記された時に」と書かれています。 過去の一時点で決まったものなので、いま隣の人と話し合っても動きません。

条文にある表題登記は、土地や建物が「どこに、どれだけの広さで存在するか」を最初に記録する登記のことです。所有者が誰かを記録する権利の登記とは、別の欄(表題部と権利部)に置かれています。

「隣と話がついている」は、筆界の話ではありません。 それは所有権がどこまで及ぶかの話です。争いになれば所有権確認の訴えになり、筆界を確定する訴えとは別の手続になります。★どちらの話をしているのかを、まず分けてください。

筆界特定は、決める手続ではない

既にある筆界がどこかを明らかにする手続です。新たに引く手続ではありません。

そして括弧の中に注目してください。★「特定することができないときは、その位置の範囲を特定する」点で出ないことがあると、条文が最初から認めています。

筆界特定の流れ(不動産登記法131条・143条)
  1. 申請片方から

    土地の所有権登記名義人等が、筆界特定登記官に申請する(131条1項)

  2. 筆界調査委員の調査

    測量、資料の収集、関係人からの聴取などを行う

  3. 意見の提出

    筆界調査委員が筆界特定登記官へ意見を出す

  4. 筆界特定

    登記記録・地図・地形・境界標の有無と設置の経緯などを総合的に考慮する(143条1項)

  5. 筆界特定書理由つき

    結論および理由の要旨を記載した書面が作られる

★隣の人の同意は、申請の要件になっていません。片方から始められます。

143条が「考慮する」と挙げているもの

筆界特定登記官が総合的に考慮する事情(143条1項)

★「塀があるからそこが筆界」ではありません。設置の経緯まで含めて考慮する、と書かれています。

境界標は、共同で設けられる

設置の費用は折半、測量の費用は面積に応じて。 分け方が違います。

★枝と根で、扱いが違う

隣から越えてきた竹木(民法233条)

越えてきたのは枝か、根か

  • 枝(1項・3項)

    原則は、所有者に切除させる

    • 1項「その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる」
    • ★3項で、自分で切り取れる場合が3つある
    • 催告して相当の期間内に切除しないとき
    • 所有者を知ることができず、または所在を知ることができないとき
    • 急迫の事情があるとき

    共有の竹木なら、各共有者が切り取れる(2項)。

  • 根(4項)

    切り取ることができる

    • 「隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる」
    • 催告は要らない
    • 条文が1行で書いている

    枝のような手順が置かれていない。

★3項による枝の切取りのために隣地へ入ることは、209条1項3号が認めています。

「勝手に切ると違法」は、根については当てはまりません。 枝についても、3項の3つの場合には自分で切り取れます。

買う前・売る前に確かめる順序

境界まわりで、契約より前に見るもの

★1つ目と2つ目は、買う側でも自分で確かめられます。3つ目から先は売主・隣地に聞くことになります。

建物の側の状態は建物状況調査(インスペクション)で、道路との関係は接道義務にまとめました。境界が決まらないと、接道の長さも確定しません。

接道が確保できない土地では、そもそも建て替えができません(→ 再建築不可物件)。★境界の争いは、その判定の前提を揺らします。

よくある質問

隣と話し合って境界を決められますか?
決められるものと、決められないものがあります。不動産登記法123条1号は筆界を「当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線」と定義しています。★「登記された時に」決まっているものなので、当事者の合意で動かすことはできません。所有権がどこまで及ぶかは、時効取得などによって筆界と一致しないことがありますが、それは別の問題です。
筆界特定は、境界を決めてくれる制度ですか?
決める制度ではありません。不動産登記法123条2号は筆界特定を「筆界の現地における位置を特定すること」と定義しています。★既にある筆界がどこかを明らかにする手続です。そして同号の括弧書きが「その位置を特定することができないときは、その位置の範囲を特定すること」としています。範囲でしか特定できない場合があることを、条文が認めています。
筆界特定と裁判は、どちらが強いですか?
裁判です。不動産登記法148条は「筆界特定がされた場合において、当該筆界特定に係る筆界について民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えに係る判決が確定したときは、当該筆界特定は、当該判決と抵触する範囲において、その効力を失う」と定めています。★筆界特定を受けた後でも、筆界確定訴訟を起こせます。
誰が申請できますか?
不動産登記法131条1項は「土地の所有権登記名義人等」が筆界特定登記官に申請できるとしています。2項では地方公共団体も、対象土地の所有権登記名義人等のうちいずれかの者の同意を得たときは申請できます(14条1項の地図に表示されない筆界に限る)。★隣の人の同意は要件になっていません。片方から申請できます。
測量のために隣の敷地に入れますか?
民法209条1項2号が「境界標の調査又は境界に関する測量」を目的として、必要な範囲内で隣地を使用できるとしています。★ただし同項ただし書が「住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない」としています。そして3項が、あらかじめ目的・日時・場所・方法を通知しなければならないとしています(困難なときは開始後、遅滞なく)。
越境してきた枝は切ってよいですか?
原則は切らせるほうです。民法233条1項は「その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる」としています。3項が例外を3つ挙げていて、催告したのに相当の期間内に切除しないとき、所有者を知ることができずまたは所在を知ることができないとき、急迫の事情があるときは、土地の所有者が自ら切り取れます。★根は違います。4項が「隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる」としていて、催告は要りません。

出典 番号は本文中の [n] に対応します

  1. 不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 平成16年

    確認日 2026-09-02

  2. 民法(明治二十九年法律第八十九号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 明治29年

    確認日 2026-09-02

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