境界(筆界)と越境 きょうかいひっかいとえっきょう
筆界は登記された時に決まったもので、当事者の合意では動かせない。筆界特定は新たに決める手続ではなく、どこかを明らかにする手続である。
この記事の要点
- 筆界は「登記された時に」決まったもの。当事者の合意では動かせない
- 筆界特定は新たに決める手続ではない。位置を明らかにする手続である
- 位置を特定できないときは「範囲」を特定する、と条文が認めている
- 筆界確定訴訟の判決が確定すれば、筆界特定は抵触する範囲で効力を失う
- 越境した枝は原則「切除させる」。根は自分で切り取れる
筆界(ひっかい)とは、登記の上での土地の切れ目のことです。土地は登記簿の上で1つずつ数えられていて、その1つを一筆(いっぴつ)といいます。隣り合う一筆と一筆の間の線が筆界です。
越境とは、木の枝や根、塀、屋根、配管などが、隣の土地との境を越えてはみ出している状態をいいます。
日常語の「境界」は、この2つをまたいで使われます。★そして、揉めるのはほぼここです。 同じ「境界」という言葉で、動かせない線の話と、動かせる線の話が混ざるためです。
筆界(動かせない)
- 登記の上での、一筆と一筆の間の線
- 土地が登記された時に決まっている
- 隣の人と話し合っても動かない
- 分筆・合筆の登記によってのみ変わる
公の記録としての線。
所有権がどこまで及ぶか(動きうる)
- 誰がどこまで持っているか、という話
- 契約や時効取得によって動きうる
- 筆界と一致しないことがある
- ★この語は不動産登記法に出てこない
当事者の間の話。
★塀の位置が筆界と一致している保証は、どこにもありません。2つがずれている土地は珍しくないためです。
以下、この2つを分けて読んでください。
筆界は、合意では動かせない
★「登記された時に」と書かれています。 過去の一時点で決まったものなので、いま隣の人と話し合っても動きません。
条文にある表題登記は、土地や建物が「どこに、どれだけの広さで存在するか」を最初に記録する登記のことです。所有者が誰かを記録する権利の登記とは、別の欄(表題部と権利部)に置かれています。
「隣と話がついている」は、筆界の話ではありません。 それは所有権がどこまで及ぶかの話です。争いになれば所有権確認の訴えになり、筆界を確定する訴えとは別の手続になります。★どちらの話をしているのかを、まず分けてください。
筆界特定は、決める手続ではない
★既にある筆界がどこかを明らかにする手続です。新たに引く手続ではありません。
そして括弧の中に注目してください。★「特定することができないときは、その位置の範囲を特定する」 — 点で出ないことがあると、条文が最初から認めています。
申請片方から
土地の所有権登記名義人等が、筆界特定登記官に申請する(131条1項)
筆界調査委員の調査
測量、資料の収集、関係人からの聴取などを行う
意見の提出
筆界調査委員が筆界特定登記官へ意見を出す
筆界特定
登記記録・地図・地形・境界標の有無と設置の経緯などを総合的に考慮する(143条1項)
筆界特定書理由つき
結論および理由の要旨を記載した書面が作られる
★隣の人の同意は、申請の要件になっていません。片方から始められます。
143条が「考慮する」と挙げているもの
★「塀があるからそこが筆界」ではありません。設置の経緯まで含めて考慮する、と書かれています。
境界標は、共同で設けられる
★設置の費用は折半、測量の費用は面積に応じて。 分け方が違います。
★枝と根で、扱いが違う
越えてきたのは枝か、根か
枝(1項・3項)
原則は、所有者に切除させる
- 1項「その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる」
- ★3項で、自分で切り取れる場合が3つある
- 催告して相当の期間内に切除しないとき
- 所有者を知ることができず、または所在を知ることができないとき
- 急迫の事情があるとき
共有の竹木なら、各共有者が切り取れる(2項)。
根(4項)
切り取ることができる
- 「隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる」
- 催告は要らない
- 条文が1行で書いている
枝のような手順が置かれていない。
★3項による枝の切取りのために隣地へ入ることは、209条1項3号が認めています。
★「勝手に切ると違法」は、根については当てはまりません。 枝についても、3項の3つの場合には自分で切り取れます。
買う前・売る前に確かめる順序
★1つ目と2つ目は、買う側でも自分で確かめられます。3つ目から先は売主・隣地に聞くことになります。
建物の側の状態は建物状況調査(インスペクション)で、道路との関係は接道義務にまとめました。境界が決まらないと、接道の長さも確定しません。
接道が確保できない土地では、そもそも建て替えができません(→ 再建築不可物件)。★境界の争いは、その判定の前提を揺らします。