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敷金 しききん

敷金とは、賃料の不払いや損傷の補修に充てるため、借主が貸主へ預ける金銭のこと。預り金であり、賃貸借が終了して明け渡したときに、差し引く額を控除した残りが返される。

この記事の要点

  1. 敷金は預り金。返すことが原則で、差し引ける費目のほうが例外にあたる
  2. 2020年4月施行の改正民法で、敷金の定義と返還の決まりが条文になった
  3. 返還の時期は「明け渡した後」。鍵を返す前に返せとは言えない
  4. 差し引けるのは、賃料の不払いと、借主が負う原状回復の費用
  5. 敷引きの特約は直ちに無効ではないが、額と説明のされ方が問われてきた
目次(7項目)

敷金とは、賃料の不払いや、借主が負う損傷の補修に充てるために、借主が貸主へ預ける金銭です。

言葉として広く知られている一方、「いくら返ってくるのか」は退去のときまで分からないという性質があります。ここでは、返る額を決めている仕組みを見ていきます。

まず、預り金である

この向きが重要です。「返ってきたらラッキー」ではなく、「差し引くには理由が要る」というのが法律上の建て付けです。

2つ目に注意がいります。返還は明け渡した後です。鍵を返す前に「先に敷金を返せ」とは言えません。順序が決まっています。

差し引けるもの、差し引けないもの

敷金から控除できるか

差し引けるもの

  • 未払いの賃料・共益費
  • 借主の故意・過失による損傷の補修費
  • 手入れを怠ったことで生じた損害の補修費
  • 契約で明確に合意された特約の費用

いずれも「理由がある」もの。

差し引けないのが原則

  • 通常の使用で生じた損耗(通常損耗)
  • 時間の経過による変化(経年変化)
  • 次の入居者のための清掃・設備更新
  • 特約の無いハウスクリーニング代

これらの分は、すでに賃料に含まれていると考えられている。

2つ目の列が「原則」なのは、特約で変えられるからです。契約に定めがあれば、通常なら貸主の負担にあたる費用を借主が負うこともあります。

負担区分の考え方は国土交通省のガイドライン[2]に示されています。詳しくは原状回復にまとめました。

敷引きの特約

関西などでは、退去時に敷金(保証金)から一定額を差し引く慣行があります。敷引きと呼ばれます。

「敷金ゼロ」をどう見るか

初期費用を抑えられるため、選ばれやすい条件です。

初期費用が下がっても、総額が下がるとは限らない
  • 敷金あり(退去時に精算して一部が返る)1円
  • 敷金ゼロ(退去時に実費を請求される)1円
  • 敷金ゼロ+定額のクリーニング代・解約手数料1円

敷金が無くても、退去時の費用が消えるわけではない。払う時期が後ろへずれるか、別の名目に置き換わっているだけのことがある。

契約期間全体で払う総額に直して比べるのが確実です。月額の賃料が同じでも、敷金・礼金更新料・解約時の費用まで足すと順位が入れ替わることがあります。

とくに定期借家では、再契約のたびに費用が発生する契約もあります。長く住む前提なら、そこも含めて計算する価値があります。

精算書を受け取ったら

確認する順序
  1. 内訳の提示を求めるまずここ

    原状回復費用 一式」では判断できない。箇所・単価・数量・経過年数の扱いを求める

  2. 契約書の特約と照らす

    差し引かれている費目が、特約に書かれているものかを確かめる

  3. 通常損耗が含まれていないかを見る

    日焼けによる変色、家具のへこみ、次の入居者のための清掃など

  4. 経過年数が反映されているかを見る

    8年住んだ部屋の壁紙を、新品価格の全額で請求されていないか

  5. 折り合わなければ相談する

    自治体の消費生活センター、宅建協会の相談窓口などがある

1つ目を飛ばすと、2つ目以降が確かめられない。内訳が出てくるまでは判断を保留してよい。

家賃債務保証があっても、敷金は敷金

近年は、連帯保証人の代わりに保証会社を使う契約が増えています。この2つは役割が違います。

敷金と家賃債務保証

敷金

  • 借主が貸主へ預ける
  • 退去時に精算して、残りが返る
  • 賃料の不払いと原状回復に充てられる
  • 借主のお金である

預けたものが戻ってくる仕組み。

家賃債務保証

  • 借主が保証会社へ保証料を払う
  • 保証料は戻らない
  • 不払いのとき保証会社が立て替える
  • 立て替えた分は後から借主へ請求される

支払いを肩代わりしてもらう仕組み。免除ではない。

近年は「敷金ゼロ・保証会社必須」という条件も増えています。初期費用は下がりますが、戻らない費用が増えているという見方もできます。契約期間全体の総額で比べてください。

貸す側から見た敷金

投資として物件を持つ場合、敷金は預り金として扱うことになります。

受け取った時点では収入ではありません。退去時に返す義務があるためです。差し引いた分だけが、その時点で収入または損害の補填になります。

物件を売却するときには、敷金の返還義務も買主へ引き継がれるのが通常です。売買代金の精算で、預かっている敷金相当額を買主へ引き渡す形になります。契約書に定めがあるので、売買のときに確認します。

なお、賃貸借契約そのものの承継については借地借家法[3]に定めがあり、建物の譲渡があっても賃借人は引き続き住み続けられます。

よくある質問

敷金はいつ返ってきますか?
賃貸借が終了し、部屋を明け渡した後です。民法は「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」に返還する旨を定めています。順序として、先に明け渡してから精算になります。実務では退去から1〜2か月後に振り込まれることが多く、契約書に期限が書かれていることもあります。
ハウスクリーニング代を敷金から引かれました。妥当ですか?
契約に特約があるかどうかで変わります。特約が無ければ、次の入居者のための清掃は貸主の負担とされるのが原則です。特約があれば直ちに無効とはなりませんが、金額が契約時に明示されていたか、説明を受けて合意したかが問われます。まず契約書の条項と、精算書の内訳を照らし合わせてください。
敷金が返らないと言われました。どうすればよいですか?
まず精算書の内訳の提示を求めてください。「原状回復費用一式」では判断できません。箇所・単価・数量・経過年数の扱いが分かれば、国土交通省のガイドラインの考え方と突き合わせられます。折り合わない場合は、自治体の消費生活センターや宅建協会の相談窓口があります。
敷金ゼロの物件は得ですか?
初期費用は下がります。ただし退去時の費用が消えるわけではありません。敷金が無いぶん、退去時に実費を請求される形になります。また、定額の解約手数料やクリーニング代が契約に組み込まれていることもあります。契約期間全体で払う総額に直して比べたほうが正確です。
「敷金」と「保証金」は違うものですか?
呼び方が違うだけで、性質としては同じ扱いになることが多いのですが、関西などでは保証金から一定額を差し引く「敷引き」の慣行と結びついていることがあります。名称ではなく、契約書に「返還しない」旨の定めがあるかどうかを見てください。

出典 番号は本文中の [n] に対応します

  1. 民法(明治二十九年法律第八十九号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 明治29年

    確認日 2026-08-18

  2. 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)

    国土交通省 住宅局 平成23年8月(再改訂版)

    確認日 2026-08-19

  3. 借地借家法(平成三年法律第九十号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 平成3年

    確認日 2026-08-19

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