事業的規模(5棟10室) じぎょうてききぼごとうじゅっしつ
5棟10室は所得税基本通達26-9の形式基準。超えると青色申告特別控除・資産損失・貸倒れ・専従者給与の4つが変わる。
この記事の要点
- 5棟10室は法律ではなく通達(所得税基本通達26-9)の形式基準
- 変わるのは4つ。青色申告特別控除・資産損失・貸倒れ・専従者給与
- 青色申告特別控除の55万・65万は「事業」を営む者に限られる
- 事業でなければ、資産損失はその年の不動産所得を限度とする
- 届出には期限がある。1月16日以後に開始した場合は2か月以内
目次(8項目)
事業的規模とは、不動産の貸付けが「事業」といえる大きさかどうかの区分です。所得税の世界の言葉で、これに当たるかどうかで税の扱いが変わります。
その目安として広く使われているのが、いわゆる5棟10室です。貸せる部屋がおおむね10室以上、または独立家屋がおおむね5棟以上、という基準を指します。
★この基準がどこに書かれていて、超えると何が変わるのか。 そこが本題です。
5棟10室は、法律ではなく通達にある
★形式基準を示しているのは、法律ではなく通達(所得税基本通達26-9)です。
変わるのは4つ
★4つとも、条文が「事業」という語で線を引いています。5棟10室は、その線をどこに引くかの目安です。
条文は所得税法[2]と租税特別措置法[3]にあります。不動産所得そのものの仕組みは国税庁 No.1370[4]にあります。
1. 青色申告特別控除 — 10万円と65万円の差
- 1項 … 10万円(承認を受けていれば、規模を問わない)1 33.3%
- 3項 … 55万円(★「事業」を営む者が、一切の取引を詳細に記録している場合)1 33.3%
- 4項 … 65万円(3項に加えて、電子帳簿保存または e-Tax のいずれか)1 33.3%
★3項が「不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営むもの」と書いています。事業的規模でなければ、正規の簿記で記帳していても1項までです。
★「正規の簿記で記帳すれば65万円」ではありません。 記帳の方法と、規模の両方が要ります。
なお1項も3項も、控除額は所得の額が上限です。所得が20万円しかなければ、控除も20万円までです。
2. 資産損失 — 限度があるかどうか
その貸付けは事業として行われているか
事業的規模
51条1項 — 必要経費に算入する
- 金額の限度は条文に書かれていない
- 損失で不動産所得が赤字になれば、損益通算の対象になりうる
- 保険金等で補てんされる部分は除かれる
建替えのために古い建物を壊す場面で効く。
事業的規模でない
51条4項 — その年分の不動産所得の金額を限度とする
- ★その損失で不動産所得を赤字にできない
- 引ききれなかった分は、繰り越せない
- 雑所得についても同じ扱い
1室だけ持っている人が建替えると、ここに当たる。
損失で不動産所得が赤字になったときの扱いは、また別の話です。
土地建物の譲渡損失そのものは、原則として他の所得と通算できません。→ 損益通算
3. 貸倒れ — 処理する条文が違う
事業的規模 — 51条2項
- その事業の遂行上生じた債権の貸倒れ
- 損失の生じた日の属する年分の必要経費に算入
- その年の所得を減らす形になる
前に進む処理。
事業的規模でない — 64条1項
- ★「なかったものとみなす」
- 収入に計上した年の所得計算にさかのぼって効く
- 64条1項は「事業から生じたものを除く」と書いている
後ろへ戻る処理。
★51条2項と64条1項は、裏表の関係になっています。どちらかに必ず入る形です。
★どちらでも救済はされますが、効く年が違います。 さかのぼる処理は、その年の申告をやり直す必要があります。
4. 専従者 — 青色と白色で額が違う
青色事業専従者給与(1項)
- 承認を受けている居住者が対象
- 生計を一にする配偶者その他の親族(★15歳未満を除く)
- ★「専ら」その事業に従事すること
- 労務の対価として相当と認められる額
額の上限は条文に書かれていない。相当性で判断される。
白色の事業専従者控除(3項)
- 配偶者は86万円、それ以外は50万円
- ★所得を「専従者の数に1を加えた数」で割った額との、低いほう
- 実際に払っていなくても控除される
- 届出は要らない(確定申告書への記載が要件)
所得が少ないと、86万円まで届かない。
★どちらも「前条に規定する事業」に従事する者が対象です。事業的規模でなければ、いずれも使えません。
純損失の繰越しは、規模ではなく青色かどうか
数える前に、確かめること
1つ目と2つ目は自分で数えられます。3つ目から先は、確認したほうが安全です。
規模が増えれば、減価償却の額も、経費の管理の手間も増えます。控除の差だけで判断するものではありません。
手元に残る額で比べるなら、実質利回りの計算に税を織り込んでください。★控除が45万円増えても、税率が20%なら手取りの差は9万円です。