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売買・契約 8分で読めます 3,107字

中間省略登記 ちゅうかんしょうりゃくとうき

中間省略登記とは、A→B→Cと所有権が移った取引で、中間のB名義の登記を省き、AからCへ直接登記すること。2005年3月施行の不動産登記法により、事実上できなくなった。

この記事の要点

  1. 所有権はA→B→Cと2回移っているのに、B名義の登記だけを省く手法だった
  2. 中間業者にかかる登録免許税と不動産取得税を省けるため、広く使われていた
  3. 2005年3月施行の不動産登記法で登記原因証明情報の提供が必須となり、通らなくなった
  4. 登記が実体を映さなくなることが問題であり、税を省くこと自体が違法とされたのではない
  5. 現在は「第三者のためにする契約」を使う別の方法(三為契約)が使われている
目次(10項目)

不動産の売買で A→B→C と転売が起きたとき、B名義の登記を省いて A から C へ直接登記することを中間省略登記といいます。

かつては広く行われていました。いまは通りません。何が変わったのかを見ていきます。

何を「省略」していたのか

所有権は A→B、B→C と2回移っています。本来なら登記も2回動きます。

本来の姿と、中間省略登記
  1. 本来なら、登記も2回動く

    A→B の移転登記、B→C の移転登記。所有権が動いた回数と同じだけ登記も動く

  2. 中間省略登記では、B名義を飛ばすここが省略

    登記簿の上では A から C へ直接移ったように見える。B が関わった事実は残らない

  3. B に登録免許税不動産取得税がかからない

    登記名義人にならなければ、この2つは課されない。これが使われていた理由

省略の目的は税でした。 登記の名義人になると登録免許税がかかり、不動産を取得したことで不動産取得税もかかります。転売を業とする会社にとって、この2つを省けるかどうかは利益を左右します。

なぜ問題になったのか

2005年3月に何が変わったのか

決着をつけたのは判例ではなく、手続の変更でした。

中間省略登記が通らなくなるまで
  1. 2004年6月

    新しい不動産登記法が公布される

    平成16年法律第123号

  2. 2005年3月

    施行。登記原因証明情報の提供が必要になる

    登記を申請するとき、その原因となった事実を示す書面の提出が求められるようになった

  3. 以降

    中間省略登記が申請できなくなる

    「AからCへ所有権が移った」ことを示す書面を、実体に反して作ることはできないため

要点は登記原因証明情報[1]です。登記を申請するとき、「なぜその登記をするのか」を示す書面を出さなければならなくなりました。

A→C の移転登記を申請するには、A から C へ所有権が移った事実を示す必要があります。しかし実際には A→B→C と移っている。事実に反する書面を作るわけにはいきません。

禁止されたのではなく、手続として組めなくなった。 これが正確な言い方です。

代わりに何が使われているか

税の負担を避けたいという事情は、法改正で消えたわけではありません。そこで、所有権をそもそも中間業者に移さない方法が使われるようになりました。

「省略する」と「はじめから移さない」

中間省略登記

  • 所有権は A→B→C と2回移っている
  • 移ったはずの B 名義の登記を省く
  • 登記が実体を映さない
  • 2005年3月以降、申請が通らない

起きたことを、登記に載せない。

第三者のためにする契約

  • 所有権は A から C へ1回だけ移る
  • B はもともと所有権を取得しない
  • 登記は実体どおり A→C の1回
  • 2007年1月の法務省通知で取扱いが明確になった

そもそも起きていないので、載せるものがない。

この方法は民法537条の第三者のためにする契約[2]を使うもので、実務では三為契約と呼ばれます。「新・中間省略登記」という呼び方もされますが、省略しているわけではない点で、名前は正確ではありません。

2007年1月12日の法務省民事局通知により、この形での登記の取扱いが示されました。経緯は不動産適正取引推進機構の解説[3]にまとめられています。

いまも残っている3つの誤解

この話題は、制度が変わった前後の情報が混ざったまま流通しています。よく見かける言い方を3つ取り上げます。

誤解1「中間省略登記は脱税だった」

違います。登録免許税も不動産取得税も、登記の名義人になった者に課される税です。名義人にならなければ課税要件を満たしません。要件を満たしていない者に課税されないことは、脱税ではありません。

問題視されたのは税ではなく、登記が実体を映さなくなることでした。ここを取り違えると、いま行われている三為契約まで「税逃れ」と誤って理解することになります。

誤解2「新・中間省略登記も、いつか禁止される」

その見込みを示す動きは、いまのところ確認できません。

省略ではないためです。所有権が A から C へ1回だけ移るなら、登記も1回でよい。登記は実体を映しています。制度の目的に反していないものを、禁止する理由が見当たりません。

誤解3「買主には関係のない話」

売主が誰かは、買主にとって関係のある話です。

引渡し後に不具合が見つかったとき、責任を追及する相手は契約の相手方です。所有者ではありません。相手が資本の小さい会社であれば、契約書に責任が書かれていても、実際に直してもらえるかは別の問題になります。

売る側から見ると、どういう仕組みなのか

買主として理解しておくと、価格の見方が変わる部分があります。

中間業者が省ける費用の例(物件価格3,000万円の場合)
  • 登録免許税(所有権移転・土地1.5%/建物2.0%の場合の概算)450,000円
  • 不動産取得税(軽減がない場合の概算)900,000円

税率と軽減措置は、物件の種類・取得時期・自治体により変わります。ここでの数字は、規模感を示すための概算です。実額は課税明細と各自治体の案内でご確認ください。

数十万から百万円台の差が生じます。転売を業とする会社にとって、この差は利益率をそのまま左右します。

だからこの手法が使われている、という理解でよいと思います。裏があるわけではありません。ただし、省けた費用が買主に還元されるという保証もありません。省けたぶんは、業者の利益になります。

買主として、何を見ればよいか

登記簿と契約書を突き合わせる

よくある質問

中間省略登記は違法だったのですか?
違法と断じられたわけではありません。実際に登記されれば有効とする判例もありました。ただし2005年3月施行の不動産登記法で、登記の申請に登記原因証明情報の提供が求められるようになり、A→Cの直接移転を裏づける書面を作れないため、申請が通らなくなりました。禁止されたというより、手続として組めなくなったという経緯です。
今でも中間省略登記はできますか?
従来の形ではできません。ただし「第三者のためにする契約」を用いて、はじめから所有権をAからCへ直接移す取引であれば、登記もA→Cの1回で済みます。これは省略ではなく、Bへの移転がそもそも発生していないという違いがあります。
なぜ中間の登記を省きたかったのですか?
登記の名義人になると、登録免許税と不動産取得税がかかるためです。物件価格が大きいほど負担も大きくなります。転売を業とする会社にとって、この2つを省けるかどうかは利益に直結します。
買主にとって不利益はありましたか?
登記簿を見ても中間業者が関与した事実が残らないため、後から取引の経緯を辿りにくくなるという指摘がありました。登記制度は権利関係を公示するための仕組みなので、実体と食い違うこと自体が問題視されていました。

出典 番号は本文中の [n] に対応します

  1. 不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 平成16年

    確認日 2026-08-18

  2. 民法(明治二十九年法律第八十九号)

    e-Gov 法令検索(デジタル庁) 明治29年

    確認日 2026-08-18

  3. 「直接移転取引」について(RETIO No.68)

    一般財団法人 不動産適正取引推進機構 2007年11月

    確認日 2026-08-18

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