返済できなくなったら何が起きるか へんさいできなくなったらなにがおきるか
期限の利益喪失、代位弁済、競売という順に進む。競売の手続は民事執行法にあるが、任意売却の手順を定めた条文は無い。
この記事の要点
- 期限の利益の喪失は、民法137条ではなく契約の特約で決まっている
- 代位弁済で、請求してくる相手が金融機関から保証会社に変わる
- 競売の開始決定は、債務者に送達される(民事執行法45条2項)
- 買受人が所有者になるのは、代金を納付した時(79条)
- いわゆる任意売却の手順や期限を定めた条文は無い
目次(8項目)
住宅ローンや投資用ローンの返済が続けられなくなると、決まった順序で事が進みます。その順序と期限は、条文に書かれています。
先に言葉を3つ。
- 期限の利益の喪失 … 「分割で払ってよい」という約束が消えること。★残額をまとめて請求されます
- 代位弁済(だいいべんさい)… 保証会社が金融機関へ代わりに払うこと。★借金が消えるわけではありません
- 競売(けいばい)… 裁判所の手続きで、その不動産を強制的に売ること
任意売却は、競売にならないよう、抵当権者の同意を得て普通に売ることを指す呼び名です。
順番に起きる
滞納
督促が来る。この段階では、まだ分割の約束が生きている
期限の利益の喪失特約
★残額の一括請求になる。回数や期間は契約の特約で決まっている
代位弁済
保証会社が金融機関へ払い、借主へ請求する。★債務は消えない
競売の申立て・開始決定送達
開始決定は債務者に送達される(民事執行法45条2項)。差押えの登記もされる
売却・代金納付
★買受人は、代金を納付した時に不動産を取得する(79条)
引渡命令
買受人の申立てによる。★代金納付の日から6か月(場合により9か月)が期限
★2つ目から3つ目までの間に、任意売却を選ぶ余地があります。抵当権者の同意が要ります。
「支払を怠ったとき」は、民法137条に無い
★「支払を怠ったとき」は、この3つに入っていません。
住宅ローンで滞納が一括請求につながるのは、契約に期限の利益喪失の特約があるためです。
代位弁済 — 相手が変わるだけで、額は減らない
誰に、いくら払うことになるか
代位弁済の前
金融機関へ、毎月の返済額
- 分割の約束が生きている
- 条件変更の相談ができる段階
- 遅延損害金は発生している
ここで動けることが、いちばん多い。
代位弁済の後
保証会社へ、残額の一括
- ★債務は消えていない。請求してくる相手が変わっただけ
- この時点で期限の利益は失われている
- 保証会社は回収のために競売を申し立てられる
「保証があるから大丈夫」ではない。
★団体信用生命保険は、死亡・高度障害のときに残債を消すものです。返済が苦しいことに対しては働きません。
競売は、知らないうちには進まない
★開始決定は本人に届きます。 同時に登記簿へ差押えの登記がされるので、第三者からも読めます。→ 抵当権
所有者が変わるのは、代金を納付した時
売却許可決定でも、入札でもありません。★代金の納付が境目です。
その後の明渡しは、引渡命令によります。
原則
- 代金を納付した買受人の申立てによる
- 債務者または占有者に対して出せる
- ★申立ては代金納付の日から6か月まで
期限を過ぎると、通常の訴訟によるほかない。
抵当建物使用者がいた場合
- 買受けの時に民法395条1項の使用者が占有していた建物
- ★申立ての期限は9か月
- 猶予の6か月を織り込んだ期間になっている
3か月の差が、この場合のために置かれている。
★事件の記録上、買受人に対抗できる権原により占有していると認められる者に対しては、引渡命令は出せません(83条1項ただし書)。
借りて住んでいる人は、6か月の猶予がある
★「6か月ただで住める」ではありません。 2項が、使用の対価を払わなければ猶予が外れる仕組みを置いています。
なお、抵当権より先に対抗要件を備えた賃貸借なら、そもそも買受人に対抗できます。この395条は、対抗できない場合の話です。
競売と、いわゆる任意売却
競売
- 民事執行法に手続が定められている
- 開始決定・売却・代金納付・引渡命令と進む
- 期限も条文にある(63条の1週間、83条の6か月・9か月)
- 申し立てるのは債権者
本人の同意は要らない。
いわゆる任意売却
- ★手順や期限を定めた条文は無い
- 抵当権者の同意を得て行う、通常の売買契約
- 残債が売却代金を超える場合、差額は残る
- 売主として自分で動くことになる
「同意が得られること」が前提であって、権利ではない。
★どちらでも、売却代金で足りなかった分の債務は残ります。売れば終わり、ではありません。
早い段階ほど、選べるものが多い
★1つ目と2つ目は、期限の利益を失う前にしかできません。日付を先に確かめてください。